農家の嫁の日記

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災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 龍と剣と、その拳と 45

<<   作成日時 : 2015/10/30 15:26   >>

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 幼いころに、自分は母を亡くしていた。
 だが、『母が居ない』と言う事で、多少なりとも喪失感があっても、自分は特段、淋しさを感じることは無かった。何故なら自分には、乳母と乳兄弟がいたからだ。
 その乳母は優しく、少し年上の乳兄弟は、本当の兄弟の様だった。
 乳兄弟の名は『タケル』と言った。
 その乳母とタケルのおかげで、母とか、家族と言う物を、理解するのに苦労は無かった。そして、タケルの父は、わが父であるジョウに仕える武人であった。

「と、言う事は、俺も大きくなったら、父上みたいにお前に仕えることになるのかな」

「そうなの?」

「ああ。だからリュウ。お前も、お前の父上殿に負けないぐらい、強くなれ」

 そう言って、俺の頭を優しく撫でる。其れがタケルの日課の様になっていた。

 タケルと打ち込む剣の修業は、厳しい時もあったが、楽しかった。
 タケルがいてくれたから、どんな辛い修行にも、耐えられた。
 大汗をかいて帰ってきた時に、乳母がよそってくれた白いご飯は、堪らなく温かくて、おいしかった。
 そうして修行に励むハヤブサの剣の腕は、元々の高い素質も手伝ってか――――子どもながらに大人にも引けを取らない物へと成長して行っていた。

 そしてそんな中、『悲劇』は起きた。

「ジョウの息子がいたぞ!!」

 散策のために里の周辺にタケルと出て来ていた時、運悪く里を狙う忍者団と遭遇してしまった。怒号と共に、彼らは一斉に、自分に襲いかかって来た。
「逃げろ!! リュウ!!」
 子どもたちは必死になって逃げる。だが大人と子供のリーチの違い。そして、多勢に無勢―――――ハヤブサたちが追いつめられるのに、そう時間はかからなかった。
「……………!」
 やむを得ずハヤブサは、抜刀して立ち向かった。皮肉な事に、これが彼にとって初めての『実戦』となった。
 教えられた通りに刀を振るい、相手を斬り伏せる。

「ぎゃあ!!」

 相手の身体から飛び散る、生温かい鮮血。『人を斬った』と言ういやな感触と共に、それはハヤブサの身体をどろりと濡らした。
「――――――ッ!」
 噎せかえる血の匂いと、斬られた痛みでのたうちまわる相手。ある種凄惨な光景に、ハヤブサの心は恐怖に鷲掴まれてしまう。

「リュウ!!」

 タケルの声が、自分をはっと正気に戻す。「逃げよう!!」と腕を引っ張られて、固まりそうだったハヤブサの足が、ようやく動き出した。
 よく見たら、タケルの身体も血だらけだ。そして、その顔色は蒼白で、その腕も震えていた。
(守らなければ)
 強く思った。
 タケルは自分を守ってくれた。
 だから、今度は自分が守らなければ。
 その為に――――自分は強くなった筈なのだから。

 走った先に、また敵が現れた。どうやら、回り込まれていたらしかった。

「りゃああああああっ!!」

 ハヤブサは、躊躇わずに踏み込んだ。
 『守る』ために血に汚れるのが自分の役割なのだと、子どもは既に『理解』していた。
 迷わずに振り切られた白刃は、大人3人をあっという間に斬り伏せた。

 ――――とどめを刺せ!

 頭の中に、父ジョウの声が響く。
「……………!」
 だがハヤブサは、その声に頭をふった。

 もう相手に、戦闘を継続する能力は無い。それで、充分じゃないのか。
 それに、動く事が出来ずに呻いている相手に、刀を振り下ろすなんて―――――

 命までは奪わない。
 だからお願いだ。
 どうかそのまま帰ってくれ―――――

 その願いと共に続けられた戦い。
 しかしやがて、それは最悪な形でしっぺ返しを食らう事になってしまった。

「危ない!!」


 叫び声と共に、タケルが飛び込んでくる。
「―――――!」
 自分が振り向いたときには、既にタケルは、斬り伏せられた後だった。
 それも、自分が片腕を斬り落とした男によって―――――

「あ……あ……! タケル………! タケル―――――ッ!!」

 その後のことは、よく憶えていない。
 ただ、里の者たちが助けに入ってくれて、もう動く事のないタケルの『遺骸』を、何とか里に連れ帰れた事だけは、何となく記憶に残っている。
(俺のせいだ……!)
 ハヤブサは、己が剣の『甘さ』を悔いた。
 父の教えに背いて、とどめを刺さなかった戦いを悔いた。

 馬鹿だ。
 馬鹿だ。

 自分みたいな非力な子どもが何かを『守ろう』と言うのなら―――――
 それ以上の犠牲を、自分に課さねばならなかったのに。
 戦いながら自分は、己が『心』を守ってしまった。
 其れが―――――この結果を招いたのだ。

 タケルの死は、ほぼ自分のせいだ。
 それを責めて欲しくて。
 詰って欲しくてハヤブサは、乳母夫婦の元に足を運んだ。

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