農家の嫁の日記

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zoom RSS ただひたすらに、君を想う。 35

<<   作成日時 : 2015/08/02 22:34   >>

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「………………」

 キスを終え、離れたシュバルツは、笑顔だった。
 そして、涙を流していた。

「元気で………」

 光る物を飛び散らせながら、彼は自分の前から踵を返し、そして、姿を消した。

「シュバルツ……ッ! あ………! あ………!」

 ハヤブサは声も涙も、最早抑えることなく号泣していた。

 好きだった。
 どれだけ、愛していたか。
 どれだけ、彼が大切だったか―――――

 でも、もう鎖を解かれても、一歩も動けなかった自分。
 それが総てだった。
 それが答えだった。

 ハヤテを踏みにじってまで――――自分は、幸せにはなれないのだ。

 どうして
 どうしてこんな事になってしまったのだろう。

 幼馴染を傷つけ続け
 大切なヒトを、裏切って泣かせて―――――

 自分は、いったい何のために存在しているのだろう。

 誰かもういっそ、俺を殺してくれ。
 要らない。
 こんな自分など。
 大切なヒトを傷つける事しか出来ないと、そう言うのであるのならば

 消えてしまえばいい。
 呪われてしまえばいい。

 こんな自分などもう要らない。
 要らないんだ。

「リュウ様……」

 そこに、おずおずと声をかけてくる者がいた。ハヤブサが顔を上げると、あやねの姿がそこに在った。

「あやね……」

「リュウ様、大丈夫ですか……?」
 あやねが案じる様に問いかけてきながら、自分の傍に腰を下ろす。それを見て、シュバルツをここに連れて来てくれたのは彼女なのだと、ハヤブサは悟った。
「お前が、手配してくれたのか……」
 ハヤブサの言葉にあやねは頷く。
「ええ、リュウ様……。でも――――」
 ただ、あやねは戸惑ってもいた。自分は、てっきりシュバルツの差し出した手に、ハヤブサはついて行くと思っていたからだ。
 なのに――――
 まさか彼らの方が、ハヤテのために、自分たちの想いを封じ込める選択をするとは。

 ハヤテの一の部下として、ハヤテを想う者として、ハヤテを大切に想ってくれた彼らの気持ちは、ある意味嬉しい。
 でも―――――どうしても考えてしまう。

 本当に、これで良かったのだろうか?
 これは本当に、ハヤテのためになったのだろうか?

「案ずるな、あやね……」

 表情を曇らせるあやねに、ハヤブサは優しく言った。

「多分、これで良いんだ……」

「リュウ様……」
 笑顔なのに、まるで泣いているように見えるハヤブサの表情に、あやねの胸も締め付けられる。きっと、これで良い筈など無い。良い筈など無いのだ。
 だが、彼女は為すべき事があったがために、グッと歯を食いしばった。ここに『侵入者』があった事を、ハヤテに悟られてはならないのだ。
 だから彼女は顔を上げて、再びハヤブサに声をかけた。
「リュウ様、お辛いでしょうが、もう一度鎖にお繋ぎいたします」
 そう言ってあやねがハヤブサの手を取ろうとする。ハヤブサの鎖を解く事を、ハヤテはまだ許可していないのだ。それなのに鎖から解かれたハヤブサの姿を見てしまったら、ハヤテがハヤブサやこの牢番の者たちに、どんな制裁を課すか分からない。しかし、ハヤブサは首を横に振って、それを拒否した。
「良い。鎖は不要だ。あやね」
「で、でも……! それでは、リュウ様が――――!」
 ハヤブサの身を案じるあやねに、ハヤブサは静かに笑顔を見せた。
「大丈夫だ。もし、鎖を解いたことで受けるペナルティがあると言うのなら……それは俺が受ければ良いだけの話だから……」
「で、でも………!」
 尚も戸惑い続けるあやねに、ハヤブサの言葉はなおも続いた。
「それに、ここに侵入者があった事を、完全にハヤテから隠すことは不可能だ……」
「……えっ……?」
「あいつの事だ。部屋のあちこちに、俺たちにも分からないような仕掛けを施してあるに違いないんだ。それを見て、この部屋に侵入者があった事を、あっという間に見抜いてしまうだろう」
「そ、そんな……!」
「だからこういう事は……下手に隠し立てしない方が良いんだ。このままハヤテに会って、あったままの事実を、話してみようと思っている……」
「リュウ様……!」
「勿論、手引きしてくれた者たちの事は絶対に言わない……。ありがとう、あやね……。ハヤテや、俺の事を案じてくれて……」
「…………!」
 ハヤブサのこの言葉に、あやねは、自分がもう出来る事は何も無いのだと悟った。

 でも。
 でも本当に、これで良かったのだろうか?

 何か―――――救いようのない、大きなひずみを生みだしてしまった様な気がする。

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