農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS 龍と剣と、その拳と 10

<<   作成日時 : 2015/09/01 23:32   >>

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「キョウジ………!」
「……………」
 再び黙りこくって、無言で鶴を折り続けていたキョウジであったが、やがて意を決したように顔を上げた。

「…………ドモンを呼ぼう」

「えっ?」
 少し驚いて顔を上げるシュバルツを脇目に、キョウジは立ち上がった。
「やっぱり、ドモンを呼ぼう! 何か、嫌な予感がする……!」
「お、おい、キョウジ――――」
 シュバルツも慌てて立ち上がって、携帯電話を掴もうとするキョウジの手を止める。
「性急すぎだ! 何もそんなに焦ってドモンを呼ばなくても―――――」
「でも、もしもこれが、私たちだけでは手に負えない案件に発展して行ったらどうする!? 何かあってからでは遅いんだ!!」
「キョウジ………!」
「口ではうまく説明できないけど、これはもう異常事態なんだ……! なかなか治らないハヤブサの身体と言い、さっきの彼の行動と言い―――――」
「それはそうかもしれないが…………」
 キョウジにそう言われると、シュバルツも反論の余地を失う。しかし、それでも少し大袈裟に騒いでいる様な気がしないでもなかった。
「それでもドモンを呼ぶほどの事じゃないだろう? あいつにだって都合や生活がある。もう少し様子を見てからでも――――」
「ああもう! 分かっていないなぁ! シュバルツは!!」
 キョウジが、少しイラついた様な声を上げた。
「私は怖いんだ!! もしも何かあった時、私は実質的に自分の身を守る術を持たない!! そんな私と、お前とだけで――――この状態のハヤブサを守れるか!?」
「―――――!」
「怖い……! 訳のわからない恐怖を感じる……! それとも、この感覚は私だけか!? シュバルツ………お前は何も感じないのか!?」
「キョウジ………!」
 叫んでこちらをまっすぐ見つめるキョウジの身体が、小刻みに震えている。どうやら彼は本当に―――――洒落にならないレベルで恐怖を感じているようだった。
(キョウジのこういう時の『勘』は、何故か当たることが多いからなぁ……)
 シュバルツは小さくため息を吐くと、キョウジに同意する事にした。
「分かった……。お前の気が済むようにすればいい」
「ありがとう、シュバルツ……!」
 キョウジはシュバルツに礼を言うと、すぐに携帯を取ってドモンに電話しだした。相変わらず兄からの電話に敏感な弟は、2コール目ぐらいですぐに出た。
「ああドモン? 悪いんだけど、すぐに来てくれないか? ちょっと……話したい事があって………」
「兄さんが危機なのか!? 分かった!! すぐに行くッ!!」
 言うや否や、携帯の通話が切れる。これは本当に―――――猛烈に『すぐ』に来そうな予感がした。
「や……まだ、そこまでは言ってないんだけど…………」
 通話が切れた携帯電話に向かって、キョウジはそう独りごちる。相変わらず過剰反応してくる弟に苦笑しながらも、彼が来るのならば何か料理でも――――と思ったキョウジが台所に向かおうとして、食料品のストックがあまりなかった事を思い出していた。
「シュバルツ」
「ん?」
 ハヤブサの傍で千羽鶴を折っていたシュバルツが、顔を上げる。
「多分、ドモンがすぐ来ると思うから、ちょっと事情を説明していてくれないか? 私はちょっと出かけてくる」
「何処へ行くんだ? キョウジ」
「食料品の買い出し。あいつが来るんなら、買い足しといたほうがいいだろう? よく食べるし、この後、買い物できなくなると困るし――――」
「分かった……。気をつけて行って来い」
「ありがとう。じゃあ、後の事をよろしくね」
 そう言って、キョウジは部屋から出て行った。忍者二人になった部屋に、少しの沈黙が訪れる。
「……………」
 シュバルツは千羽鶴の修復作業を続けながら、先程のハヤブサとの一連の会話を思い出していた。
(それにしても……ハヤブサの気持ちが、今日少し分かってしまったな……。哀しい言葉を言わせたくなくて、聞きたくなくて―――――その唇を、塞いでしまう事ってあるんだ………)
 ハヤブサと会話をしている時、シュバルツも叫ぶ途中でハヤブサによく唇を奪われていた。どうして彼は、いちいちこんな事をしてくるのだろうと思っていたが―――――
 確かにそうだ。
 黙らせたい時、「愛している」と伝えたい時―――――この手段は、非常に有効だ。
「……………」
 シュバルツは、己が唇に、そっと指をあてる。先程のハヤブサとのキスの感触を思い出して、頬が火照るのを感じた。
(そう言えば………一体何時から、私はハヤブサに抱かれていないのだろう………)
 ふと、そう思って、身体の最奥が、甘く疼くのを感じた。
 こんな事を想うのは禁忌だ。それは充分分かっている。
 でも―――――

 ココロが勝手に、望んでしまう。

 彼に触れたい。
 触れて欲しい。
 深く繋がりたい。
 最奥を掻き回して、私を暴き立てて欲しい―――――

 そこまで考えてしまってから、シュバルツははっと我に帰る。
(ば、馬鹿っ!! 無いだろう!? こんな状態のハヤブサに『抱いて欲しい』だなんて―――――!)
 だいたい、繋がりを求めるのだって本来なら望んでは駄目なのだ。
 ハヤブサは『人間』で、自分は歪な物質『DG細胞』で構成されているアンドロイド。
 自分に深く触れると言う事は、少なからずその相手を、『DG細胞』の脅威に曝してしまう事を意味する。そんな事、許される筈もないのに。
(抱きたい……! お前が、欲しいんだ………!)
 ハヤブサにそう強く望まれると、拒絶し切れない自分がいる。それどころか、『彼が望むなら、喜んでくれるなら』と、進んで身体を差し出してしまう自分がいる。それで、彼の『愛情』を、自分に繋ぎ止める事が出来るのなら、自分の何と引き換えにしても、惜しくは無いとさえ、思ってしまっていた。
 それほどまでに――――ハヤブサから降り注いでくる愛のシャワーは強烈だった。
 少しでも傍に居て、長く浴びていたい、と、そう願ってしまうほどに。
(でもきっと……欲しがるだけでは駄目だ……。与えられたのなら、自分はハヤブサに、ちゃんと何かを返して行かないと―――――)
 そう。ハヤブサの『愛』を受けても、それを結実させて、彼の命を未来に繋いでいく事の出来ない自分は、ハヤブサにとって、愛し続けていても何もメリットがない存在だった。
 だからこそ自分は、ハヤブサの幸せを誰よりも願わなければならないし、彼の幸せを、邪魔する存在であってはならないと思う。

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