農家の嫁の日記

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zoom RSS ただひたすらに、君を想う。 45

<<   作成日時 : 2015/08/14 11:04   >>

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 そして、彼を心の底からの笑顔に出来るのは、俺ではない。
 悔しいが、俺ではないのだ。

「ただ……俺はお前を手に入れてから、キョウジ・カッシュに見張りをつけていはいない。だから……お前の想い人が、お前を未だ想い続けているかどうかまでは知らない」
「…………!」
「それでも……お前は、『シュバルツ』に会いたいと――――そう言うのか?」
(嘘だ。本当は知っているけどな。シュバルツが、未だにお前を想い続けている事を――――)
 その事実を知っていなければ、自分は大事な人をわざわざ託しにこんな所まで来はしない。それでもハヤブサにそう言ったのは、彼の意思を確認するためでもあった。
 もしも、彼が自分の想いを打ち砕かれる可能性を潔しと出来ないのであれば、自分は、彼をもう一度天神流の里に連れて行くことも考えていた。だが―――――ハヤブサの方に、迷いはなかった。

「ああ……。行くよ……」

 即答して来た龍の忍者に、ハヤテは少し、天を仰いだ。

「そうか……」

 だが同時に、納得もしていた。
 傷つくことも恐れずに、前に進む事を選択できる。
 それでこそ、お前だ。
 それでこそ、俺の愛した『龍の忍者』だ。

「では……行って来い。………立てるか?」

「ああ………」
 ハヤブサは頷くと―――――ふらふらと、その足で立ち上がった。
 枕も上がらぬ重体と、医師も「もう駄目だ」と匙を投げた、その身体であるのに。

 生きる気力が、戻りつつあるのか。
 俺の決断は、間に合ったのだろうか。
 彼は―――――死なずに済むのであろうか。

 ああ
 どうか生きて
 生きてくれ。

「ハヤテ………」

 呼び掛ける声にはっと顔を上げると、ハヤブサがこちらを気遣うように見ていた。
(お人好しだな、お前は……。俺の事など気にせずに、そのまま行けば良いものを――――)
 ハヤブサのそんな所作にハヤテは苦笑すると、ハヤブサを促すように手を振った。
「行け。お前の思うままに――――」
 道路一本隔てた所にキョウジのアパートがある。その出入り口まで自分が抱いて連れて行ってやっても良いが、自分も、ハヤブサに対して未練が無い訳ではない。もう一度その身体に触れてしまえば、手放す勇気が挫折しそうで怖かった。
 それに、愛する人が別の男の所に走るのを目の前まで手助けしてやる程、自分はお人好しでもないのだから。
「……………」
 ハヤブサは、そんなハヤテを暫くじっと見つめていたが、やがて、軽く頭を下げてから踵を返した。そのまま、ふらふらとキョウジのアパートに向かって歩き出す。一歩、一歩、おぼつかない足取りだが、確実に前へと進む。
「リュウ!」
 ハヤテは、そんなハヤブサの後ろ姿に呼びかけた。

「もしも、振られたら俺の所に来い! 面倒見てやるから―――――!」

 その言葉に、ハヤブサからの返事はない。しかし、彼の右手がふらふらと上がった。ちゃんと自分の声が聞こえていたのだとハヤテは感じて、少し胸を撫で下ろす。

 行け。
 そして、生きてくれ。

 ハヤテはハヤブサがその道路を渡りきるまで、その後ろ姿を見つめ続けていた―――――。

 シュバルツ……
 シュバルツ……

 その姿だけを求めて、龍の忍者は足を前へと動かす。

 手を振り払ってしまってから、もう半年以上経つ。
 だから、彼が自分の事を忘れてしまっていても、新しい恋人が出来ていたとしても、文句を言う資格はないのだと、ハヤブサは思った。もしかしたら、自分を待っているかもしれないなどと、都合のいい夢は見ない。

 だけど、一目、会いたかった。
 罵られても良い。
 殴られても良い。
 蔑まれても良い―――――。

 会いたかった。

 最期に、彼の姿を見て死ぬ事が出来るのなら―――――
 自分は、それで充分だった。

 地面がぐにゃぐにゃと揺れ、ともすれば倒れ込みそうになる。
 視界が時々、黒に染まる。

 だけど、足を止める事だけは、しない。
 ただひたすら、キョウジのアパートに向かって、歩く。

 会いたい。
 会いたい。

 シュバルツ………!

 龍の忍者は、あるだけの気力を振り絞って―――――歩を進め続けていた。


 キョウジ・カッシュは朝の日課をこなすために、アパートのドアを開けていた。
 夏場の朝の5時ともなると辺りは既に明るく、昼間は容赦のない猛暑に曝されるこの場所も、少し涼しげな空気が感じられる。最初は億劫だったこの朝のロードワークも、今ではすっかりキョウジの中では習慣となっていた。

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