農家の嫁の日記

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災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 龍と剣と、その拳と 47

<<   作成日時 : 2015/11/03 00:16   >>

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 二人の間に、しばしの沈黙が走る。
 先に口を開いたのは、男の方だった。

「……それは……『墓』か?」

「ああ、そうだ」
 男の問いに、ハヤブサは多少ぶっきらぼうに答えた。
「俺の幼馴染の墓だ。俺がまだ小さい頃、守ってくれて……そして、死んでしまったんだ……」

「………そうか……」

 そう言ったきり、男は再び沈黙してしまう。
(里の『仇』に―――――話すべきでもなかったか……?)
 瞳を曇らせながら佇む男を見つめながら、ハヤブサはふとそう思った。
 タケルの墓は、今の自分にとっては『原点』とも言える場所。出来れば誰にも踏み荒らされたくない、とても大事な場所だった。だから、「貴様には関係ない!!」と、突っぱねても良かった。
 しかし今のハヤブサは、何故か男をそんな風に切り捨てる気にはなれなかった。
 それよりも、見てみたいと思った。
 今の話を聞いて、この真っ直ぐで綺麗な剣を振るう男が、どのような行動をするのかを。
 もしも、こいつが真の悪人ではないのなら―――――

「………その、ハヤブサ……」

 長い沈黙を破って、男は少し躊躇いながらも口を開いて来た。
「何だ?」

「私も……その墓に、手を合わさせてもらっても………良いか………?」

「―――――!」
 予想通りと言うか、予想以上の言葉を返してくる男に、ハヤブサは半ば呆れかえってしまう。
(もう分かった……! お前、絶対に里を襲った張本人じゃないだろう!? 何だ!? その人のよさげな言動行動は―――――!)
 軽く眩暈を覚えながらも、ハヤブサは「ああ、良いぞ」と返事をする。すると男は「ありがとう」と、その面に優しい笑みを浮かべて、踵を返す。
「お、おい! 何処へ――――!」
 ハヤブサが問いかけた所に、男はすぐにそこに帰ってきた。その手の中には、小さな赤い花が握られていた。
(ああ……滝の傍に咲いていた花か……)
 男は墓の前で静かに膝を折ると、その前にそっと小さな花を置く。どうやら、お供えをしてくれているようだった。
(手ぶらでも構わないのに………律儀な奴だな……)
 ハヤブサは呆れたようにため息を突きながら、男を見つめる。拝み方も丁寧で、そこには死者に対する労りと敬愛が見て取れた。

(やはり、違う)
 ハヤブサは確信する。
 この男は絶対に、里を襲ってはいない。
 赤子を残忍に引き裂いていた奴が、例え「フリ」だけだとしても、ここまで丁寧に墓を拝むなど、出来る芸当ではないからだ。命を軽んじている奴ならば、どうしてもその動作の端々に、その匂いが滲み出てくる物なのだから。

(ならば、俺の目の前にいるこの男は一体誰だ……?)

 疑問に思って目の前の男を見つめる。
 何故この男は、自分にとって『仇』の格好に見えてしまっているのだろう。

 するとその時。

(リュウ様……! どうぞ……!)

 明るい声と共に、墓に供えられていた花と同じ物を差し出す小さな手が、脳裏にフラッシュバックする。
「―――――!」
 何だ?
 自分はあの花を、ここ以外のどこかで見た様な気がする。
 しかし、それは何処だ……?
 どこで見たんだ……?

(リュウ………)

 不意に耳元に、懐かしさを含んだ声が響く。
 よく見ろよ、と、小さな手が墓の前の男を指し示す。その手につられる様にハヤブサは墓の前の男の姿を見て―――――

「―――――!?」

 そこに居たのは、革のロングコートを着た青年だった。その青年の後姿を見て、ハヤブサの心が酷くかきむしられるような痛みを覚える。

 何だろう、この衝動は。
 何だろう、この焦燥感は。

 ひどく懐かしいヒト。
 大切な、ヒト。

 思い出さなければならない様な気がした。

 ああ、誰だ?
 誰だ、誰だ?

「―――――」

 その名が、喉元まで出かかっている様な気がする。
 なのに―――――自分はどうしても、それを思い出せなかった。

「どうした? ハヤブサ」

「…………!」
 はっとハヤブサが我に帰ると、『仇』の姿形をした初老の男性が、じっとこちらを見つめている。ハヤブサは懸命に、目の前の男の中に、先程の青年の姿を求める。しかし、やはりと言うべきか―――――あの青年の面差は、もうどこにもなかった。
「いや、何でも無い……」
 ハヤブサは懸命に、平静を装って答える。しかし心の中は、荒れ狂う海の如く激しい波が立っていた。
(幻………?)
 今のは一体、『誰』だったのだろう。
 

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