農家の嫁の日記

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zoom RSS ただひたすらに、君を想う。 36

<<   作成日時 : 2015/08/03 17:03   >>

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 何とかしてあげたい。
 だけど、自分ではもうどうする事も出来ない。

 あやねは、酷く後ろ髪を引かれる想いで、部屋から出て行った。

 彼女が部屋から出て行った後、ハヤブサは布団の上に座りなおして正座をした。
 そして――――そのまま、ハヤテが帰って来る事を、ひたすら待ち続けた。


 夜半。
『仕事』を終えて帰ってきたハヤテは、いつものようにハヤブサがいる座敷牢に向かう。
 そして――――そこに居たハヤブサの姿を見て、絶句していた。

「リュウ……!? お前………!」

 何故なら、ハヤブサを繋いでいた筈の鎖が、全部断ち切られてしまっていたから。それなのに、逃げるどころか部屋の真ん中で正座をしているハヤブサの姿に、酷く戸惑ってしまう。
「…………」
 ハヤブサは、しばらくそんなハヤテをじっと見つめていたが、やがて黙って三つ指をついて頭を下げた。
「リュウ? これは一体、どう言う事だ?」
 ハヤブサが頭を上げるのを待ってから、ハヤテは声をかける。
「鎖はどうした!? 一体何が――――」

「シュバルツが来た」

「―――――!」
 ハヤテが話し終わらぬうちに、ハヤブサがそう口を開く。

「シュバルツがここに来て、俺の鎖を断ち切ったんだ。……どうか、ここの牢番の者たちを責めないでやって欲しい。あいつもまた、腕利きの忍者だ。ここに忍び込む事など、あいつにとってはそう難しい事でもないのだから――――」

 そう言いながら、ハヤブサはハヤテの前に、己を繋いでいた鎖を差し出す。首の所を繋いでいた鉄輪が、見事に真っ二つになっていた。
「……………!」
 その剣の腕に、ハヤテもまた驚嘆せざるを得ない。余程の腕が無ければ、このような事など出来る筈もないのだから。ハヤテが茫然としている間にも、ハヤブサの言葉は続いていた。

「シュバルツは俺の鎖を断ち切って………共に逃げようと、手を差し出してきたんだ」

「な…………!」

 ハヤブサは、シュバルツを愛していた筈だ。
 自分に抱かれている最中にも、その名を呼んでしまう程に――――彼を、愛していた筈だった。
 それでは何故だ?
 それほど恋い慕う人から、手を差し伸べられたのなら――――
「………お前は……何故、ここに居るんだ?」
 そのハヤテの質問に、ハヤブサはひどく穏やかな笑みを浮かべた。

「俺は……その手を、取らなかったんだ……」

「リュウ……!」
「俺が決めたんだ……。自分の意志で、『ここに残る』と………」
「……………!」

 ハヤテは、半ば夢見心地でハヤブサの言葉を聞き続けていた。
 信じられなかった。
 本当に、ハヤブサは
 自分の意志で、あいつよりも俺を選ぶと――――
 そう、言ったのか?

「だからお願いだ、ハヤテ……。ここに侵入者を赦した件、俺の鎖が断ち切られた件で、牢番や他の者たちに制裁を科すことは止めてくれ……。もし、この件で何らかの『罰』が必要だと言うのなら、それは俺が――――」

 話している最中のハヤブサの頬に、ハヤテの手が触れてくる。

「リュウ……! 本当に……?」

「えっ?」

「本当にお前は………『あいつよりも俺を選ぶ』と……そう、言ってくれたのか……?」

「…………!」
 瞬間、ハヤブサの瞳が見開かれる。
 脳裏に、愛おしいヒトの影がちらつく。
 だが、もう後には引けない状況であることを、ハヤブサは理解していた。

 決めたのだ。
 自分はもう
 ハヤテのためだけに生きると。

「ああ……。俺は………」

 頬に触れる手を意識しながら、ハヤテの瞳をまっすぐ見つめながら、ハヤブサは応える。

「決めたんだ……。お前と共に、生きると……。『ハヤテ』……!」

 ハヤテの名を口にするたび、ハヤブサの心がズキリ、と、音を立てて軋んだ。
 何故なら――――その名を口にするたびに、ハヤブサは、心の中で愛おしいヒトの影に、刃をつき立て続けていたから。

 それは、まさしく自分の半身を殺す行為だった。
 それは、自分の心を殺し続ける行為にも似ていた。

 絶望に染まるハヤブサの瞳から、涙が零れ落ちていく。その涙を――――ハヤテの手が、優しく掬い取っていた。

「リュウ……!」

 対してハヤテは、歓喜に震え続けていた。
 幼いころから大事に想い続けていた人が
 やっと―――――この手に、落ちて来てくれたのだから。

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