農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS 龍と剣と、その拳と 61

<<   作成日時 : 2015/12/06 22:47   >>

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「シュバルツ!! シュバルツ!!」

 キョウジは懸命に呼びかけ続ける。そうしている間にも、シュバルツの表情は苦しそうに歪み、傷口から溢れ出た液体は床に伝い落ち続けていた。
(そうだ……! とにかく……! とにかく、治さないと……!)
 シュバルツが自力で治せないというのなら、自分が治すしかない。キョウジはとっさに手元の工具箱をまさぐろうとして―――――
「あ…………!」
 肝心の工具箱を、敵の真っただ中に置いてきてしまったことに気付く。
 シュバルツのために、それを取りに行きたい。しかし――――

 バシッ!!

 自分が少しでも前に出ようものなら、モンスターたちからの攻撃が自分めがけて雨あられと降り注いでくる。とても工具箱を取りに行けるような状況ではない。工具箱を見つめながら歯噛みしていると、東方不敗が声をかけてきた。
「キョウジ!! お主ならシュバルツを治せるのではないのか!?」
 東方不敗の問いかけに、キョウジは頷く。
「たぶん、治せると思います。ですが――――」
 キョウジの目線の先にあるものを東方不敗も見つけて、「道具箱か……」と、納得した。

「待って居れ、キョウジ! それぐらい、いまわしが――――」

 東方不敗はそう言って、道具箱に向かって一歩、踏み出そうとする。すると、モンスターたちの攻撃が、自分ではなく背後のキョウジに向かって殺到するのを感じ取った東方不敗は、慌てて元の位置に戻った。
「ぬうううっ!!」
 白い布を振り回しながら、モンスターたちの触手やら剣戟やら弾丸のようなものを弾き飛ばす。自分はキョウジを守りたい。そしてその意思を叶えたいと願っている。しかし、自分がここを離れたばかりにキョウジがやられてしまっては、それこそ本末転倒ではないか。
「キョウジ殿!! シュバルツ殿がやられたのか!?」
「シュバルツのおっさんがどうかしたのか!?」
 そのころになって、キョウジを守るように東方不敗を援護していたアルゴやサイ・サイシーにも、背後に起きている異変が伝わる。もう少し平和な時であったならば、サイ・サイシーの「おっさん」発言に誰かから何がしかのリアクションがあったであろうが、酷く差し迫った状況であったため、それは、華麗にスルーされていた。
「あちらの世界で、シュバルツが怪我をしたみたいなんだ……! それが、シュバルツ本人では治せない類の物らしくて―――――!」
「――――!」
「キョウジ殿では治せないのか!?」
 アルゴの問いかけに、キョウジは頷いた。
「たぶん、治せると思う……。でも、そのためには道具が――――」
 キョウジが悔しそうに視線を走らせるその先に、道具箱を見つけた二人は、当然それを取りに行こうとする。
 しかし――――

「くそっ!!」

 モンスターたちの攻撃が苛烈すぎて、とても前に進めるような状況ではなかった。サイ・サイシーが悔しそうに舌打ちをしているその横を、アルゴがズイ、と、前に進み出ようとする。

「アルゴ!! 『ガイア・クラッシャー』を撃つこと、まかりならんぞ!!」

 アルゴの意図をいち早く察した東方不敗が叫んでいた。
「…………!」
 少し不満げに東方不敗に視線を走らせるアルゴに、キョウジも頼み込む。
「私からも頼む……! これ以上ここのシステムにダメージを与えることはできないんだ。町の外に張り巡らされている結界、ハヤブサの延命装置、その他諸々の備えに対する電源が今絶たれてしまったらどうなるか――――分かるだろう!?」
「……………」
 キョウジの言葉に、アルゴも納得せざるを得ない。しかし、『ガイア・クラッシャー』を使えないとなると、あの道具箱まで、どのように足を延ばしていけばいいというのだろう。
「シュバルツ!! シュバルツ!!」
 3人の男たちがこの状況に歯噛みをしているその背後で、キョウジは懸命にシュバルツに呼びかけ続けていた。
 このまま彼を失いたくない――――その願いを込めて、必死に叫んでいた。


 兄の叫ぶ声は、時空を超えて、闇の世界を疾駆する弟の耳に届いていた。
「兄さん!?」
 ぎぎっと足を止めて、獣のように鋭い目つきであたりを睥睨するドモン。
「どうした!?」
「シュバルツさんが見つかったのですか!?」
 聞いてくるチボデーとジョルジュにドモンは振り返りもせずに答える。
「違う!! だが、今……確かに兄さんの声が聞こえた!」
 がるるるる、と、唸り声すらあげそうなドモンの様子に、チボデーは少し呆れてしまう。だがドモンは、ひたすら兄の気配を探すようにあたりを見回していた。
「兄さん……! どこだ……?」
 その声に応えるかのように、微かだがキョウジの声が聞こえてくる。

「………ルツ! ……シュバルツ!」

「兄さん!? 兄さん!!」

「………! ドモンか!?」
 兄弟たちの意思が通じ合った瞬間、ドモンの前にキョウジのヴィジョンが現れた。
「兄さん!? どうした!?」
「ドモン……! シュバルツは見つかったのか!?」
「いいや、まだだ! 今探している――――」
 ここまで言ったとき、ドモンは、キョウジの顔色がひどく悪いことに気が付いた。
「兄さん!? どうしたんだ!? シュバルツに何かあったのか!?」
「……………!」
 いきなり核心を突いてくるドモンに、キョウジは瞬間言葉を失う。このまま真実を話していいものかどうか迷った。もしも、シュバルツの危機に、ドモンが動揺する、もしくは暴走するかしてしまったら――――
 だが次の瞬間、キョウジはブン、と、頭を一つ振った。
 ドモンはもう、昔の甘えてばかりの弟ではない。数々の経験を経て、一人前の戦士になっているのだ。そして何より、弟を信頼して、この闇の世界に彼を送り出したのは自分だ。迷っている場合でも、兄としての体裁を取り繕っている場合でもないと思った。
 だから、キョウジがいうべき言葉は一つだった。

「………ドモン!」

「兄さん!」

「助けてくれ!!」

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