農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS ただひたすらに、君を想う。 23

<<   作成日時 : 2015/07/12 01:43   >>

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「―――――!?」
 意外すぎるあやねの言葉に、シュバルツはただ戸惑うばかりだ。
「……どう言う、事だ?」
 問いかけるシュバルツを、あやねは真正面から見つめる。
「多分、私が今ここで話すより、実際見てもらった方が早い」
「……………!」
「だから、里の内部に手引きいたします」
「な―――――!」
 息を飲むシュバルツを、あやねはただ静かに見つめ続けた。

「私の言葉を信じる、信じないは貴方の自由。だけど信じるならば――――明後日の亥の刻にここに来て」

 私は、待っているから――――そう言い置いて、あやねは消えた。後にはただ、独り佇むシュバルツだけが残された。
(どうする?)
 あやねの言葉を反芻して、シュバルツは自問自答する。
『助けて――――』と、言った時の彼女の言葉と態度は真剣そのものだった。そして、助けを求めるために、自分を里の内部へと手引きしてくれると言う。
 彼女の申し出が真実ならば、これほどありがたい事はなかった。天神流の里の者たちと無用な事を構えずに、里の内部を探れる事になるのだから。
(だが『それ』をして、彼女に何かメリットがあるのか?)
 ここでシュバルツは考え込んでしまう。完全に里に縁も所縁も無い自分を内部に招き入れると言う事は、それだけで、里の規律に大きく違反している事になるだろう。下手をしたら彼女自身が『裏切り者』の汚名を受け、里から裁きを受けてしまうかもしれない。
 ただでさえ忍びの掟に厳格な霧幻天神流の里にあって、彼女が率先してそれをやるだけの、めぼしい理由が咄嗟に見当つかなくて困った。どちらかと言えば、自分を捕らえるための『罠』だと判断した方が、しっくりくる。
 しかし――――

 ――――ハヤテ様から、貴方がた二人には手を出すな、と厳命を……。

 ――――私は、貴方と戦うつもりはないわ……。

 ――――お願い……! リュウ様を………! そして、ハヤテ様を助けて!!

 彼女のあの必死な様子に、嘘偽りはないと信じたい。それに、もしも彼女が『本当に』救いを求めて、懸命に自分に手を伸ばしているのなら、それを振り払うような真似は出来ないと強く感じた。

(行くか)

 シュバルツはそう決意する。
 騙されても良い。彼女の、あの必死な様を信じたい。それに万が一騙されて捕らえられて、自分がハヤブサの前に引っ立てられたとしても、『自分』ならば、ハヤブサにとっての人質とはなり得ないのだ。殺されても死なない自分の事を、ハヤブサはよく承知してくれている。例え彼の目の前で喉元に刀を突きつけられても、自分が引き裂かれようとも――――彼ならば、迷わず自分自身にとってベストの選択をしてくれる事だろう。
(『不死の恋人』……そういう意味では、とても都合の良い存在なのかもしれないな………。だからハヤブサは、私を恋人に選んでいる可能性もあるが――――)
 そこまでシュバルツが思い至った時、心の中で、不意にハヤブサの「馬鹿野郎!!」と、大きく怒鳴る声が響いて来た。

「お前に敵から刃を突きつけられて、暴力を振るわれて――――俺が、平気でいられると思っているのか!?」

「ハヤブサ……」
 敵に捕らえられてハヤブサの目の前で『人質』としての交渉材料にされた後、殺された、あるいは痛めつけられて解放された自分を介抱しながら、ハヤブサはよくそうやって怒鳴ってきたものだった。
「身を切られる思いがした……! 生きた心地がしなかった……! お前がこのまま目を覚まさなかったらどうしようかと――――!」
 済まなかったな、と、笑いながらハヤブサの頬に触れると、その手を、とても大切な物の様に両手で包みこみ、愛おしむように頬ずりしてくれる――――そんなハヤブサが、好きだった。「愛されている」と感じられて、幸せだった。
 自分の身は、どうなっても良かった。そんなハヤブサを助ける事が出来るのなら。
(ただ、キョウジの身の安全の確保だけは、しておいた方がいいかもしれないな……。キョウジを人質に取られたら、自分もハヤブサも、本当に身動きが取りづらくなってしまう)
 シュバルツはそう断を下すと、彼もまた、その場からフッと姿を消した。後はただ、木立の中を風が吹き抜けて行くのみであった。


 シュバルツが家に帰ると、キョウジは読んでいた本から顔を上げた。
「お帰り、シュバルツ。ハヤブサは、どうだった?」
「キョウジ……」
「あまり、よくない状況なのか?」
「―――――!」
 自分が一声発しただけで、いろいろと察してくれるキョウジ。いくら自分同士とはいえ、そんなに自分は分かりやすい表情をしていたのかなと、シュバルツは少し苦笑してしまう。
「はっきりした事はよくわからん。ただ、あまりよくない事になっている可能性もある」

「……もしかして、私は身の安全を、確保した方が良いレベルなのか?」

「……………!」
 そのキョウジの言葉に、シュバルツは咄嗟に返事を返す事が出来ない。それを見て、キョウジはにこりと微笑んだ。
「……分かった。ドモンに連絡をとるよ」
 そう言いながらキョウジは、手元の携帯を操作し始める。「済まない」と頭を下げるシュバルツに、「良いって」と、ひらひら手を振って応えた。
 キョウジが、ドモンの携帯を鳴らしてから3コール目ぐらいで、彼は出たらしい。
「ああドモン? 悪いんだけど、ちょっと――――」
 キョウジの言葉が終わらないうちに、玄関のドアが、バン!! と大きな音を立てて開かれる。2人がびっくりしてその方に振り返ると、携帯電話を握りしめて、息せき切って走ってきたと思われるドモンの姿がそこにあった。

「兄さん!? 兄さんがピンチなのか!?」

「いや、ピンチと言う程の物でもないんだけど」
 噛みつかんばかりに問いかけてくるドモンに、キョウジが軽く笑って答える。
「シュバルツが、少し用事で私の傍から離れるんだ。その間、お前に私の警護をお願いしても良いか?」
「シュバルツが!?」
 びっくりして振り返るドモンに、シュバルツが頷く。
「ああ。そんなに長くはかからない。用事を終えたらすぐに帰って来るつもりだが、一応、念のために……な」
「……………」
 暫く、『兄』であるシュバルツの顔を推し量るようにじっと見つめていたドモンであったが、やがて、得心したように頷いた。兄には兄の、大事な戦いがあるのだと、彼なりに納得したのだろう。

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