農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS ただひたすらに、君を想う。 11

<<   作成日時 : 2015/06/25 23:26   >>

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 しかし、親友であるハヤテからの正式な使い。断る理由が、ハヤブサの方には無かった。
「分かった。『すぐに向かう』と、ハヤテに返事をしてくれ」
「御意」
 短くそう言って、使いの忍者は消える。ハヤブサも、すぐに霧幻天神流の里へ向かう事にした。
(何か、相当な厄介事とみて良いな……。明後日会う事になっている、シュバルツにはどう伝えようか……)
 ハヤブサは少し思案したが、すぐに顔を上げた。
(とにかく、ハヤテから話を聞いて、それから判断しよう。会えるようなら会うし、無理なら理由をちゃんと話して断ればいいだけの話なのだから……)
 シュバルツは少し残念がるかもしれないが、話せば分かってくれるヒトだ。だから、そのためにもハヤテの目的を知りたいと思った。
 ただ、事が切迫しているようなら、1日がかりで会う事は無理になるかもしれない。その時は、せめて唇だけでも触れさせてもらえればと願う。それに、自分と1日過ごせないと知ったシュバルツが、がっかりする顔を見てみたいような気もする。この願いは、不謹慎な物かもしれないが――――

「ハヤテの所へ行く。場合によっては滞在が長期になるかもしれない。後の事は、よろしく頼む」

 ハヤブサは里の者にそう言い置くと、ハヤテの元へと向かった。


 霧幻天神流の里に着くと、出迎えの者がすぐにハヤテの元へと案内してくれた。
「………………」
 だが、里の雰囲気が微妙におかしい。皆、何気ない風を装っているが、妙にピリピリとした、殺気の様なものを感じる。
(やはり……ただ事ではないな……。一体、何があった……?)
 疑問に感じながらもハヤブサは、ハヤテの元へと向かう。頭首の館の、公の物事を執り行う部屋で、ハヤテは待ち受けていた。

「よく来てくれたな、リュウ」

 そこには、穏やかな――――『いつも通り』の親友の姿があったので、ハヤブサは、いくばくかの安心を覚える。ただやはり、ハヤテ以外の者からは、ピリピリとした気配を感じていた。何かに対してひどく警戒している様な―――――そんな感じだった。
(こんな中でも『頭首』であるハヤテは『いつも通り』か………なるほど)
 このような状況下で、1人、穏やかな気配を保っているハヤテにハヤブサは感心する。頭首までこの雰囲気に呑まれてしまっては、この村の者は皆、浮足立ってしまうだろう。それを押さえてのこの佇まいは、流石ハヤテだと思った。

「お前が呼ぶのなら、何時だって俺は駆けつける。それにしてもどうした? ハヤテ。一体、何があった?」

 礼に則って刀を置いて座り、ハヤテにそう声をかける。それに対して、ハヤテは穏やかに微笑んだ。
「ありがとう、リュウ。その前に、遠路疲れただろう。茶でも一杯飲まないか?」
 ハヤテの言葉に合わせて、女中たちがハヤブサとハヤテの前に茶を置いて行く。綺麗な緑茶と、和菓子を差し出された。
「ありがとう」
 ハヤブサが、差し出された茶を飲み干す。それを見届けてから、ハヤテが口を開いた。

「実はな、リュウ……。頼みがある」

「ああ。頼みとは―――――」
 何だ? と、問う前に、ハヤブサは激しい眩暈に襲われた。
「う………!?」
 意識を保とうとして、保てなくなる。茶に何かを入れられたと悟った時には、既に遅すぎた。

「ハヤ……テ……? おま………」

 ハヤテが、こちらを見ている。その面には、相変わらず穏やかな表情が浮かんでいた。
 ばたっと、ハヤブサが倒れてから、ハヤテは立ち上がり、その傍に歩み寄る。そっとその頬に触れても、ハヤブサは身じろぎ一つしなかった。

「『薬』がよく効いた様だな……。御苦労」

 女中たちにそう言うと、彼女たちは頭を下げて静かに下がっていく。

「リュウ……。頼みと言うのはな……」

 ハヤブサを優しく抱き抱えながら、ハヤテは静かに言った。

「『俺の物になってくれ』って、事だよ……」

 ハヤテの指が、ハヤブサの髪を撫でる。その腕の中で、ハヤブサは静かに眠り続けていた――――。



 それから二日後の、夜。

 時計の針は深夜12時を指そうかと言うところだが、キョウジは独り起きて、パソコンへと向かっていた。
(ハヤブサの『血』は……やはり、常人とは違って、かなり特殊な物だな……。これが、シュバルツと深く交わっても、『DG細胞』には感染しない原因なのだろうか……)
 血液のデータ。
 DNAのデータ
 どれも普通の『人間』ではあり得ない数値をキョウジに見せつけている。
 そして、『DG細胞』と、シュバルツを構成している『DG細胞』の違い――――。
(まだ、断定できない……。もっと、調べないと―――)
 キョウジがコーヒーを飲みながら、次の資料の作成と、実験の段取りを考えかけていた時、玄関先で、カタリ、と、小さな物音がした。
「?」
 不思議に思ったキョウジが振り返ると、そこには朝からハヤブサに会いに行っているはずのシュバルツの姿があったから、キョウジはかなり驚いてしまう。

「シュバルツ!? どうした!?」

 慌てて立ち上がり、キョウジはシュバルツの傍に駆け寄る。ハヤブサに会いに行った時のシュバルツは、たいていハヤブサに引きとめられて、次の日の朝に帰って来る事が常となっていた。なので、こんな時間帯に帰って来る事など、普通、あり得ない。

「キョウジ……」

 現にシュバルツは、酷く心細そうな顔をしている。何か異常事態が起きたとしか思えなかった。
「どうしたんだ? シュバルツ……! ハヤブサと喧嘩でもしたのか?」
 その問いかけに、シュバルツは首を横に振る。そして、逆に問いかえされた。
「キョウジ……。ハヤブサから、何か連絡があったか……?」
「えっ? いや、何も……」
 キョウジの言葉に、シュバルツも「そうか……」と、静かに返す。
「どうしたんだ? シュバルツ。喧嘩したんじゃないのなら、どうして――――」
 懸命に問いかけるキョウジに、シュバルツはポツリ、と、返した。

「………来なかったんだ……」

「えっ?」

 何を言われたのか瞬間分からずに、茫然とするキョウジに、シュバルツは更に言葉を続ける。

「ハヤブサが、来なかったんだ………」

「えっ? え………?」

 状況がいまいち飲み込めないキョウジに、シュバルツは少し苛立ちを覚えた。
 そう―――――これは、『異常事態』だ。

「来られないなら来られないでいい! だけどあいつは―――――そうなった場合、必ず何らかの形で連絡をよこしてくる筈なんだ! 黙って約束を破る様な奴ではないんだ!」
「――――!」
「それが……私やキョウジにまで、連絡も何も無いなんておかしいんだ……! 連絡を取りようがない程の『何か』が、ハヤブサの身に起きているとしか思えなくて……!」
「シュバルツ……」
「ハヤブサ……! 何があった……? 一体、どうしてしまったんだ……!」
 シュバルツが疲れ果てたかの様に、その場に座り込んでしまっている。無理もないな、と、キョウジは思った。恐らく彼は朝からずっと――――ハヤブサを待ち続けていたのだろう。僅かな手掛かりも見落としてはならぬと、ずっと神経を張り巡らせ続けていたのだろう。ハヤブサの事を想いながら――――

「シュバルツ。ひとまず落ち着こう?」

 キョウジは、そっとシュバルツに声をかける。
「もしかしたらハヤブサから、私宛にメールが入っているかもしれない。それを、もう一回確認してみるよ。とにかく中に入って、落ちついて――――それから対策を考えよう。ね?」
 キョウジの言葉にシュバルツもこくりと頷く。それを見て、キョウジも微笑んだ。
「それに、次の日の朝にハヤブサから『済まない!』なんて平謝りに謝られる連絡が入るかもしれないよ? 今頃ハヤブサの方が、『シュバルツに連絡しなきゃ……!』なんて、焦っていたりしてね」
「そうかもな……」
 キョウジの言葉を聞いて、シュバルツの面に少しの笑みが浮かぶ。
「だいたい、シュバルツは心配し過ぎなんだよ! まあ……私も、人の事は言えないけどね」
(そうかもしれないな)
 キョウジのこの言葉には、シュバルツも苦笑するしか無かった。自分は確かに、ドモンの事と言い、キョウジの事と言い、ハヤブサの事と言い――――心配し過ぎる傾向が、あるのかもしれない。
(杞憂に終わればいい。自分のこの物思いが……)
 キョウジの後を付いて行きながら、シュバルツはそう祈らずにはいられなかった。

 だが、次の日も、その次の日も―――――ハヤブサから連絡が入ることはなかった。

 シュバルツが、自身の悪い予感が的中してしまった事を悟るのに、そう時間はかからなかった―――――

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