農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 龍と剣と、その拳と 18

<<   作成日時 : 2015/09/13 05:41   >>

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「………………」
 周りの物を何も破壊せず、無事に着地出来た事を確認して、シュバルツはほっとため息を吐いていた。やれやれ、と、周囲の状況を彼が確認するべく顔を上げようとするよりも早く、『少年』の怒声が飛んでくる。

「な――――! 貴様ッ!! 何故ここに姿を現した!?」

(子供がいるのか!?)
 驚いたシュバルツはその声のした方に顔を上げて、更に驚いてしまう。何故ならそこには、自分の酷く見知った顔があったからだ。
 亜麻色の長い髪を無造作に一つに束ねて風になびかせ、黒の忍び装束を身に纏って―――――その少年はそこに立っていた。色素の薄いグリーンの瞳に、日本人離れした、整った顔立ち。勝ち気そうな鋭い視線が、こちらを射抜いてくる。
 見間違えようもない、この顔は。この美しい少年は。

「ハヤブサ!?」

 シュバルツは思わず、素っ頓狂な声を上げていた。だが、ハヤブサと思われるその少年からは、さらに鋭い怒声が帰ってきた。

「気易く俺の名を呼ぶなッ!!」

「……………!」
 真正面からぶつけられる叫び。その少年の面には、殺気と怒りと哀しみが満ち溢れているから、シュバルツは戸惑ってしまう。
 分からない。
 何故自分は、こんなにもハヤブサから拒絶されるような意志をぶつけられるのだろう?

 対して『ハヤブサ』と思われるその少年は、噛みつかんばかりの勢いでシュバルツを睨み続けていた。
「ここは里の中でも絶対的な『聖域』で――――幾重にも施された結界が侵入者を拒んでいる筈だ!! なのに何故―――――貴様の様な者が、こんな所に入り込んでいる!? どうやって入ってきた!?」
「ま、待て! ハヤブサ!」
 ハヤブサと思われる少年から受ける殺気や敵意の意味が分からず、シュバルツはただ戸惑うばかりだ。
「俺の名を呼ぶなと言うに!!」
 少年が抜刀し、シュバルツに襲いかかって来る。
「くっ!」
 やむを得ずシュバルツも抜刀し、それに対応した。
「何故私に戦いを挑む!? 理由を聞かせろ!!」
 ハヤブサの鋭い剣撃を受けながら、シュバルツは叫ぶ。すると少年ハヤブサから、意外な答えが返ってきた。

「黙れ!! 里を襲ってきた張本人が――――!!」

「何っ!?」
 驚き、息を飲むシュバルツに、ハヤブサは更にたたみかけてくる。
「見間違えも、忘れもしないぞ。貴様のその顔―――――! 女子供、赤子に至るまで容赦なく斬り裂いて―――――!」
「な…………!」
 ハヤブサの言葉に、シュバルツはただ茫然とするしかない。自分は当然隼の里など襲ってなどいない。全くの濡れ衣だった。だが―――――
(―――――!)
 ここでシュバルツは、自分の視界に映る自分の服装が、全く別の物になっている事に気づく。いつの間にか自分は、朽葉色の忍び装束を着ていた。手に持っている刀も、全く違う物になっている。
(まさか――――!?)
 シュバルツは咄嗟に、自分の姿が確認できる場所を探す。すると少し離れた場所に、小さな滝と、そこから流れ落ちるせせらぎを見つけた。
「……………!」
 シュバルツはハヤブサを弾き飛ばすと、無言でそのせせらぎに向かって走り出した。
「お、おい!! 何処へ行く!?」
 少年ハヤブサが、後ろから追いかけてくる気配を感じる。それには構わず、シュバルツはひたすらせせらぎを目指した。そして、ガバッとその水面を覗き込んで――――
「あ…………!」
 全く見も知らぬ初老の男性の顔がそこにあったから、息を飲んでしまう。白髪混じりの太い眉の下に光る鋭い眼光。尖った鉤鼻、顔中に、深く刻まれた皺――――水面に映る動揺した表情のその男性が、自分と同じ動きをするから、シュバルツは否が応でも突きつけられてしまう。自分は今―――――どう言う理由か分からないが、ハヤブサにとっては『仇』と言っても差し支えも無い人間の姿になってしまっているのだと。

「何をしている!? こっちを向けッ!!」

 背後から、少年ハヤブサの怒声が刺さる。
「……………」
 シュバルツは無言で振り返る。すると、少年ハヤブサが、刀を構えながら、真っ直ぐこちらを射抜く様な眼差しで見ていた。

「刀を抜けッ!! 構えろ!! 皆の仇――――今ここで俺が討ってやる!!」

(ああ、『本物』だ)
 その少年の言動行動に、シュバルツは却って確信を深める。
 忍びにはあるまじき、真っ直ぐな勝負を挑んでくる少年。余程自分の腕に自信があるのか、それとも、妙に律儀で義理堅い彼の性格が、そうさせてしまっているのか――――――「忍ばない忍び」になってしまうハヤブサの特徴が、如実に表れていた。
(それにしても、甘い奴だな)
 そう感じて、シュバルツは苦笑する。水面を覗き込んでいた時の自分は、確実に隙だらけだった。あの瞬間、背後から討っていたなら、自分を確実に、殺せたであろうに。
(どうする?)
 目の前の少年の望みに応じて刀を抜刀し構えながら、シュバルツは考えた。どうやら自分は、あのハヤブサにとっては『仇』に当たる人間になってしまっているようだ。
 ハヤブサが望むのならば、討たれることも自分はやぶさかではない。だが――――それで、本当にいいのだろうか? 自分がハヤブサに討たれる事が、今この事態を打開する一助に、なるのだろうか?
「……………」
 刀を構えながらハヤブサの様子を見ていたシュバルツは、ここである事に気付いた。
 少年ハヤブサの構える刀は、『龍剣』ではない。ごく普通の刀だ。
(妙だな)
 シュバルツは軽く違和感を覚える。
 ハヤブサと言えば『龍剣の使い手』―――――文字通り、特殊な妖刀『龍剣』に、選ばれた使い手だった。この二つがセットで、彼は『龍の忍者』となり得ていると言っていい。
 なのに何故―――――目の前のこの少年ハヤブサは、それを持っていないのだろうか?
(これは少し、様子を見た方がいいのかもしれない)
 彼は軽く息を吐きながら、手に持つ刀を構えなおした。

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