農家の嫁の日記

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災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS 龍と剣と、その拳と 31

<<   作成日時 : 2015/10/03 16:16   >>

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 ガンッ!!
 ガツンッ!!

 刀の打ち合う音だけが、辺りに響く。
 太刀を相手の身体に何とか届かせようと試みるが、目の前の仁王には、驚くほどに隙が無い。自分の太刀は総て防がれ、それどころか、向こうの太刀が徐々に自分に肉薄してくるのが分かる。
(くそっ!)
 ハヤブサはギリ、と、歯を食いしばっていた。仁王に対して有効な突破口を見いだせない自分が、情けなくて悔しくてたまらない。
(何か手は無いのか――――!? 何か手は―――――!)
 そう思案をしながら戦い続けている時、その光景は、偶然ハヤブサの視界に飛び込んで来ていた。

 それは、「自分の戦いの邪魔をしない」と、言っていたあの男。
 その男が、いつの間にかまばゆい輝きを放つ刀を手に、こちらに背を向けて立っている。
 そして、その男の真正面には、その男の何倍もの大きさを誇る、巨大な怪獣の様な化け物の影―――――
「―――――!?」
 異様な光景に、ぎょっと目をむくハヤブサ。だがその光景は、それだけでは終わらなかった。
 怪獣が唸り声を上げながら、巨大な爪を振り下ろしてきた刹那―――――朽葉色の忍び装束の主が、宙に飛んだ。

「叭――――――――ッ!!」

 ストン、と男が地面に着地すると同時に、怪獣の影が頭から腰にかけて唐竹割にされた。
 文字通り、美しいまでの『一刀両断』―――――ハヤブサは知らず、己が戦いを忘れて見入ってしまう。
 そしてそれが、よくなかったのだろう。

「ハヤブサ!!」

 男の叫び声を聞いた瞬間に、自分は何者かに強く殴られてしまっていた。
 そのまま彼は、昏倒してしまう事になるのだった。


「………ハヤブサ……! ハヤブサ……!!」

 次に目を開けた時、男が心配そうにこちらを覗き込んでいる姿が視界に飛び込んできた。
「―――――!」
 慌てて飛び起きた瞬間、自分の額から落ちてくる濡れた冷たい布。
 腕や足やらに巻かれている数々の包帯。
 どうやら自分は、男に『介抱』されてしまったのだと感じて、ハヤブサは動揺を禁じ得なかった。
「離せっ!!」
 男の手を振り払い、距離を取る。
 男はしばし目をぱちくりとしばたたかせていたが、やがてその面にフッと笑みを浮かべた。
「………それだけ動けるのなら、大丈夫そうだな。良かった……」
 そう言って、男はやれやれと立ち上がる。
「……………!」
 その男の様を見て、ハヤブサは何故か苦い気持ちに襲われた。
(……どう言うつもりだ!? 俺の里を襲ってきた男が――――)
 本来ならば、素直に礼を言わなければならない事、ハヤブサも十分承知している。だが、目の前に居る男は、あくまで『仇』なのだ。それに「礼」を言うと言う行為には、どうしても抵抗を感じてしまう。
 だが―――――

 自分が気を失う直前に見た、あの男の動き。戦い――――

 あれだけの大きさの化け物を一刀両断にしていた。
 凄まじいまでの動き、技の切れ――――
 どれだけの剣の腕をもてば、あれだけの技が出来るのだろう?

 純粋にそこに惹かれ、興味を持ち始めていた時―――――男から、再び声をかけられた。

「ほら、水と食料だ。食え」

「―――――!?」
 ギョッと目を見開くハヤブサの傍に、男はそれをコトン、と置くと、すぐに立ち上がった。
「勘違いするなよ。これを用意したのは私ではない。そこに居る観音様だ」
「はあ!?」
 目を白黒させるハヤブサに対して、男はちらりとこちらを見ると、すぐにフイ、と視線を逸らした。
「信じる、信じないは勝手だがな……」
 そう言いながらシュバルツは、ハヤブサを介抱している時に自分が見た光景を思い出していた。観音像の影から伸びて来た白い手が、そっと握り飯を作り、置いて行ったのを。
 自分に、こういう「食料」は要らないから、きっとこれは、ハヤブサのためのもの――――シュバルツはそう思っている。
「……………」
 ハヤブサはしばらく逡巡するように皿に乗っている握り飯と、傍に置いてある竹筒を見つめていた。
「食事はきちんと取れ。そうしなければ、戦えるものも戦えん」
 男はそう言うと、自分にくるりと背を向けると、すたすたと歩いて行った。離れたところにどかっと腰を下ろして、そこに身体を落ちつける。
「……………!」
 眉唾な話をして食事を置いて行く男に、ハヤブサも何かを思わないでもない。だが、この男が自分に害意があるのならば、こんな風に介抱したり食事を差し出してきたりはしないだろう。守護者にやられて気を失っている間に、殺す機会など―――――彼にはいくらでもあった筈なのだから。
(なる様になれ)
 意を決して、握り飯の一つを口にほおばる。
(………! うまい………)
 絶妙な塩加減で握られたそれは、ハヤブサの空腹を満たして行った。

 一つ目の握り飯を完食し、二つ目に手を伸ばした時、ハヤブサはふと思った。この食料を、自分だけが食べていいのだろうかと。この閉じられた空間で、食料は、分け合わねばならないのではないのだろうかと。
 だからハヤブサは、男に声をかけていた。
「………おい」
「何だ?」
 顔を上げてこちらを見てくる男をまともに見ることができず、つい、ハヤブサは視線を逸らしてしまう。だが、意志は伝えねばならないと決意をし、ハヤブサは再び口を開く。
「お前は……食べないのか……?」
「ああ―――――」
 ハヤブサのその言葉を聞いた男は、くすりと笑う。

「私は、不死の特殊体質だと言っただろう。生きるのに『食料』は要らないんだよ」

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