農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

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zoom RSS 龍と剣と、その拳と 50

<<   作成日時 : 2015/11/08 10:34   >>

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「え……!? ちょっ……! 何でこんな無防備に――――!」
 この世界に入ってから、ハヤブサがこんな風に眠りこけるのは、実は初めての経験ではなかった。身体が急激に成長する際、莫大なエネルギーを消耗するのだろう。まるで繭を作って脱皮をするが如く、彼は眠ったり起きたりを繰り返していた。
(今が見た目が16、7歳ぐらいだから……次に起きた時は、20歳ぐらいにはなっているかな)
 眠るハヤブサの横顔を見つめながら、シュバルツはもの思う。ハヤブサが龍剣の真の使い手になったのは、20歳ぐらいの時と聞く。だからこの眠りから覚めた時、彼は『龍の忍者』としての、総ての資質を取り戻している可能性が高い。
 それにしても、今のハヤブサは本当に妙だ。
 少し前ならば、同じ眠りに落ちるにしても、かなり警戒をしてこちらから隠れるようにして眠っていた。それなのに今は、まるで無防備にこちらに寝顔を曝している。
 どう言う事なのだろうか?
 少しは、自分に対して『信頼』を、置いてくれるようになっているのだろうか。
(いや、そんな筈は無い……。今回だって、きっと、急激すぎる眠気に対処し切れなかったから――――)
 シュバルツはそう自分を納得させようとするのだが、やはり、どこかふに落ちない。それならば何故、彼は食事をするときに、わざわざこちらに寄って来たのだろう。他にも腰を落ち着ける場所はいくらでもあるし、私は彼の傍から意図的に離れたのに。
(やはり、誤解が………)
 ここまで思って、シュバルツは再度頭をふる。
(いや、甘い期待はしない方がいい)
 龍剣を手に入れるための手伝いをする、と、自分は言った。もしかしたらその目的だけは信頼されての、この行動なのかもしれないのだ。龍剣を手に入れるまでは、私がハヤブサに危害を加えることは無いと、そう信じてくれているから――――
(ハヤブサ………)
 シュバルツは、愛おしさを込めて、ハヤブサを見つめる。
 『人を好きになる』と言う気持ちは、まことに厄介だ。どうして――――自分でもままらない感情に振り回されて、彼の言動行動に、一喜一憂してしまうのだろう。

 分かっている。
 見返りを求めるから、苦しい。
 見返りを求めるから、切ない。

 『アンドロイド』である自分は、ハヤブサにそんな事を願う資格も本来ならばないはずだ。なのにどうして――――
 彼の気持ちを浅ましくも乞ゆる気持ちを、止めることが出来ないのだろう。
(もしも、彼が『龍の忍者』として総てを取り戻したなら、私のことも思い出してくれるか……?)
 またも湧きでてくる甘い期待。しかしシュバルツは、それも頭を振って否定をした。
(無理だな。20歳のハヤブサと私は、未だ出会ってもいない。会ったことすらない物を、どうして『思い出す』事が出来るんだ)
 だから仕方がない。
 良いんだ。
 ハヤブサが無事に龍剣を取り戻しさえしてくれたなら、私はそれで――――
 それ以上、何を望むと言うのだろう。

 ―――ソレニ………コノママ私ノ事ヲ忘レ去ッテシマッテイタ方ガ………ソノ方ガ、彼ニトッテハ幸セナノカモシレナイ………。

 フッと浮かんで来てしまったネガティブな考えに、シュバルツは苦笑する。
 でも確かにそうなのだ。
『DG細胞』と『死体』から出来ている、自分を愛する異常性。
『DG細胞』に感染するリスク。
 それらから、彼を解放する事が出来るのなら―――――

 恨まれたまま死ぬことも、また『良し』と、言えるのではないだろうか。

(とにかく、今は彼の眠りを守ろう)
 シュバルツは刀を抱えたまま、改めて座り直す。
 未来が、どう転ぶかなんて誰にも分からない。
 だけど、どうなっても受け入れる覚悟だけは決めようと、シュバルツは思った。

 不意に、『何か』の気配を感じて、シュバルツは振り返る。

「…………!」
 振り返った先には、あの観音像が居た。
 祠から外れた所に鎮座して、何時もハヤブサに食料を差し入れてくれている観音像。しかし、何故かそこから妙な気配が漂って来ていたから、シュバルツは少し眉をひそめた。
「…………?」
 よく見ると、その観音像は涙を流していた。
 そして、聞き取れないほどの小さい声で、何かを訴えていた。

「―――――」

 シュバルツはその声を聞き取ろうと、懸命に耳を澄ます。100m先の針が落ちる音すらも捉えられる彼の優秀な聴力は、やがてそのかすかな音を拾い始めた。

 ――――リュウ…………リュウ………

(ハヤブサの名だ)
 どうやらその観音像は、ハヤブサに対して何かを訴えかけていると気づく。

 ――――ああ………急いで………

 ――――もう、時間が無い………!

(時間が無い!? どう言う事だ……!?)
 首をかしげるシュバルツの前に、パラパラと小さな礫の様な物が落ちてくる。
「?」
 不思議に思って上を見上げるシュバルツの視界に、無数の小さな亀裂の様な物が走っている空が飛び込んでくる。
「な…………!」
 絶句すると同時にシュバルツは瞬時に『理解』した。
 このハヤブサの『ココロ』の様な空間を守っていたのはこの観音像で―――――その結界の力が、もう限界を迎えつつあるのだと言う事を。不可思議にも思うが、よく考えれば当たり前の話だ。ここは、自分が取り込まれた『化け物』の様な物の精神世界。そんな中に、こんな穏やかで美しい世界がある事こそが、奇跡の様な物なのだから。

 グルルルルルルル………

 亀裂の隙間から不吉な唸り声が響いてくる。この世界に入り込もうとしていたモンスターたちが、虎視眈眈とこちらを狙っているのだろう。
(ハヤブサ……!)
 シュバルツは、自分のすぐ近くで無防備に眠りこけているハヤブサを見る。
(とにかく、何が何でも、このハヤブサだけは守り抜かなければ)
 シュバルツがそう強く決意をして、刀の柄に手をかけた、刹那。
 目の前の空間に亀裂が走り、パラ……と、小さな礫が落ちる。その隙間から外の世界を覗いた瞬間、そこに懐かしい顔を見て、シュバルツは思わず叫び声を上げていた。

「キョウジ!!」

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