農家の嫁の日記

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zoom RSS 龍と剣と、その拳と 49

<<   作成日時 : 2015/11/07 01:15   >>

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拠り代になる龍の忍者の身体も龍剣も――――我が身体の元になるのに相応しい存在だった。

 だから、恨め。
 憎め、リュウ・ハヤブサ。
 お前の目の前にいる男は、紛う事なきお前の『仇』
 お前の手で、存分に屠るが良い。

 人間界で、このラクシャサと戦おうとする者たちが、何かちょろちょろ動いてはいるが、龍の忍者の封印の力には到底及ばぬ。故に確信する。我が完全復活まで、あと少しなのだと。

 ククククク…………

 仄暗い笑い声が、漆黒の闇の中に響き渡っていた。


「少し休憩しよう」

 観音像の裏からいつもの如く握り飯と竹筒が出て来たのを見て、シュバルツはハヤブサに声をかけた。
「ああ」
 青年になりつつあるハヤブサは、素直に応じてくる。刀を収めて、互いに礼をする。そして、一息ついているハヤブサに、シュバルツはそっと食事を差し出した。それから彼に背を向け、すたすたと歩いて行き、彼から離れたところに腰を落ち着ける。ここまではいつも通り―――――だが、その後が違った。
 腰を落ち着けてふっと息を吐くシュバルツのすぐ後ろに、ストン、と誰かが座る気配がする。
「?」
 振り向いて――――シュバルツは、ぎょっと目を剥いた。何故ならそこには、おにぎりを手に持ったリュウ・ハヤブサの姿が在ったからだ。

「な、何だよ?」

 ハヤブサの方も男が驚いている気配を感じ取ったのか、おにぎりをほおばりながら、少し決まり悪そうにこちらを見ている。
「あ……! いや、その………」
 いかん、と思いながらも、シュバルツは狼狽を隠す事が出来ない。慌てて視線を逸らしながら、何とか気持ちを落ち着けようと努力する。
(な……! 何で、ハヤブサは私の傍に寄って来たんだ……? 『仇』の傍で飯を食べても、落ちつかないし、おいしくないだろうに……!)
 食事ぐらいゆっくり食べたいだろう、と、シュバルツは四方を見渡して、ハヤブサから離れるために腰を上げようとする。すると、ハヤブサに服の裾を掴まれた。

「別に離れなくてもいいだろう? 何か問題でもあるのか?」

「う………!」
 ハヤブサに真顔で言われて、有効な反論が思い浮かばなかったシュバルツは、あきらめたようにストン、と、その場に腰を下ろす。それを見届けたハヤブサは、またおにぎりを頬張り始める。暫し、二人の間に沈黙が舞い降りた。

(……そう言えば……手合わせ以外で、こんなにハヤブサの近くに身を置いたのは、久しぶりだな……)

 すぐ近くにハヤブサがいる―――――少し前までは、自分の中でそれは当たり前の風景だった。「シュバルツ、シュバルツ」と、まとわりつかれて、少し鬱陶しいぐらいだった。それなのに、今こうして傍に腰を落ち着けていると言うだけの事を、『懐かしい』と、感じてしまう自分がいるだなんて。

 覚悟は、決めていたつもりだった。

 ハヤブサに『仇』とみられている以上、彼から自分に好意的な眼差しを送られてくることはまずあり得ない。向けられるのは『敵意』と『拒絶』、下手をしたら『憎悪』にまで、発展してしまっているかもしれない。
 自分は、それらの眼差しを受け止めるしか術がなかった。
 仕方がなかった。
 自分は、ハヤブサの『誤解』を解くための有効な手立てを、持ち合わせてはいなかったのだから。

 恨まれているのなら、恨まれたままで良い。
 自分は、彼のために出来る事をしよう。
 そう強く決意をして、彼の前に剣を持って立つ。

 それでも
 それでもやはり、辛かった。
『好きな人』に敵意を向けられ続ける状態と言うのは―――――

 消耗するし、疲れる。
 傷ついている『ココロ』を、否が応でも自覚する。
 出来ればもう一度、穏やかに笑いあいたい。
 そんな時間を望むのも―――――もう無理なのだろうか。
 自分には、『過ぎた幸せ』なのだろうか。

「…………」
 シュバルツはちらり、と、ハヤブサの様子を伺い見る。
 握り飯を食べ終わったハヤブサは、静かにそこに座り続けていた。
(どうして、彼はわざわざ私の所に寄って来たのだろう)
 出来ればその理由を、聞いてみたいと思った。もしかして、『誤解』が解けたのだろうか?
(いや……そんな筈は無いよな……。甘い期待は、しない方がいい……)
 シュバルツはふっと苦笑して、座り直す。しかしやはりと言うべきか、何となく落ち着かない。
(……悩んでいても仕方がない。とにかく、話しかけてみよう)
 シュバルツは暫し逡巡しながらも、何とかそう決心を固めた。
 話しかければ、返って来る言動行動で、相手の心を推し量れるはず。拒絶されれば、黙ればいいだけの話じゃないか。先程の修行の、太刀の運び方の注意でも良い。対仁王戦の、戦い方の対策でも良い。とにかく、話題には事欠かないのだから。
「ハヤブサ……」
「……………」
 シュバルツはそろりと声をかけてみる。しかし、ハヤブサからの返事は無い。
(やはり、話したい訳ではないのかな?)
 そう思ってシュバルツがハヤブサの方に振り返った時、彼の身体が、ぐらり、と傾ぐ。
「ハヤブサ!?」
 驚くシュバルツが声を上げる目の前で、ハヤブサはバタン、と、地面に倒れ込んでしまった。
「ハヤブサ!? おい……!」
 しっかりしろ――――! と、叫びかけたシュバルツの目が、点になってしまう。何故なら地面に倒れ込んだハヤブサから、すやすやと穏やかな寝息が聞こえて来たのだから。
 

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