農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 龍と剣と、その拳と 67

<<   作成日時 : 2015/12/21 14:05   >>

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 ハヤブサは唐突に理解した。
 これは、刀から問われているのだ。

 お前は、自分の声に負けずに、斬る者を選べるか? と――――

 斬ラセロ!
 喰ワセロ!

 刀は執拗に訴えてくる。

 目の前にいる男の魂は、刀にとってはそれほどまでに、得難い獲物のように見えているようであった。
(うるさい、黙れ……!)
 ハヤブサは、刀を握る手にありったけの『気』を込めた。

 冗談ではない。
 貴様の持ち主は、この俺だ。
 お前に何を喰らわせるかは――――

 俺が 決める。

「……………」
 男は無言で龍剣を見つめていたが、やがて、ふっと小さく息を吐いた。
「そうだな……。お前が龍剣を手に入れたら、私の目的を話す。そういう約束だったな……」
 男はそう言うと、龍剣からすっと体を引いた。そのまま石柱から離れ、少し広い空間に出ると、帯刀の状態でハヤブサに相対しながら静かに立つ。
 まるで果し合いでも始めそうな間合いと雰囲気――――ハヤブサがそれに訝しんでいると、男が静かに口を開いた。
「では……語るとしようか。私の『真の目的』を――――」
 その言葉が終ると同時に、男の身体から放たれる異様なまでの『殺気』
 それは、辺りの穏やかな空気を切り裂き、龍の祠の静謐な空間を、一変させていた。
「な…………!」
 ハヤブサは、思わず息を飲んでいた。
 今まで男と修行で相対したことは何度もあったが、これほど明確な殺気をぶつけられて来たのは初めてだ。知らず、龍剣を握る手に力が入る。龍剣の切っ先が、ピクリと動いた。
 男の方も、ハヤブサの龍剣の動きに合わせたかのように抜刀する。白刃がギラリと攻撃的な光を放ち、彼が本気でこちらを斬ろうとしているのが、否が応でも伝わってきた。
(ここにきてこの殺気……! まさかこいつ、最初からこれが目的だったのか? 俺が龍剣を手に入れたところで、龍剣ごと、俺を葬り去ろうと目論んでいたのか!?)
 自分が歩むのは修羅の道。土壇場での裏切りも、ある意味当たり前の世界だった。男がこんな風に豹変しても、それはそれで『あり』だった。故に、ハヤブサの背中に、ジワリ、と、いやな汗が伝い落ちる。腕の中の龍剣も男の殺気に中(あ)てられたのか、小さく振動しながら、ますます大きな声で訴えてきた。

 アイツハ敵ダ!
 斬ラセロ!
 喰ワセロ!

「…………ッ!」
 ハヤブサは、ぎり、と、歯を食いしばっていた。

(ハヤブサ………!)

 シュバルツの心は、恐ろしいほどの静寂の中にいた。
 ここにきて、むしろ心は凪いでいた。

 斬られたかった。
 斬られてしまいたかった。
 龍の忍者となった、ハヤブサに―――――
 だからシュバルツは、ありったけの殺気を放った。
 何故だろう。
 きちんと相対しなければ―――――

『斬ってもらえない』

 そんな予感がしていた。

(すまないな……キョウジ……)
 シュバルツは、心の中でキョウジに謝る。
 もしも、私がここで死んでも、どうかハヤブサを恨まないでくれ。
 私は望んでこれをした。望んでハヤブサに、斬られることを選んだのだ。

 ありがとう。
 私はもう十分だ。
 私は皆から、十分すぎるほどの、幸せをもらった。

 だからいいんだ。
 今ここで、たとえ死んでしまったとしても―――――

 悔いなく死ねる。

「………………!」
 男の尋常ならざる殺気に、空気が痺れる。龍剣を構える手が、汗に濡れた。
 男は、完全にこちらを殺す気だ。一刀の元に斬り捨てるつもりで、こちらに向かってきている。
 斬らねば殺(や)られる。
 斬らねば――――

(本当に、そうか?)

 ここで、ハヤブサの頭の中に疑問が沸いた。
 この男を斬ってはならない。斬りたくはない―――――それは、ハヤブサの正直な気持ちだった。
 この男は、自分の里を襲った張本人では断じて無い。それどころか、自分の修業を手助けしてくれていた。陰に日向に、自分を支え、導いてくれていた。いわば、『恩人』と言ってもいい。ここまで自分を支えてくれた男が、この局面でいきなり自分を斬ろうとするだろうか?
 それはどう考えても不自然すぎる。不自然すぎるのだ。

 ――――斬ラネバ殺ラレルゾ!!

 誰かの声が、強く訴えてくる。
 それは、龍剣の声かもしれないし、別の誰かの物かもしれなかった。
 だがハヤブサは、そんな事はどうでもよかった。
 誰に何を言われようとも、目の前の男を斬りたくはなかった。自分の方には、男を斬る明確な理由が、何もなかったのだから。

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