農家の嫁の日記

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zoom RSS 龍と剣と、その拳と 69

<<   作成日時 : 2015/12/27 01:07   >>

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 男の足が、ジャリ、と音を立てて半歩、動く。
 ハヤブサはそれに合わせるように、ふっと小さく息を吐きながら、龍剣を中段に構えなおした。

 アイツハ敵ダ!! 斬ラレルゾ!!
 殺セ!!
 殺セ、殺セ!!

 頭の中に声が響く。
 生存を願う本能が、警鐘を鳴らし続ける。
 だがハヤブサは、それらの声たちを力づくでねじ伏せた。

 自身に問いかけ続ける。
 あの男は、名を上げるために、俺を殺すような奴なのか?
 ――――否。
 答えは断じて否である。

 今までの、男の所作を思い出す。施された優しさを思い出す。
 ………充分に、信じられると思った。

 これだけの殺気を浴びてなおも、目の前の男を信じようとしている自分は、実際狂気じみていると思った。『龍の忍者』として生きていくには、信じられぬほど、愚かな決断なのかもしれない。
 だが構わなかった。
 もし、万が一あの男が本当に俺を殺しに来ていたのだとしても。
 俺の命を欲するのなら、くれてやる。
 悔いはなかった。
 それだけの物を、自分は男から受け取っているのだから。

 だから、『俺は』斬らない。
 たとえ、どうなっても。
 どんなことがあっても―――――

 男がさらに、じり、と、間合いを詰める。
 膨れ上がった殺気は辺りを焦がし、もう弾け飛ぶ限界を訴えていた。

(来る)
 龍の忍者は静かに――――その時を待った。


 パラリ、と音を立てて、ひび割れた結界の礫が地面に落ちる。
 それと同時に、二人の男が同時に地面を蹴った。
 ダンッ!! という激しい踏み込み音とともに、男の裂帛の気合と白刃が迫る。
 その時、ハヤブサは―――――

 ガツン!!

 ぶつかり合った二つの影。
(今だ!)
 わが事成れり――――とほくそ笑んだラクシャサは、その瞬間、ハヤブサにかけていた『まやかし』を解いた。

 さあ、お前が殺した相手を見ろ。
 そして、存分に絶望の悲鳴を上げるがいい。

 一陣の風が、二人の間を吹き抜ける。それと同時に、ハヤブサに施されていた『シュバルツ』に関する記憶の封印も同時に解けた。ハヤブサの脳裏に、一気に流れ込んでくる、愛おしい人の記憶。
「……………!」
 ハヤブサは、自分と戦っていた男が最後に取った姿勢のまま、佇んでいる目の前の愛おしい人の姿を見る。
「シュバルツ……」
 シュバルツは、優しく微笑んでいた。
 そして、下段から逆袈裟切りにハヤブサを斬りに来ていたはずの彼の手には―――――

 刀が、握られていなかった。

「ハヤブサ……」
 ハヤブサに名を呼ばれたことにより、シュバルツは、彼が自分のことを思い出してしまったことを知る。
 嬉しくもあり―――――同時に、胸が締め付けられた。

 どうして――――彼は、思い出してしまったのだろう。
 そして、どうして―――――

 彼は、私を斬ってはくれなかったのだろうか。

 ハヤブサは、シュバルツが振った剣を全く避ける気もなく、その懐に飛び込んでいた。彼の手に煌く白刃。それは、自分を逆袈裟切りに斬り上げる物であったのに――――
 ギリギリのところで、刀を放棄したシュバルツの手。空を切った風は、ハヤブサの身体を優しく撫でた。
 そして、ハヤブサの龍剣は―――――
 彼の首を斬るギリギリのところで寸止めをされていた。

「お………!」

 ハヤブサの中で、複雑な感情が渦を巻く。

 どうして―――――
 どうして気づかなかったんだ? 俺は。

 この戦い方も
 あの優しさも―――――

 全て、お前の物だったのに。

 しかも、どうして―――――

 目の前の愛おしい人は、儚さを漂わせる笑みを浮かべながら、少し寂しそうに首元に当てられた龍剣を見ていた。

 どうして………俺に殺されたがっているんだ!? こいつは!?

 訳の分からない、感情が溢れた。
 あり得ないほど、むかついた。
 本当に本当に、『斬らない』と決意していて良かった。
 一歩間違えれば、本当に取り返しのつかないことを、してしまうところだったのだから。

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