農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS 龍と剣と、その拳と 83

<<   作成日時 : 2016/01/21 15:38   >>

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「私は、平安無事に日々を暮らしていきたいだけです。それが叶うのなら、なんだってします」

 いまいち話が見えずに首をひねる東方不敗に、キョウジはにこりと微笑みかけた。
「平安無事に暮らしたいのなら――――周りが平和でなければ、それは叶わないでしょう?」
「……………!」
「だから、それが脅かされて――――自分にそれが、対抗できる手段があるのなら、動く。ただそれだけのことです。そのために周りにどう思われようが評価されようが、それは私にはどうでもいいことだと――――そう思っています」
「それはそうかもしれぬが――――」
 そう言いながら東方不敗が、盤上に駒を置いた瞬間、キョウジから声をかけられた。
「ん? マスター? その手はそこでいいんですか?」
「何?」
「そのまま行くと、私はあと3手ほどで王手で、マスターは詰みになりますが――――」
「ぬおっ!?」
 東方不敗は慌てて盤上の戦況を見るが、自分が致命的なミスを犯したことは、もはや明白であった。
「うぬぬぬ………!」
 頭抱えて唸ってみても、戦況は覆るはずもなく、東方不敗はきょう3度目の投了をせざるを得なかった。
「じゃ、約束通り、仕事に戻ってもいいですか?」
 にこりと微笑みながら立ち上がるキョウジを、東方不敗は歯噛みしながら見送るしかない。
「キョウジよ!! 仕事とやらが終われば、またここに来い!! 今度こそ、返り討ちにしてくれる!!」
 鼻息荒くそう言う東方不敗に、キョウジは「はいはい」と苦笑しながら頷く。キョウジが書斎に引っ込んだ後も、リビングに残った東方不敗は一人、盤上に残った駒を見ながら、自分が投了をするまでの流れに思いを馳せていた。
「……………」
 勝ち負けはどうあれ、やはり、キョウジと将棋を打つのはいい。何一つとして無駄な手がなく、一つの駒に、二重三重の意味と罠を持たせている。これを読み解くのも楽しいし、これだけの手応えのある勝負をしてくれる相手もなかなかいない。やはり、東方不敗にとって、「キョウジ」という存在は、得難いものだった。
 それ故に、歯痒くもある。これだけの才覚を持ちながら――――どうして、こんな都会の片隅でくすぶり続けていられるのだろう。
 『世界平和』を望むのなら、その志を引っ提げて、天下に躍り出ればいいのだ。
 自分の才覚に見合うだけの地位と権力を得て、そこで、その夢を実現すればよいのだ。自分は、それを全力で支える。それなのに、何故それをしないのだろう。

(まあ良い……。今は、その問題に熱くなっても仕方がない。今は、目の前の敵を倒すことが先決――――)

 東方不敗は改めて構えなおした。
 自分は、キョウジがどこで何をしていようが、その望みを全力で支える。それが、自分の役目なのだ。
 キョウジには感謝している。
 彼はいつだって―――――自分に戦う『動機』をくれる。

 この東方不敗という男、実は、自分のためにふるう拳を持ち合わせてはいなかった。
 彼の拳は如何なる時でも―――――誰かのために振るわれている。

 キョウジが『自分のため』と言いながら、人々のために戦うと言うのなら。
 自分もまた、同じ大義を背負うまでだ。

「まだまだぁ!! かかってこんか!! モンスターめ!!」


 邪神の攻撃をはじき返しながら、東方不敗の闘気は天井知らずの勢いで膨れ上がっていった。

「こざかしい!!」

 しかし邪神も負けてはいない。触手のようなケーブルを使って、辺りに攻撃を加える。この特殊なモノで構成された身体は、多少の攻撃を受けようが、すぐに再生をしてくれる。しかも、破壊された場所は、それ以上の強度を伴って復活してきていた。

「はははは!! ますます気に入ったぞこの身体……!! まさに、吾のために作られたようなものだ!!」

 まだまだ強くなりそうな予感に、ラクシャサは歓喜に打ち震えていた。
 どれだけ攻撃を加えられようが、今の自分にとっては痛くもかゆくもない。この目障りな人間たちを始末するのも、時間の問題のように思われた。

 ドカッ!!

 ラクシャサの振るった一つの触手がアパートの壁を穿ち、そこにあった棚を破壊する。礫が四散し、ラクシャサの目の前で立ち続けるキョウジの頬を打った。
「―――――っ!」
 血が伝い落ちる。
 それをぬぐうためにキョウジが手を動かすと、そこに一羽の折り鶴が舞い落ちてきた。

「……………!」

(直してあげたかったのに……)
 直すどころか、ずたずたに傷つき、今は見る影すらなくなってしまった折り鶴たち。キョウジの胸が締め付けられた。
 そっと手に抱え込んで、必ず直してあげるからと、祈る。それと同時に、今は行方が分からなくなっている、3人に思いを馳せた。
(シュバルツ……ドモン……ハヤブサ……。今、どこにいるんだ………?)
 結局こういう時、自分は祈るしかできない。ひどく無力な存在だった。

 どうか、無事で
 無事で―――――

 その時、折り鶴は、キョウジの掌の中で、小さく震えていた。だが、キョウジがそれに気づくことはなかった。


「ハヤブサ!! ハヤブサ!!」

(ああ、兄さんの声だ)
 まどろむ意識の中、ドモンは兄の切迫した響きを持つ声を、聞くとはなしに聞いていた。
(俺は、どうしていたんだろう? 一体、何があったのだろう?)
 ゆるゆると意識を覚醒させながら、これまでの経緯をドモン・カッシュは懸命に思い出す。

 そうだ。
 確か、邪神の中に、シュバルツがいるのを見つけて――――
 それを取り戻すために、邪神の中に飛び込んで―――――

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