農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 龍と剣と、その拳と 60

<<   作成日時 : 2015/12/02 23:37   >>

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「すまん!」

 図らずも仁王に庇われたと悟ったシュバルツは、慌てて戦いに戻る。振り返り仁王に礼を言うと、仁王は『気にするな』と言わんばかりに片手を上げた。自分を庇ってもどこもけがをしていない様子の仁王の姿に、シュバルツもほっと胸をなでおろす。

(よかった……。それにしてもどうしてしまったんだ? 私は……! 戦いの最中に『気』を抜くなど………!)

 あからさまに動きを止めて、ぼうっとしてしまっていた自分。いったいどれくらいの間そうしてしまっていたのだろう? こんなことは、絶対にやってはいけないことだ。幸い、あの『仁王』に助けられたからよかったようなものの――――

 そう、助けてくれた。
 自分は、あの仁王に助けられたのだ。
 何故だろう。
 あの仁王に自分を助ける理由など、あろうはずもないのに。
(後で、仁王にもハヤブサにも、礼を言わねば)
 シュバルツがそう思って、ハヤブサのほうに振り向いた、その瞬間。

 悲劇は、突然起きた。

 いきなり、肩から背中にかけて、肉を切り裂かれるような痛みに襲われる。
「うあっ!?」
 敵は近くにはいないはずだった。周囲の安全にも気を配って、それからハヤブサのほうに視線を動かしたはずであるのに。
 なのに何故―――――!
 驚いたシュバルツが振り返ると、苦悶の表情を浮かべながら、シュバルツに向けて刀を構える仁王の姿が、その視界に飛び込んできていた。
「な…………!」
 仁王は苦しそうに、その手に持つ剣の切っ先を震わせている。そしてその腹には、どす黒く禍々しい光を放つ、触手の一部のような物がめり込んでいた。
(これは――――!)
 シュバルツはすぐに悟った。
 仁王のこの腹の傷は、先ほど自分を庇ったときに、自分の身代わりに受けた傷なのだと。

 そして、今自分に向けて刀を構えている、仁王のその動きは

 仁王自身の意思によるものではないのだと。


「―――――!?」

 そのころ、シュバルツの眠るベッド脇で佇んでいたキョウジも、異変に気付いていた。
 眠るシュバルツの表情が、一瞬苦しそうにしかめられたかと思うと。
 ジワリ、と、寝台の上から液体のような物が、床に向かって伝い落ちてくる。

「な…………!」

 キョウジは慌てて寝台の布団をめくり、シュバルツの体を見る。寝台は液体でびしょぬれになっていた。ガバッとシュバルツの体の向きを強引に変えると、シュバルツの方から背中にかけて、袈裟懸けのように切り裂かれた傷が。

「シュバルツッ!!」

 キョウジはたまらず悲鳴のような声を上げていた。

「どうした!?」

 キョウジの叫びに、東方不敗が敏感に反応する。東方不敗が振り向くと、途方に暮れたような表情を浮かべるキョウジと、視線が合った。
「シュバルツが………! シュバルツが、傷を………!」
「傷だと!?」
 返事をしながら東方不敗は首を捻る。この戦いの最中、シュバルツが傷を負うようなことは、一切無かったはずだ。それが、何故このようなことに――――?

「きっと、あちらの世界で、シュバルツに何かあったんだ………!」

 キョウジの言葉に、東方不敗もなるほど、と、納得する。
「ガタガタ騒ぐでない、キョウジ。戦っておれば、傷の一つや二つ、作ることもあるだろう」
 キョウジに、というよりは、自分に言い聞かせるつもりで、東方不敗は口を開いた。戦いの最中に心乱されることは禁物であった。動揺より生じるわずかな隙が、一歩の遅れとなり、致命傷にもつながりかねないからだ。
「それにシュバルツは『不死』のはず。少々傷を負ったところで、そのように騒ぎ立てる必要もなかろう?」
 シュバルツの身体の成り立ちを熟知している東方不敗は、そう言ってキョウジを落ち着かせようとする。しかしキョウジは、その言葉に頭を振った。
「治っているのなら、私も悲鳴を上げたりはしません……! でも、この傷は――――」

「………! 治っておらんのか!?」

 東方不敗の言葉に、キョウジは黙って頷いていた。


(治りそうにないな………)

 はっ、はっ、と、小刻みに息をしながら、シュバルツは背中の傷の状態を分析する。
 戦いの最中に傷を受けるのは日常茶飯事なので、シュバルツも、自分の傷の状態を素早く把握することができた。この傷は致命傷ではない。しかし、いつもなら自身の傷を勝手に治し始める『DG細胞』の自己再生能力が、なぜか働いていないように感じられた。どうやら、何か特殊な力を伴った攻撃を、受けてしまったようであった。
 シュバルツの視界に、苦し気に頭を振る、仁王の姿が映りこむ。
(私のせいだな………)
 攻撃を仁王から受けたシュバルツ。しかし、彼はその仁王を、恨む気にはなれなかった。
 何故なら仁王は、自分を助けてくれた。その身を挺して、自分を守ってくれたのだ。
 そのせいで、仁王が今まさに苦しんでいるというのなら―――――
 それは紛れもなく、自分のせいだとシュバルツは思った。
(助けなければ)
 強く思う。
 この仁王の姿は、本来なら自分がこうなるはずだったものなのだから。
 しかし、助けるためにはどうすればいいというのだろう。
「く…………!」
 刀を上げ、思考をしようとする。だが、背中の痛みと熱が、その思索の邪魔をした。
(ハヤブサ……! キョウジ……! ドモン……!)
 悲しませたくない人たちの名を呼びながら、シュバルツはともすれば頽れそうになる膝を、懸命に立たせ続けていた。 

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