農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS 龍と剣と、その拳と 72

<<   作成日時 : 2016/01/05 01:32   >>

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「案ずるな……。あ奴はわしも認めた『キング・オブ・ハート』………必ずこの状況を打破する力を持っておるはずじゃ」
 キョウジを庇い、周りの様子を見ながら、東方不敗が口を開く。巨大な『樹』のように形を変えてしまったシュバルツが、まだそこにじっととどまって沈黙していた。すぐにこちらを襲ってくるような様子が見えなかったが故に、戦場に少しの静けさが舞い降りていた。ただ、その『樹』の足元で、発電装置がバチバチと青白い火花を飛ばしながら不吉な音を立てている。
(ダメージを喰らったな………)
 キョウジはほぞをかみながら、発電装置の様子をじっと見つめていた。あのまま放っておけば、あれが壊れてしまうのもおそらく時間の問題だろう。壊れてしまったときのことを考えると――――キョウジは、背中に寒気が走るのを禁じ得なかった。結界が壊れて、町中にモンスターが溢れて―――――
 できれば、直しに行きたい。
 だが今、それを選択するのは危険すぎた。あの状態になっているシュバルツと発電機の距離が近すぎるが故に、下手をしたら、ここにいる全員が、あれに巻き込まれてしまいかねない。そうなってしまったら、もっと最悪な事態になる。それは、断固として避けねばならぬと強く思った。
(有効な手立てがない……。どうすればいいのだろう……)
 キョウジは、拳をぎゅっと握りしめる。
 だが考えることを止めるわけにはいかなかった。立ち止まってあきらめてしまったら――――すべてがそこで、終わってしまうのだから。
(シュバルツ……! ハヤブサ……! ドモン……!)
 変わり果ててしまったシュバルツの姿を、キョウジは祈るような思いで見つめ続けていた。


(く………そ………っ!)

 悪意の塊のような嵐の中で、ハヤブサは『シュバルツ』の手を握り続けていた。
 すっかり変わり果ててしまったシュバルツの姿。
 しかし、この手は。この右手だけは―――――
 まだ、彼のヒトの面影を留め続けていた。
「シュバルツ……!」
 ハヤブサが時折呼びかける声に、目の前の『シュバルツ』からは咆哮にも似た苦しそうな声が上がる。
 おそらくシュバルツには、自分の声が聞こえているのだ。
 彼を乗っ取ろうとしている邪悪な存在と、まだ戦い続けているのが分かった。

 助けたい。
 助けてやりたい。
 自分を庇ったせいで―――――
 彼はこんな風になってしまったのだから。

 悪意の嵐は激しく、時折ハヤブサは、彼のヒトの右手を離しそうになる。
 だがそのたびに――――

(ダメ………! 離シテハダメ………!)

 か細いが、ひどく強い響きを持った声が、自分の脳裏に響く。
 手と手が握り合っている部分に、淡い光が宿っているのが見える。

 分かる。
 きっとこれが、今のシュバルツをかろうじて守っているのだということが。

 だが、このままではだめなこともまた事実だ。
 シュバルツを助けるために、今自分ができることは何なのだろう。

「シュバルツ!!」

 ハヤブサの呼びかけに、『シュバルツ』からは苦しそうな呻き声が返ってくるのみであった。


(いやだ………! いやだ………!)

 悲鳴を上げながらも、懸命に抗う。
 侵食してくる『悪意』は、自分を強引に闇の中へと引きずり込もうとしているのが分かった。

 いやだ………!
 そこには堕ちたくない……!
 それをしてしまったら、哀しませてしまう人がいる。
 苦しませてしまう人がいる。

 だから―――――!!

 その思いを嘲笑うかのように、闇の中から仄暗い笑いが返ってきた。

 ――――滑稽ダナ……。オ前はモウ、十分『邪悪』ナ存在でアルノニ……?

 そう言いながら声の主は、シュバルツに見せつけてくる。
 お前の身体は、『DG細胞』と『死体』という、歪な物でできているのだと。
 お前が出来るまでに、沢山の人の血が流れ、死んでいったのだということを。
 お前は、まさしくキョウジの『罪』キョウジの『罰』――――

 お前が死ぬだけで、いったい、どれほどの人が救われることだろう。

(キョウジ………!)

 知っていた。
 自分は、キョウジの『罪』の証。
 自分は存在し続けているだけで――――キョウジに『罪』を突きつけ続けてしまっていると、言うことを。
 だけど―――――

「帰ってきてくれ!! シュバルツ!!」

 懸命に伸ばされてくる手とともに伝わってくるキョウジの想いは、それだけじゃない。『罪』だけではないのだ。
 絶対にこれ以上、キョウジを哀しませる真似だけはするわけにはいかなかった。

 ――――随分ト、往生際ガ悪いコトダナ……

 闇からの声は、失笑を交えながら、尚も続く。

 ――――お前ハ、生キテイルダケデ他人ヲ暗黒ノ世界に巻キ込ム存在なノダゾ……? ミロ……! オ前のソノ手ノ先ニいル者ヲ………。

「…………!」
 声に導かれるままに顔を上げて――――シュバルツは息を飲んだ。
 何故ならそこには、嵐のような悪意の塊に翻弄されながらも、懸命に自分の右手を握り続けているリュウ・ハヤブサの姿があったのだから。

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