農家の嫁の日記

アクセスカウンタ

本の販売を始めました!
ここより本の注文画面に飛べます。
当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS 龍と剣と、その拳と 44

<<   作成日時 : 2015/10/30 02:33   >>

面白い ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

     「第4章」


 手応えは感じていた。
 確実に、自分は強くなっていると言う手応え。
 男との修行は、確かに自分の剣技を磨いていた。

「ほら」

 ある程度修業を終えると、男は祠の裏から握り飯を持って来て、そっと差し出してくる。 そして、自分から離れたところにどかっと腰を落ち着ける。
 そんな光景が、もうハヤブサの中では当たり前の物になりつつあった。
 差し出される握り飯は、相変わらず美味い。

(このままでいいのだろうか)

 握り飯をほおばりながら、ハヤブサは思う。
 目の前にいる男は、自分の里を襲った『仇』の筈だ。それなのに―――――

 こうして、『龍剣』を手に入れるための修行を、手伝ってくれている。

 良いのか?
 このままで、本当に良いのだろうか?

 この男が俺に龍剣を手に入れさせる、その『真の目的』は何だ?
 俺が龍剣を手に入れることで、この男に、何のメリットがあると言うのだろう?

 考えれば考える程、訳が分からなくなってくる。
 だからハヤブサは、気がつけば男に声をかけていた。

「おい」

「何だ?」
 離れていると言っても、声をかければ聞こえる程度の距離なので、男はすぐに振り向く。
「お前、何を考えている?」
 その質問に男は「特に何も」と、返してくる。質問の内容が抽象的過ぎたと感じたハヤブサは、もっとストレートな質問をぶつけることにした。

「お前は……本当に、俺の『仇』なのか?」

「…………!」
 男は一瞬目を見開いた後、ハヤブサから視線を逸らして少しの間沈黙をする。
 ハヤブサはその横顔を、知らず懸命に見つめていた。

 敵なのか
 それともそうじゃないのか
 はっきりして欲しい。
 自分は、それが一番知りたいのだから。

 もし、「違う」と一言。
 一言で良い。
 そう言ってくれたなら、俺は―――――

 男はハヤブサのその視線に気がついたのか、ハヤブサの方に振り向いた。
 やがて、その面にフッと、穏やかな笑みを浮かべる。

「違う」

「―――――!」
 思わず、弾かれるように立ちあがりかけるハヤブサ。だが、ハヤブサが声を上げるより先に、男からピシャリと冷水をかけられた。

「――――と、言えば、君は私を信じるのか?」

「…………!」
 絶句し、茫然とするハヤブサに、男は更に言葉を重ねて来た。
「他人を、そんなに簡単に信じてはいけないと―――――君は誰かから学ばなかったのか?」
「あ…………!」

(リュウ。お前は優しすぎる。簡単に、人を信じすぎる)

 ハヤブサの脳裏に、父であるジョウの、渋い表情が甦る。

(我々の生きる世界は謂わば、闇の道。近づいてくる他人をすべて撥ねのけろとも言わんが、信じすぎてもならぬ。そんな甘い考えでは、この先、到底生きてはいけまいぞ)
「……………ッ!」

(違う)

 父の言葉に対してそう叫びたい自分がいるのに、叫ぶための一歩を踏み出す事が出来ない自分もまた、そこにいる。
 でも確かにそうなのだ。
 自分が生きる忍びの道は、闇の世界の道。
 生きるために騙し、裏切るのは当たり前の世界。
 そんな中を生き抜いて来た父の言葉は、どこまでも正しく、否定できない重みがあった。

 信じてはならぬ。
 弱さは呪いだ。
 優しさは、足枷だ。

 ――――本当に?

 本当に、そうか?

 もしも、何もかも信じてはならないと言うのなら。
 今、この手の中にある握り飯の美味さも。
 目の前の男が繰り出す剣の美しさも。

 信じてはならない、と、言うのだろうか――――

 もしも、そうだと言うのなら
 それはあまりにも―――――

「……………ッ!」

 ハヤブサはいたたまれなくなって、すくっと立ち上がった。
 ごちゃごちゃと考えすぎてしまっている自分を自覚したが故に、クールダウンする必要性を感じたのだ。
 立ち上がり、無言で歩きだす自分を、男も黙って見送っていた。


 男から離れて少し歩いた所で、目的の場所にハヤブサは到着していた。閉じられたこの小さな空間内では、そんなに長い距離を移動する事は無い。しかし、この空間の中に『これ』があって良かったと、ハヤブサは思った。
 そこには、小さな石が鎮座していた。
 そしてその前には、小さな花立てと線香立てが設えられてある。
 そう、それは『墓』だった。
 幼いころに死に別れてしまった友人の―――――

「……………」

 ハヤブサはその前に座り、手を合わせて祈りをささげる。
 自分の心と向き合いたい時に、ハヤブサはよくここに来ていた。
 どんなに周りが信じられなくなっても、この友人だけは信じられる存在だった。
 何故なら彼は、最期まで自分を守って、死んで行ってしまったのだから。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
面白い

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
 いつも愛読していただいてありがとうございます(^^)。
また、気持ち玉へのクリックもありがとうございます! 
ものすごくものすごく励みになります。
アンケート実施しています(*^^*)ご協力お願いいたしますm(__)m
 当方のブログの内容とあまり関係の無いTBは、削除させていただきます。
 悪しからず、ご了承ください。

アンケート実施中

龍と剣と、その拳と 44 農家の嫁の日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる