農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS ただひたすらに、君を想う。 33

<<   作成日時 : 2015/07/31 01:00   >>

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「動くなよ」

 静かな声音と共に、刀を構えるシュバルツの身体から、『気』が発散され、高まっていく。
 ハヤブサは静かに目を閉じた。
(そのまま、俺を斬って欲しい)
 そう願いながら―――――

 抜き手は一瞬だった。

 もしも傍に人がいたとしても、その刀身のきらめきを見る事が出来た者は一握りしかいなかったであろう。刀は目的を果たし、もうその鞘に戻っていた。
 パチン、と、刀を収める音がすると同時に、ハヤブサを拘束していた手首、足首、そして首に取りつけられていた鉄の環がそれぞれ真っ二つになり、その役目を終えていた。
「……………!」
 久しぶりに鎖から解放され、軽くなった己の身体にしばし呆然としているハヤブサに、シュバルツが声をかけてくる。

「――――キョウジからの伝言を伝える」

「―――――!」
 はっと顔を上げるハヤブサに、シュバルツの真っ直ぐな視線がぶつかる。

「キョウジは言った……。『私を枷にするな』と」

「…………!」
「もしも、キョウジを守るためにお前が犠牲になっていると言うのなら……それは、止めて欲しい。それはキョウジも、そして私も――――最も、望まない事だから」
「シュバルツ……」
 茫然と見つめてくるハヤブサに、シュバルツはにこりと微笑みかけた。
「あまり、私たちを見くびるな。ハヤブサ! 私たちは、決して孤立無援な訳じゃない。ちゃんと、頼れる仲間がいる。お前も含めて……」
「あ………!」
「隼の里の者たちだってそうだ……。皆、お前の事を案じていた。お前一人を犠牲にする事を、彼らは決して望まないだろう。お前を支えたいと……そう願っているはずだ」
「……………っ」
「だから、ハヤブサ………」
 シュバルツはすっと、己が手をハヤブサに差し出した。

「もし……お前が『人質』と言う枷だけに縛られているのなら、私はお前のその手を取ろう。案ずる事は何も無い。私は、お前を全力で支える。今までお前が、そうして来てくれたように――――」

「シュバルツ……!」
 ハヤブサはただ茫然と、シュバルツが差し出してきた手を見つめていた。
 夢の様だった。
 シュバルツから、こんな風に言ってもらえるだなんて――――
 自分がこんな状態になっても、彼からの優しさ、愛情に、何一つ変わる物はないのだと思うと、余計に感極まる物があった。

(手を、取りたい)

 ハヤブサは願う。
 シュバルツの手を取りたい。
 彼と共に生きたい。彼となら――――人生のどんな試練だろうと、乗り越えて行けるだろう。
 鎖から解き放たれ、自由になったハヤブサの手が、ピクリと動く。

 だが―――――

(好きだ……! 愛している、リュウ………!)
 切羽詰まった声で囁きかけてくるハヤテの声。
(好きだった……! 子どものころからずっと―――――!)

(ハヤテ………!)

 子どもの時から、自分に対する想いを秘め続けていたハヤテ。それに今まで全く気付く事の出来なかった自分は、どれだけハヤテの心を踏みにじり続けていたのか分からない。
 それに対する詫びすら、自分はハヤテにできていないと言うのに。
 今――――シュバルツの手を取ることは、そんなハヤテと完全に決別してしまう事を意味した。自分の愛する者、大切な者たちを守るために、ハヤテに刃を向けなければならなくなるのだ。

(ハヤテに刃を向ける………?)

 ハヤブサはそれを想像しようとして、それが酷く困難なことであると気づくのに、そう時間はかからなかった。
 幼いころから共に修業し、支え合い、お互いを高めあってきたハヤテ。
 彼は自分の大事な戦友であり――――そして、『親友』でもあった。

 やはり駄目だ。
 俺は――――――

 そんなハヤテに、刃を向けられない。

「……………ッ!」
 僅かに持ちあがり、震えていたハヤブサの手。
 その手は確かに、シュバルツの方に向かおうとしていた。だが彼は、それを途中で下ろしてしまった。

「シュバルツ……」

 うつむくハヤブサの瞳から、涙がパタっ、パタっ、ときらきらと光りながら零れ落ちていった。それはひどく美しくて、そして哀しい涙だと、シュバルツは思った。

「シュバルツ……! 済まない……! 俺は………ッ!」

「ハヤブサ……」

 顔を上げた龍の忍者は、シュバルツをまっすぐ見つめながら決然と言った。

「俺は……! ハヤテを裏切れない………ッ!」

「――――――!」
 ある意味、覚悟していたハヤブサの言葉。
 それなのに、こちらの『ココロ』が軋んで、悲鳴を上げるのは何故だろう。
 少し、天を仰ぐシュバルツに、ハヤブサの言葉はなおも続いた。

「裏切れない……ッ! 裏切ることが、出来ないんだ………ッ!」

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