農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS ただひたすらに、君を想う。 38

<<   作成日時 : 2015/08/07 00:42   >>

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(あれから、もう半年か……)

 シュバルツはいつもの木の所に凭れかかりながら、独り、いつものように待ち続けていた。
 分かっている。
 待ち人は来ない。
 半年前に、その手は取れないと、はっきりと振られていた。
 それを百も承知で、それでもシュバルツは、独り佇み続けていた。

 天神流の里から帰ってから、キョウジには事のあらましを報告していた。
「そうか……」
 静かに話を聞き続けていたキョウジだが、やがてポツリと口を開いた。

「ハヤブサらしいね………」

 そうだな、と、シュバルツが答えた所で、彼の感情が堰を切って溢れた。デスクの椅子に座るキョウジの膝に縋りついて、大泣きに泣いた。
 そんな自分を、キョウジは何も言わず、ただ優しく髪を撫で続けてくれていた。

「ねえ、シュバルツ。私たちは祈ろう」

 少し落ち着いてきたシュバルツに、キョウジがポツリと声をかける。

「ただ、ハヤブサの幸せを………」

「そうだな……」

 涙を拭いつつ、シュバルツも頷いた。

「本当に……その通りだ……」


 それからは、本当にいつも通りの日常が過ぎて行った。ただ、ハヤブサに会えない事を除いて―――――
 穏やかな日常を過ごさせてくれる、キョウジの配慮は素直にありがたかった。

 だが、日常が穏やかであればある程―――――失った物の空洞は、心に突き刺さって来るのも事実だ。だからシュバルツは、週に一度ここに来て、その空洞に浸りきることにしていた。
 よく哀しみも苦しみも日にち薬だと言われるが、今、この胸に抱えている物は、どんなに日にちが経った所で癒せる物ではない、と言う事を、シュバルツはうすうす気づき始めていた。
 当たり前だ。
 ハヤブサは全身全霊で、自分を愛してくれていた。そして、支えてくれていた。
 失った物は、決して小さい物ではないのだ。
(ハヤブサ……今、お前は幸せか……?)
 シュバルツにとって、最大の気がかりは、まさにそれであった。

 ハヤブサと別れてから実は一度だけ、シュバルツはハヤブサからの手紙を読んでいた。
 と、言っても、ハヤブサからシュバルツに宛てられた物ではない。彼から、里に向けて書かれた手紙を、与助が血相を変えて持って来たのだ。

「シュバルツさん!? どう言う事ですか!? リュウさんと『断交状態』って……!」

 天神流の里にハヤブサが滞在するようになってから1カ月目に、そんな手紙が隼の里に届いていた。それには、天神流の里の滞在が長引きそうだと言う事と、シュバルツとは今、断交状態にあるから、皆もそう心置く様に――――と、言った事が書かれていた。
「ああ、本当だ」
 それにシュバルツは、極力穏やかに答えた。それは事実だし、自分たちの間では、もう話し合いは済んでいる事であったからだ。
「な、何かリュウさんの方が、失礼な事をしたのでしょうか……! まさかと思いますが、リュウさんが浮気したとか―――――」

「そんなんじゃない」

 シュバルツは苦笑しながら、それに返事をした。
「ハヤブサはそんな事をする奴じゃない。これには、深い事情があるんだ。私たちは、お互いに話し合って納得して、そうなっているのだから……」
「……………!」
 シュバルツの言葉を、与助はただ茫然と聞くしかなかった。しかし、俄かには信じられなかった。ハヤブサもシュバルツも、互いをこれ以上無いと言うほど愛し合っていると、与助の眼にも映っていたからだ。
 それを、こんなにあっさり――――『断交』など出来るものだろうか?

「ハヤブサの手紙……」

 シュバルツからの言葉に、与助ははっと我に帰る。

「見せてもらってもいいか?」

「えっ? ああ、どうぞ……!」
 少し戸惑いながらも、特に反対する理由も無かったので、与助はシュバルツに手紙を渡した。その瞬間、シュバルツが一瞬顔をしかめたように見えたから、与助は思わず「大丈夫ですか?」と、問いかけてしまう。
 それにシュバルツは「ああ。大丈夫だ」と、答えてから、ハヤブサの手紙を読みだした。
 筆跡は確かにハヤブサの物で、文章も自分と断交していると言う件以外は、至って普通の内容の物だ。
 ただ―――――

「済まなかったな。ありがとう」

 シュバルツから手紙を受け取りながら、与助は改めてシュバルツに問いかけていた。
「シュバルツさん……! 本当に『断交』なんてしてしまわないですよね!? これは、一時的な物ですよね……?」
 与助の問いに、シュバルツは穏やかな笑みを浮かべる。
「それは分からない……。ただ、私とハヤブサは、互いを憎み合ったり、いがみ合ったりして別れた訳じゃないんだ……。だから――――」

 モシモ、ハヤブサノ方カラ助ケヲ求メラレレバ私ハ―――――

 そう言いかけて、シュバルツははっと思いとどまる。
 今のハヤブサの傍には、彼を愛しているハヤテ殿がいるのだ。
 そこに私が介入する余地などある筈も無く、私がハヤブサの傍に行った所で、迷惑にしかならないだろう。そして、ハヤブサの方から助けを求めてくることも、おそらく、あり得ない。

「……とにかく、私の方は心配いらないと、ハヤブサに会う機会があれば、そう伝えておいてくれ」

「シュバルツさん……!」
 穏やかにそう返事してくるシュバルツに、与助も、これ以上何も言えなくなってしまっていた。 

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