農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS 龍と剣と、その拳と 3

<<   作成日時 : 2015/08/24 10:02   >>

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「ハヤテ殿から詫びられました……。酷い目に合わせて済まなかったと……。シュバルツさんにリュウさんが断交宣言したのも、おそらく、危険な任務に巻き込みたくなかったからだろうと……」

「与助……」
「……………」
 忍者二人の目の前で、与助はボロボロと涙を流し続ける。与助は、シュバルツが初めて隼の里を訪れた時から、ずっと二人の事を見守り続けていた存在だった。ハヤブサがシュバルツと断交する旨の手紙を受け取った時も、激しく動揺し、人一倍心を砕いていた。
 それだけに、今、再び二人の絆が戻った事を知って、胸の内にこみ上げる物があるのだろう。
「もう……! リュウさんは、何でもかんでも一人で背負いすぎです!」
「う………!」
「もう少し、我々の事も頼ってください!! あまり頼りにならないかもしれませんが、これでも皆心配していたのですから……!!」
 泣きながらそう言ってくる与助に、ハヤブサも返す言葉を失う。ただ「すまん」と、小さく返すのが、精一杯だった。
 それにしても驚いた。まさかハヤテが自分と別れた後、フォローのために走り回ってくれていたとは。
(ハヤテ……!)
 ハヤブサは心の中で、ハヤテに手を合わせていた。

「与助さん? ほら……泣いている場合じゃないでしょう? もうひと組のお客さんを、ハヤブサに取り次いでもいい?」

 キョウジに優しく言われて、与助もはっと顔を上げる。
「あ……! そうでした……!」
 与助は慌てて涙を拭うと、部屋の外に向かって「入っておいで!」と、声をかけた。すると、その声に合わせて、二人の子供が部屋に入ってきた。
「お前たちは……!」
 驚いたハヤブサは、思わず身を起こしていた。それもそのはずで、その子たちは、まさに隼の里の子どもたちであったのだから。
「リュウ様!」
「リュウ様!! 大丈夫!?」
 子どもたちはハヤブサの姿を認めると、一目散に駆け寄ってきた。
「リュウ様! 僕初めて里の外に出たよ!」
「電車に初めて乗ったの!」
「地下鉄にも!!」
 見舞いに来ているはずなのに、初めての体験に大興奮の子どもたち。ハヤブサは「そうか……」と、聞いていたが、その笑顔はとても優しいものになっていた。
「リュウ様、大丈夫!? とてもお辛そう……!」
「ご病気、まだ治らないの?」
「大丈夫だ……。もうすぐ治るから……」
 案じる子どもたちに優しく答えるハヤブサを見ながら、キョウジがこそっと与助に問いかける。
「それにしても……この子どもたち、どうやって選んだの? ここに来るの、凄い競争率高そうだけど……」
「ええ……。本当に大変でした。里の外に出る機会など、小さいうちは滅多にありません。だから、里の子の皆が、ここに来たがって――――」
 与助が、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりの表情を浮かべて答える。何でも、ここに来る子供を選抜するために、里では、ありとあらゆる試験が、子供たちに課せられたと言う。
 手裏剣の技、剣術、裁縫、脚力、料理―――――その『試験』は、多岐にわたった。
「皆、とても真剣にその試験に取り組んでくれました……。しかし、なかなかに甲乙がつけがたかったので――――――最終的には公平に、『くじ引き』で決定しました」
「…………!」
 ズルッとこけるキョウジの横で、与助がうんうん、と、頷いている。
「『運』を持っていると言う事も、生き延びていくためにはある意味必須な能力なので――――」
「そ……そうなのか? そうなのかな……? いや、そうとも言えるのか……?」
 与助の言葉に真面目に悩みだすキョウジ。それを、シュバルツも苦笑しながら見つめていた。
(……まあ、確かに、『運』は必要だろうけどな……)
 何事かを成し遂げるために、確かにある程度の『運』は必要だ。しかし、それだけではない。『運』を手繰り寄せるためにも、相当の努力が必要だとシュバルツは思った。

「リュウ様! これは、里に咲いていた花です!」
「これは皆で作ったの! リュウ様が、早くよくなりますようにって!」
「千羽鶴……! 大変だったんじゃないのか……?」
 花と千羽鶴を受け取りながら、少し茫然としているハヤブサに、子どもたちはにこっと笑顔をその面に浮かべた。
「ううん! ちっとも大変じゃなかったよ!」
「言ったじゃん! 『皆で作った』って!」
「おとうもおかあも、じいちゃんもばあちゃんも手伝ってくれたよ!」
「そうか……」
 ハヤブサは千羽鶴と花を、そっとベッドに置くと、子どもたちを優しく抱きしめていた。

「ありがとう……。お前たちの気持ち、確かに受け取った。俺は……早くよくなるからな……」

(いい場面だなぁ)
 その光景に、キョウジとシュバルツは少し涙ぐむ。そこに、与助がそっと声をかけて来た。
「キョウジ殿……。これは、少ないですが、我等の里からの寸志です。どうぞ、お受け取りください」
「い、いや、ちょっと待って! 私はそんなつもりでハヤブサの看病をしている訳では――――!」
「いえ……! ぜひ、お受け取りください! このままでは我等の気が済みませぬ!」
「や……でも……! こっちも日頃から、ハヤブサには世話になっているから――――!」
 『寸志』と言うには、やけに分厚い封筒が、キョウジと与助の間で暫く押し合いをされていたが、与助の『治療の必要経費と思って――――!』と言う言葉と迫力に押されて、ついにキョウジは封筒を受け取ることになってしまった。
「わ、わかった……! じゃあこれは、治療に有効に使わせてもらう事にするよ」
「ありがとうございます……!」
 キョウジの言葉に、与助は心底ほっとしたような笑みを浮かべる。それから、改めてキョウジに問いかけて来た。
「それにしてもリュウさんは……どうしてしまったのでしょうか? まさか、あんなに痩せ衰えているとは思ってもいなくて――――」
 与助の問いかけに、キョウジも表情を曇らせる。
「うん………。実は、私も迷ったんだ……。あんなに衰弱した状態のハヤブサを、貴方たちに会わせても良いものかどうか―――――」
 だが、自分に近しい人たちに会う事、物や気持ちに触れることは、患者にとってマイナスになることはない筈だ。現にハヤブサも、もの凄く柔らかい笑みを浮かべながら、子どもたちと話している。これは、ハヤブサの治ろうとする意志に、強く働きかける筈だと、キョウジは確信していた。
「貴方たちの存在や想いは、ハヤブサにはきっといい方向に働く筈だよ。でも……貴方たちにとっては、もしかしたらショックだった? ハヤブサのあんな姿は――――」
 キョウジの言葉に、与助は静かに頭を振っていた。

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