農家の嫁の日記

アクセスカウンタ

本の販売を始めました!
ここより本の注文画面に飛べます。
当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS ただひたすらに、君を想う。 27

<<   作成日時 : 2015/07/18 15:12   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0


「……………」
 その一部始終を見届けてから、シュバルツはあやねの方に振り返った。それに気が付いたあやねが、鏡に合図を送る。それを見て鏡は、術を解いた。
「……どう? 分かったかしら? 私が言った意味が……」
「そうだな……」
 シュバルツは静かに言葉を続けた。
「このままでは確かに……ハヤテ殿もハヤブサも……壊れてしまう……」
(…………!)
 シュバルツのその言葉を聞いて、あやねは自分がシュバルツに伝えたかった事が、正確に伝わったのだと悟った。内心ほっと胸を撫で下ろし、自分の役目はほぼ終わったのだと知った。
「お願いします……! どうかリュウ様を……! そして、ハヤテ様を助けてください!!」
 だからあやねは、懸命に懇願をした。
 この現状を訴えるために、あやねは自分が里の規律も、そして人としての道も、踏み外してしまっているという自覚があった。その為に自分は、どう思われようと、そしてどうなろうとも構わない。
 だけどハヤテを、何とかこの現状から救い出したい。その強い想いが、あやねを突き動かしていた。
「ハヤテ様は、本当はお優しい人なんです!! 元来なら――――こんな風に他者を踏みにじる様な御方じゃないんです!!」

「そうだろうな……。そして、ハヤテ殿は、本当にハヤブサの事が好きだ……」

「――――!」
 ポツリと紡がれたシュバルツの言葉に、あやねははっと、息を飲んだ。
「ど、どうして、そんな事が分かるの……?」
 問うてくるあやねに、シュバルツが明確な理由を話す事はなかった。代わりに、あやねにこの言葉を投げかけた。
「そして、君も……ハヤテ殿の事が――――」

「ち、違う!!」

 シュバルツの言葉を、あやねは強く否定した。自分の気持ちを見透かされてしまったような気がして、酷く居心地が悪かった。
「ハヤテ様の事を気遣うのは、『一の部下』として当然の務めだ!! それ以上の想いは何も無い!!」

「そうか………」

 自分の言葉にそう返したシュバルツが、腕を組んで部屋の一点を見つめている。これ以上、シュバルツが自分の気持ちに対して踏み込んでくる気配がない事を感じ取ったあやねもまた、シュバルツに対して構えるのを止めた。

「……………」

 部屋の一点を見つめたまま、沈黙を続けるシュバルツ。その姿は、何か熟考をしている様子を伺わせた。
(何を考えているのだろう)
 あやねもまた、そんなシュバルツを静かに見守る事を選択していた。

 そうして、どのくらい時が経っただろう。

「あやね殿。もう一度、手引きを頼めるか?」
 振り返って、そう問いかけてきたシュバルツに、あやねははっと顔を上げた。
「確かに……このままではよくない。どうなるかは分からないが、私なりに手を打って見ようと思う」
「では――――!?」
 縋るように見つめてくるあやねに、シュバルツは少し苦笑した。
「だが……あまり結果には期待しないでくれよ。もしかしたら、君が望む通りにはならないかもしれない。……それでも良いか?」
 問うシュバルツに、あやねは力強く頷く。
「構いません。どうなろうとも、私はハヤテ様をお支えするだけだから」
 今のまま、互いの気持ちが宙に彷徨い、どちらの手も届かないまま二人が自滅して行く状態よりは、少しでも何らかの進展があった方が、はるかに良いだろうとあやねは思っていた。だから、彼女に迷いはなかった。 
「そうか………」
 あやねの言葉に、シュバルツの面に笑みが浮かぶ。
「済まないが、少し時間をくれ。準備ができたら君に連絡をしよう。その手段は、どうすればいい?」
「私の使命は、里の者たちが貴方がたに手を出さないように見張ること―――――。だから、私はいつでも貴方たちの傍に居るわ」
 シュバルツの問いかけに、あやねはさらりと答えた。
「呼んでくれれば、私はいつでも姿を現す」
「そうか」
 あやねの答えに、シュバルツも頷く。こうしてこの夜はあやねと別れ、シュバルツは霧幻天神流の里から脱出をしていた。


(ハヤテ殿は、ハヤブサの事が好きだ……。それは、もう間違いない……)

 天神流の里からキョウジの家へと帰る道すがら、シュバルツは己が考えを整理していた。
 おおよそ、その人の人柄は、事に及んでいる最中よりも、後戯の方に色濃く出てくるとシュバルツは思っている。その最中は熱情に流され、行為も本能に任せるままになるが、一段落ついて冷静になった時――――人は、本来の人格が顔を出す物なのだ。
 だからシュバルツは、ハヤテの後戯が見たいと思った。その為に、最後まで見続けていたのだ。
 ハヤテは、気を失ったハヤブサを、とても丁寧に扱っていた。まるでこの世に二つとない宝物のように―――――
 ちゃんとハヤテは、ハヤブサの事を愛している。おそらくハヤブサは、幸せになれるだろう。ハヤテの愛を、受け入れる事が出来さえすれば。今、ハヤブサがそれを出来ないでいるのは、唐突に自分との関係を断たれてしまったからだ。まだ会うつもりで、関係を続けようと望んでいた所でこうなってしまったから、ハヤブサの手が宙を彷徨ってしまうのだろう。
 だから、ハヤブサと自分は、話し合わねばならぬとシュバルツは思った。
 きちんと話し合って、そして、ハヤブサは選ぶべきなのだ。己が未来を。自身が進むべき道を――――。選ぶ事が出来さえすれば、ハヤブサは、どっちつかずの今の状態から、一歩、前に進める筈なのだ。そうすれば、ハヤブサの手が空しく宙を彷徨う事も、無くなるだろう。
 その為に自分が出来る事は、指し示すことだ。ハヤブサの進むべき道の片方を。そして、手を差し伸べることだ。ハヤブサの未来の選択肢の一つとして――――

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
 いつも愛読していただいてありがとうございます(^^)。
また、気持ち玉へのクリックもありがとうございます! 
ものすごくものすごく励みになります。
アンケート実施しています(*^^*)ご協力お願いいたしますm(__)m
 当方のブログの内容とあまり関係の無いTBは、削除させていただきます。
 悪しからず、ご了承ください。

アンケート実施中

ただひたすらに、君を想う。 27 農家の嫁の日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる