農家の嫁の日記

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zoom RSS ただひたすらに、君を想う。 2

<<   作成日時 : 2015/06/16 14:27   >>

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「それにしてもリュウ。お前、表情が明るくなったな」

 駅の近くの和菓子屋で茶をすすりながら、ハヤテはハヤブサに対して正直な感想を伝える。
「そうか?」
 少し驚いたように顔を上げるハヤブサに、ハヤテは頷いた。実際、先程から話をするハヤブサの表情は、以前よりも明るくて柔らかい。そんなハヤブサの表情を見るのは嫌いではない(寧ろ好きだ)なので、ハヤテも、自然と優しい気持ちになれるのだった。
「ああ。だが俺は、そんなお前の変化は、いいことだと思うぞ?」
「う………!」
 正直な感想を述べる。するとハヤブサが、酷く照れたように下を向くから、ハヤテはうっかり彼を抱きしめそうになってしまう。だがそんなことはおくびにも出さず、面は鉄壁のポーカーフェイスを貫いていた。
「リュウ、何か、お前に良い事でもあったのか?」
 しかし、彼の表情が柔らかくなった原因を知りたいハヤテは、ハヤブサにこの質問を投げかける。すると、ハヤブサがますます赤面してはにかんだ表情を見せるから、ハヤテは内心小躍りをして、心の中で神に手を合わせていた。

 ああ神様、感謝します。
 こんなに可愛らしいハヤブサの姿が拝めるだなんて――――
 どうして彼は今、こんなに柔らかい表情をしているのだろう。
「ハヤテに会えて嬉しい」
 そう言う理由で彼が今この表情をしているのだとしたら――――こんなに幸せな事はないのに―――――

 だが次の瞬間、ハヤブサの口から零れてきた言葉は、ハヤテの心を打ち砕くには充分な物だった。


「実は俺……今……『恋人』が出来ていて……」


「―――――!」

 ハヤブサのその言葉に、ハヤテは飲みかけていたお茶を零しそうになってしまう。だが、そこは流石に忍びの党首。彼は、そんな内心の動揺などおくびにも出さずに、茶をすすり続けていた。

「ほう、それは、良かったな」

 茶を飲み、少し心を落ち着けてから、ハヤテは口を開く。自分がどれだけハヤブサの事を好きなのかを改めて突きつけられて、ハヤテは内心苦虫を噛み潰していた。
 だが仕方がない。
 好きな人の『幸せ』を願うのも、確かに愛情の内なのだと、ハヤテは自分で自分に言い聞かせていた。

「………で? お前の心を射止めたのは、どんな幸運な女性なのだ?」

 だからハヤテはこう聞いて――――総てをあきらめるつもりでいた。
 そして彼は、実際、自分の想いを押し殺す事が出来たであろう。ハヤブサの口から出てきた言葉が、『この女性を好きだ』と言う物であったならば。

 だが実際は―――――。

「……………」

 ハヤブサは、しばし湯呑の中でゆらゆらと揺れる緑茶を見つめながら、思考に耽っていた。
 後から思えば、ここでハヤテとの会話を切り上げても良かった。
『友人』との会話なのだ。そんなに微に入り細に入り、話す必要も無かったのだ。だけどこの時ハヤブサは、『ハヤテには、隠し事をしたくない』と考えていた。
 幼いころから、ハヤテは特別な『友人』だった。その友人にこそこそと隠し事をするのは、ハヤブサとしても本意ではなかった。
 『男』を好きになってしまったと言えば、もしかしたらハヤテから、奇異の眼差しで見られるかもしれない。最悪、侮蔑されて離れて行かれるかもしれない。
 だがハヤブサは、それ以上にハヤテに嘘をつく事を潔しとは出来なかったのだ。それに、自分達忍者の間で『衆道』は、そんなに珍しい事でもなかったという事実も、ハヤブサの背中を後押ししていた。
 だから彼は、こう口を開いた。

「実は……俺が好きになったのは……『男』なんだ………」

「―――――!」

 ハヤテの茶を飲もうとしていた手が、ピクリ、と、止まる。
(侮蔑されるかな?)
 ハヤテの少しの動きに、ハヤブサは知らず身構えてしまう。茶をその手に持ったまま、静かに座り続けているハヤテからは、相変わらず何の感情も読み取れない。
「……………」
 沈黙が続く。
 時間にしては短いものだったのかもしれないが、1秒が永遠にも感じられそうな空気の重たさに、ハヤブサは息苦しさを感じていた。
(何でもいい……! 何か言って欲しい……!)
 そう願うのだが、何故かハヤテの顔をまともに見る事が出来ない。踏ん切りをつけられないまま、ハヤブサが湯呑の茶を見つめていると、ハヤテが目の前のテーブルに、空になった湯呑をコトリ、と、音を立てて置いた。それをきっかけに、ハヤブサが顔を上げると、酷く穏やかな様子のハヤテと、視線が合った。

「そうか………」

 友人は、短くそれだけを言った。そしてそれだけで――――ハヤブサは理解した。友人は、男を好きになってしまった自分を、受け止めてくれたのだと言う事を。
 そうだ、と、言って、ハヤブサは微笑む。それに、ハヤテも微笑み返してくれたように見えた。
「さて、残念だが、そろそろ俺は行かねばならぬ。ではハヤブサ、またな」
 そう言ってハヤテは立ち上がると、静かに喫茶店から出て行った。ハヤブサも会計を済ませて喫茶店を出ようと立ち上がろうとして―――――テーブルの上の会計伝票が、いつの間にか無くなっている事に気づく。
(またやられた……! ハヤテの奴め! 誘ったのは俺なのに……!)
 会計伝票は、つい先程までテーブルの上に確かに在った。だから、今回の会計伝票争奪戦は、自分の負けなのだとハヤブサは悟った。悔しいが、ある意味仕方がないのかとも思った。今回の自分は、ハヤテの前に、割と隙を大きく見せてしまっていたのだから。
(次は絶対負けない……! だが、次にあいつと会えるのは、いったいいつなのだろう……)
 そう感じて、ハヤブサは首を捻ってしまう。それほどまでに、霧幻天神流の党首であるハヤテとプライベートで会うのは、難しい事になりつつあった。小さくため息を吐きつつ、ハヤブサもまた、喫茶店を後にする。外に出ると、午後の優しい光が、ハヤブサの瞳を打った。
(シュバルツに、会いたいな……)
 ハヤテに、彼のヒトについて話したせいだろうか。『約束の日』までまだ少し日はあるが、ハヤブサは無性に愛おしいヒトに会いたいと願っていた。

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