農家の嫁の日記

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災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS 龍と剣と、その拳と 23

<<   作成日時 : 2015/09/20 23:50   >>

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「我々には、対抗できる手段がありますので―――――」
 そう言いながら、青年が手を手を振ると同時に、無数のきらめきが影に向かって迸る。ナイフは過たず影達を貫き、それを粉砕していた。
「ですから下がって!! どうかお早く!!」
 青年はそう言いながら、フェンシングの剣を構えて影達に突っ込んで行く。
「……………!」
 警官隊の隊長は、しばらくその男たちの戦いを茫然と見つめていたが、彼らの戦いが影達を圧倒していると見て取ると、自分たちの役目を理解した。彼らの戦いを助けるために、自分たちは、何を置いても街の人たちの安全を確保する事こそが重要なのだと。
「みなさん!! もっと下がって!! 下がってください!!」
 警官隊はそう叫びながら街の人々を誘導して行く。その横で隊長が自分の上司である局長に連絡を入れていた。
「お願いします!! 避難指示範囲を拡大するよう要請してください!!」
 トランシーバーに向かって、彼は言葉を続けた。
「現場の判断です!! 市民の命を守るためです!! お願いします!!」
 悲鳴と怒声の中、彼は必死に上司に頼み込んでいた。
 また街中で、ドオン!! と轟音が響き渡っていた。


(……やった……! 仕留めたぞ………!)
 奈落の底に落ちて行く鬼蜘蛛党の頭首を見つめながら、少年ハヤブサは小さなため息を吐いていた。
 手応えはあった。腹を切り裂き、この高さから落ちれば、いくらあの男が超人的な強さを誇っていたのだとしても、もう助からないだろう。
「……………」
 無言で刀の露払いをし、鞘に納める。
 分かっている。こんな事をやったところで、殺された里の者たちが帰って来る訳ではない。
 空しさが襲う。
 だが、人を斬った事に後悔は無かった。殺らなければ、こちらがやられていた。

 守りたければ、斬らねばならぬ。
 自らの手を、汚さねばならぬ。
 これは、ハヤブサが幼いころから教え込まれてきた鉄則だった。

「鬼になれ。そうしなければ、守る者も守れぬ」

 父のこの教えには納得している。斬った相手も、斬られて当然の奴だ。
 なのにどうして―――――

 人を斬った後、胸が痛むのは何故なのだろう。

 やれやれ、元の修行に戻るか、とハヤブサが小さくため息を吐いた、その刹那。
 上空から、何者かが落ちてくる気配がする。
「――――――!?」
 見上げた先に、何か見覚えのある朽葉色の忍び装束が。

 ドスン!! と、どこか間抜けな音と共に、先程の男が落ちて来た。

「な―――――!」
 呆気にとられるハヤブサに向かって、男が引きつった笑顔を見せてくる。

「た……ただいま……」

「『ただいま』などと言っている場合か―――――ッ!!」
 思わずハヤブサは、大声を張り上げていた。
「ふざけるなッ!! 何でまた貴様がここに居る!? 斬られた腹の傷はどうした!?」
「ええと、それは、その………」
 何故か歯切れの悪い返事をしてくるその男に、ハヤブサのイラつきはさらに募る。ハヤブサは無言で抜刀すると、おもむろにその男の喉元に、刀の切っ先を突きつけた。
「手を上げろ!! そのまま、動くなよ……!」
「…………!」
 男は、言われたとおりの姿勢になる。目の前に差し出された男の腹をハヤブサは検分する。しかし、そこには切り裂かれた朽葉色の忍び装束はあっても、その下の腹は傷一つ無く綺麗な物だった。
「………どう言う事だ? これは……!」
 茫然としているハヤブサに、男が声をかけてくる。
「……少し事情を説明したい。これを退けてくれないか、ハヤブサ」
「信用できるか!!」
 ハヤブサは頑なに刀を突きつけ続ける。男は少し困ったように笑うと、腰にさしている刀を、おもむろにハヤブサの方に差し出した。
「私は、今ここで君と争う気はない。ほら、武器を取りあげろ」
「……………!」
「ほら、早くしろ。そうしなければ、君は私と話もしてくれないのだろう?」
「何か、小細工をしかけては――――」
「いない。こんな距離で小細工を弄したとしても、私だってただでは済まない。そんなつまらない事はしないさ」
「………………」
「とにかく君と話がしたい。私の望みはそれだけだ」
 ハヤブサは推し量る様に男を睨みつけていたが、やがて男の腰から刀を取りあげると、それを出来るだけ遠くの方に放り投げた。それから2、3歩下がって、刀の切っ先を下げる。
「話とは何だ? つまらない事だったら承知しないぞ……!」
(まるで鞘を持たぬ剥き出しの刀身の様だ……。青いな……)
 少年ハヤブサの全身から迸る殺気に、シュバルツは苦笑する。
 だが無理からぬこととも思う。
 20歳かそこらで常人にはとても到達できぬ高みに上り詰めるハヤブサではあるが、最初からそうであった訳ではない。そこに至るまでの、修行の過程があるのだ。この少年が収まるべき『鞘』は、これから自分で作っていく事になるのだろう。
「まず、ハヤブサ……。聞くが、ここは『里』ではどう言う所になるのだ?」
「その問いに、答える義理はあるのか?」
 ギッ! と、睨みつけてくるハヤブサの視線を受け止めながら、シュバルツは言葉を続けた。
「ああ。知りたいな……。どうやら私たちは、この空間に『閉じ込められた』様だから」
「何っ!?」
 驚くハヤブサに、「証拠を見せてやる」とシュバルツは軽く言うと、おもむろに背後の崖から飛び降りた。
「な―――――!!」
 慌てて崖に駆け寄り、鬼蜘蛛の頭首が落ちて行った場所を覗き込むハヤブサ。すると、自分の『背後』にその男が『上から』降りて来た。
「………………!」
「な……。御覧の通り、崖から飛び降りようが、強制的にここに戻されてしまう様なんだ」
 男は苦笑しながら、ハヤブサにそう説明をした。
「そんな馬鹿な―――――!」
 ハヤブサは踵を返して、自分がこの場所に入る時にくぐり抜けた鳥居の下まで走る。
 そこから一歩、彼が外に出ようとすると、頑丈な壁の様な物に当たって、ハヤブサの身体はそのまま弾き返されてしまった。

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