農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS ただひたすらに、君を想う。 24

<<   作成日時 : 2015/07/13 15:44   >>

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「分かった! シュバルツ! キョウジ兄さんの事は任せてくれ! この俺が、必ず守りとおして見せるからな!!」
 そう言って笑顔を見せるドモンに、シュバルツも笑顔を返す。これで、キョウジの当面の安全は、確保されただろう。
「あまり神経質にキョウジを守る必要はないぞ、ドモン。一応、『念のため』の処置だから」
 あのあやねと言うくのいちの言葉を信じるならば、ハヤテの方に、キョウジや自分をすぐに害そうと言う気は無い様だった。だから、すぐに危機が差し迫っているという訳ではないのだ。
 だが、忍びに目をつけられている可能性がある以上、備えすぎるほど備えておく事にこしたことはないとも思った。
「ドモン、ちょっと待っていてくれ。荷造りをするから」
 キョウジがそう言いながら、手早く自分の必要な荷物をトランクの中に詰め込んでいた。キョウジが一度断を下したら、その行動はとても素早い。

「私の事は心配いらない。だから、安心して行っておいで」

 そう言って微笑むキョウジの笑顔が、シュバルツにはとても心強く感じられた。


 それから数日後。
 あやねの指定して来た時間よりも早く、シュバルツはその場所に行き、あやねを待った。
 そして数刻と経たぬうちに、あやねもやってきた。
「来たのね」
 声をかけて来たあやねに、シュバルツも「ああ」と、静かに頷く。

「じゃあ、約束通り案内するわ。ついて来て」

 そう言って踵を返す彼女の薄桜色の蝶結びの帯が、誘う様にしゃらりと流れた。シュバルツもその後に従って、走り出した。


 それからどれほど走っただろうか。
 森を抜け、山を越え―――――ある崖の中腹にある小さな小さなほら穴の前で、あやねはその足を止めた。

「このほら穴は、霧幻天神流の里と繋がっている。このほら穴の存在を知っているのは、私と、ハヤテさまの妹であるかすみ姉さましかいない――――」

 そう言いながらあやねは、ほんの少し目を細める。
 自分達の宿命も知らなかった幼いころ、あやねとかすみは、歳が近い事もあってよく一緒に遊んでいた。その遊びの中で、このほら穴を見つけた。

「これは、私たちだけの秘密ね」

 そう言って優しく笑ったかすみを、あやねも姉の様に慕っていた。
 だが、時が経ち、かすみが霧幻天神流の表の一族である『天神門』に、そして自分が裏の一族である『覇神門』に分けられたその日から、二人を取り巻く環境は一変してしまった。
 かすみは、くのいちの長としての教育が施され、あやねは、その『影』となることを決定づけられた。あやねの存在は表から抹消され、ただかすみの『影』として生き、そして死ぬよう、命じられたのだ。
 忍びの中でも光の中で生きるかすみを、ただ影から見つめるしか無い日々――――あやねは、歯を食いしばってそれに耐えていた。だがある日突然、かすみが何もかもを捨てて里から抜けだして、その日々が唐突に終わりを告げた。この時胸に去来した想いを、あやねはどう表せばいいと言うのだろう。
 そして、かすみが里から抜ける時の脱出経路も、このほら穴だった。

「今からここを走り抜ける。でも、ほら穴自体が小さいから、貴方は苦労するかもね。どう? ついて来られるかしら?」

 問うあやねに、シュバルツは事もなげに頷いた。
「問題ない。行ってくれ」
 ならば、と、あやねはほら穴の中に身を滑り込ませる。シュバルツも、その後に続いた。
 狭いほら穴の中を、あやねは全力で走る。だが、驚いたのは、自分よりはるかに上背のあるシュバルツが、自分から全く遅れることなくその後を付いて来た事だ。ちらりとその様に視線を走らせると、シュバルツは狭い岩の間をどうすれば通れるのか瞬時に判断して、器用にその体を運んでいる。
 優れた忍びは空間把握能力にも優れ、狭い場所でも問題なく戦う事が出来ると言う。
(さすが……リュウ様の『想い人』になるだけの事はある……)
 あやねは感心しながら、ほら穴の中を走り抜けていた。


 目的の小屋は、ほら穴を出てからすぐそこにあった。
 首尾よくその小さな小屋に入ることができたあやねとシュバルツを、1人の忍びが待ち受けていた。
「あやね様」
「連れて来たわ。『鏡(かがみ)』」
 鏡と呼ばれた忍びは、あやねに向かって軽く頭を下げる。年配の女性の忍びの様であった。あやねは鏡に頷き返すと、シュバルツの方に振り返った。

「今から、ハヤテ様とリュウ様の間に何が起こっているのか、貴方に見せるわ。『鏡』はその術に長けた忍びよ。彼女の術で、今から、あのハヤテ様の屋敷の中で起こっている事を、ここに映し出す。いいわね」

 あやねの言葉にシュバルツが頷く。それを確認してから、あやねはもう一度口を開いた。

「ただし、何を見ても、どんな事を聞いても――――絶対に声を上げたりしないと約束して。でないと、ハヤテ様にこの術が気づかれてしまう。そうなればすべてが終わりよ。ハヤテ様もリュウ様も、救えなくなってしまうから」

「一つ、聞いても良いか?」
 あやねの言葉を聞き終わってから、シュバルツが問いかける。「何?」と、少し眉をひそめた彼女に、シュバルツは言葉を続けた。
「君がそう言うふうに動いている事を、ハヤテ殿は承知していないのか?」
「ええ。これは、私の独断よ」
 あやねはさらりと答えた。彼女は何でも無い風に装ってはいるが、これはある意味頭首の意向を無視して話を進めていると言う事になる。周囲にばれれば彼女自身が里の規律に従って、詰め腹を切らねばならなくなるだろう。
「今から起こることは――――絶対に、貴方も知っておくべきだと思うから」
 それほどまでに、必死なのだ。
 彼女が、命をかけてこちらに何かを伝えようとしているのが分かる。だからシュバルツも、それを受け止めて頷いた。

「分かった……。約束しよう」

 シュバルツから『約束』と言う言質を取れた事に、あやねもその面に少しの笑みを浮かべる。だがすぐに、その表情は硬く引き締まった。
「もうすぐハヤテ様が自分の館にお戻りになるわ。『鏡』、始めて」
「御意」
 あやねの言葉を受けて、鏡がその術を発動し始めた。3人の前に、ボウ、と、光の玉が浮かび上がり、その中にハヤテの屋敷の中の光景が、浮かび始めた――――

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