農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 龍と剣と、その拳と 24

<<   作成日時 : 2015/09/22 01:43   >>

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「そ、そんな……!」
 少年ハヤブサは、もう一度鳥居の下から外に出ようと試みる。だが結果は同じで、また彼の身体は弾き返されるだけであった。
「ぐっ!!」
「ハヤブサ!!」
 後から追いかけてきたシュバルツが、彼の身体を助け起こそうとする。しかし。
「俺に触れるな!!」
 激しい拒絶の意志をぶつけられて、シュバルツはそれ以上、彼に近付けなくなってしまった。起きあがったハヤブサは、ふらふらと鳥居の下まで歩いて行くと、そこから出られない事を確認して、ただ茫然としてしまっていた。

「そんな……! 父上……ッ!」

 通り抜けられない壁をバン! と、悔しそうに叩いて、そのまま肩を震わせてしまっているハヤブサ。
(ああ、子どもだな)
 シュバルツは少し複雑な思いで少年ハヤブサの後ろ姿を見つめる。彼としても、ここに閉じ込められてしまう事は、予想だにしていなかった出来事なのだろう。
 しかし、仮にも『敵』と認識している自分に対して背中を見せて、随分と無防備に泣くものだ。この少年は、自分に後ろから討たれるかもしれないと――――考えもしないのだろうか? それともこれは、彼が無意識に、こちらを信頼していると思ってもいいのだろうか?
 そうだとしたら、もう少し、泣かせてやりたい。だが、このままでは埒が明かないことも事実だ。
 シュバルツはとにかく、状況を打開するために、ハヤブサに声をかけることにした。
「ハヤブサ……」
「何だ!?」
 噛みつく様に返事をしてくるハヤブサに、シュバルツは苦笑する。だが、それには構わず言葉を続けた。

「………よかったら、教えてくれないか? 里の中でどう言う位置づけの場所なのだ? そして君は、ここに何をしに来ているのだ?」

「……………!」

「今――――里は襲われているのだろう? 本来ならば、里を守って戦いたいのではないのか?」
「うるさい!! 元はと言えば貴様が――――!!」
「………そうだったな……」
 ハヤブサの憎悪を真正面から受け止める。今――――自分はハヤブサにとって、何故か『仇』となって見えてしまっているらしかった。
(これは……おそらくハヤブサの『精神世界』と、『彼を蝕む者』の為せる技なのだろうが……)
 シュバルツは考える。気を失う直前の状況を鑑みるに、自分はおそらく、現実世界でハヤブサを蝕む者に、一度捕らえられたと考えて良かった。気を失う直前、無理やり眠りに引きずり込まれた感覚。その後の闇の世界は、おそらく、ハヤブサを蝕んでいる物の世界だろう。そこに在った悪意と憎悪は、自分を捕らえ、そして殺そうとしていた。
 だが、その中にポツリと小さくあった光―――――これこそが、ハヤブサの『心』の世界なのだと判断してよさそうだった。

 その中に子どもの姿となって、閉じ込められてしまっているハヤブサ――――

(これは、おそらく彼を導いてやらないと駄目だ)
 シュバルツは、この世界での己の役割を、直感的に理解した。
 彼が、この世界から再び、外の世界に出られるように。
 彼が、子どもから、大人の姿に戻れるように。

 そうしなければ、彼は何時まで経ってもこの世界から出られず、下手をしたら、彼を蝕んでいる邪悪な物に、彼の『心』が完全に食われてしまうかもしれない。それは、ハヤブサの現実世界の肉体の死をも、意味しているとシュバルツは感じた。

 その事態だけは何としても避けねばならぬ。
 自分は、ハヤブサを守りたいのだ。そして、救いたいのだ。

 その為に恨まれようが憎まれようが、一向に構わないとシュバルツは思った。
 要は、ハヤブサを助ける事が出来さえすれば、それでいいのだ。

「…………!」
 面に穏やかだが哀しげな笑みを浮かべた鬼蜘蛛党の頭首の顔に、ハヤブサは何か引っかかるものを感じる。
 何故だろう、知っている。
 あの彼の、哀しげな眼差しを、自分はどこかで見た事がある。

 何処だろう。
 何故だろう。

 落ちつかない様な気持になる。

 大切な物。
 ひどく、大切な、モノ。

 思い出さなければいけない様な気がした。

 ―――――思イ出スナ………

 不意に、脳裏に仄暗い声で、何者かに呼び掛けられる。

 ――――アノ者ハ、『仇』ナノダロウ? ナラバ、深ク考エルナ……

「う……………!」

 ――――思イ出セ……。アノ者ニ殺サレタ里ノ者タチヲ………引キ裂カレタ、赤ン坊ノ姿ヲ………
  
「…………!」

 ――――オ前ハ、タダソノ心ガ命ジルママニ………アノ男ヲ恨ンデオレバヨイノダ………

 それだけを言うと、仄暗い声は去って行った。ハヤブサは正気に戻るために、ブン、と、頭を強く振った。
 確かに、目の前に居る男は『仇』
 自分の、憎むべき『仇』だった。
(惑わされるな……)
 ハヤブサは、強く己に命じる。
 目の前の男の言葉にも。先程響いて来た、あの暗い声にも。
 信じるべきは自分の『心』だ。そして、今までの経験と修行だ。

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