農家の嫁の日記

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災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 龍と剣と、その拳と 46

<<   作成日時 : 2015/11/01 23:39   >>

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「すみません……!」
 夫婦の顔を見るなり、涙ながらにハヤブサは、頭を下げた。
 彼らの『宝』であるタケルを奪ってしまった。
 これは、一体どう償えば、良いと言うのだろう。

 だが、夫婦は、ハヤブサを責めなかった。
「リュウ様……! 貴方だけでも、無事で良かった……!」
 そう言って乳母は、涙を流しながら抱きしめて来た。
「タケルは、最期まで役目を全うしたのです。タケルは、我等の誇りです」
 タケルの父も、その瞳から涙を零しながら、しかし、気丈にそう言った。
「でも―――――! タケルは……!」
 反論しようとしたハヤブサの言葉は、父であるジョウに押しとどめられた。

「リュウよ……。お前は、その身に刻まねばならぬ。お前を守るために、村の皆は命をかける。お前は、そう言う『立場』にあるのだと」

「何故ですか!? 私の命もタケルの命も、同じ『命』の筈です! 私の命を守るために、他者の命を犠牲にするなど、あってはならぬ事ではないのですか!?」
「そう。『命』に優劣も貴賎も無い。みな平等なものだ」
 子どもながら「命」の本質を理解している聡い我が子に、ジョウは心の中で感心する。しかし、その面には眉をひそめ、渋い表情を作り続けた。

「だがリュウよ……。お主は将来この里を背負って立つ身。その事を、強く自覚せねばならぬ」

(本当は、それだけではない)
 我が子にそう諭し続けながらも、ジョウは知っていた。この目の前にいる少年こそが、里で長い時に渡ってその出現を待ち続けていた、正式な『龍剣』の使い手―――――『龍の忍者』となり得る素質の持ち主であることを。それを守るために、里の者たちは皆命をかける。『頭領の息子である』と言う以上に、その理由は里の中では重きを置いていた。それほどまでに―――――この隼の里にとって『龍の忍者』の出現は、悲願であったのだから。

「その身に刻め。タケルの死を。そして考えろ。守れなかった『命』と、その原因を」

「…………!」

「彼の死を―――――決して無駄にしてはならぬ」

 そして、タケル荼毘に付された後、里の中でも『聖域』とされる、龍剣を封印する祠の傍に埋葬された。そこに、小さな墓が建てられた。
 その日を境に、ハヤブサの剣の修業はますます熱を帯び、苛烈な物へとなって行った。

 忘れるな。
 タケルを守れなかったのは、自分が弱かったからだ。甘い戦いをしたからだ。

 強く
 強くならねばならぬ。
 自分を守るために、誰かが犠牲になる。
 そんな悲劇を、二度と繰り返さないためにも

 皆が自分を命がけで守ると言うのなら、自分も、皆のために命をかけよう。
 守られるよりも、自分が、皆を守れるような人間になろう。

 躊躇うな。
 守るために、他者の命を奪う事を。
 必要とあらば、自分は『鬼』にも『修羅』にもなろう。
 敵に赦しは請わない。
 殺したことで被る『恨み』も『業』も、総て背負って生きて行く。

 そして―――――

 忘れるな。
 タケルがくれた優しさを。
 乳母夫婦がくれた愛情を。

 忍びの道は危道。
 騙しだまされるのは当たり前の世界。
 闇撃ちも裏切りも日常になる世界を、これから自分は生きて行く。

 だけど忘れるな。
 自分に敵意や悪意を向けてくる人間ばかりではなく、優しさをくれる人間も、必ずいると言う事を。
 親が子を想い、子が親を想う。
 手を差し伸べあい、助け合う人々がいる。
 そんな優しい世界が必ずあるのだと、信じ続けて生きて行こう。

 現にタケルが、そうだったから。
 命尽きるその寸前まで、彼は自分に手を差し伸べ続けてくれたのだから―――――

(タケル………)
 守れなかった苦さを噛みしめ、
 そして、彼への感謝の気持ちを心に満たす。
 死して、もう二度と、会う事の出来ないタケル。
 だが死んでいるからこそ―――――彼を信じることに、迷いは無かった。それは、酷く皮肉な話ではあるのだけれど。

(あの男の真の目的は分からん……。だが、あの男の『剣』は信じられる……。そうだな?)

 墓に向かって手を合わせながら、ハヤブサは己の考えを整理する。
 敵だと息を巻き、悪意と敵意で以ってあの男を斬り捨てるのは簡単だ。だが、それをするにはあの男の剣は美しすぎた。真っ直ぐで、何故か優しさすら感じた。
 そして時折、妙な懐かしさすら感じる。これは一体何なのだろう。

 あの男の『剣』と、俺に龍剣を手に入れさせると言う『目的』だけは、どうやら本物の様だ。信ずるに足りる物だとハヤブサは思った。
 もしかしたら、自分が龍剣を手に入れた途端、あの男は自分を裏切るかもしれない。
 だが、それはそれでいいか、とも思った。
 裏切られたら―――――その時は、その時だ。
(それに、もしかしたら…………)
 心の片隅に、ちらりと疑念が湧いた。

 ――――自分ハ、アノ男ノ事ヲ、無理ヤリ『仇』ト思イ込マサレテハイナイカ……?

 あの男の剣や気配から、邪悪な者の匂いを感じ取れない。だからこそ、そう思う事が、ハヤブサの中ではむしろ自然だった。
 勿論、確証を持てる物ではない。だから、口に出すことは憚られたのだが。
「……………」
 フッと小さく息を吐いて、ハヤブサが立ち上がり振り向くと、じっとこちらを見ている男と、視線が合った。

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