農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS 龍と剣と、その拳と 102

<<   作成日時 : 2016/02/24 01:03   >>

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「よく食べるねぇ」

 もう何杯おかわりしたのか分からないハヤブサを見つめながら、キョウジがポツリと感想を漏らす。その横で、与助が苦笑していた。
「すみません……! リュウさんは、大怪我したときなど、『食べて治す』的なところがあって、任務で負傷して里に帰ってきたときなどは、一時的に食欲が跳ね上がったりするのですが………」
 今回は衰弱していた期間が長かった分、その反動がひどいのではないか。与助はそう予測していた。そして、見事にその通りになっていた。

「ご馳走様でした」

 龍の忍者は静かに茶碗を置き、胸の前に礼儀正しく手を合わせて挨拶をする。その所作だけを見ていたら、静かな食事風景を想像するものだが、大量に積み上げられた茶碗が、先ほどの豪快な食事風景の名残を漂わせていた。
「さてと……」
 大きく息を一つ吐くと、龍の忍者はおもむろに立ち上がった。
「腹ごなしの修行に出るか。シュバルツ、ちょっと付き合え」
「馬鹿! すぐに動こうとするな! いくらなんでも内臓を少しぐらいは休ませないと………!」
「平気だ。腹八分程度で止めてあるからな」
(あれで腹八分!?)
 食べた量と積み上げている茶碗の高さに、キョウジは呆然とするしかない。
「シュバルツ行くぞ! 俺は早く身体を動かしたいんだ!」
 そう言うハヤブサは、もう玄関から外に出ていこうとしている。
「しょうがない奴だな……」
 シュバルツも少し苦笑しながら、玄関の方へと向かっていった。

 忍者二人が出て行ったのを見送ってから、キョウジはやれやれ、と、テーブルの上を片付け始める。
「手伝います」
 与助もすぐに飛んできて、皿洗いを手伝い始めた。
 暫くキッチンに、水音と皿を洗う音が響く。
 そして部屋の隅で点いていたテレビが、数日前の騒動について、コメンテーターたちが語り合っていた。
「あの爆発音は、いったい何だったんですかねぇ?」
「巨大な影を見た、という目撃情報も、何件かあるようですが……」
「あの中で戦っている人たちを見た、と、言う情報は確かなのですか?」
「警察や政府に問い合わせても『情報収集中だ』と、はぐらかされている……。これではいかんと思うのですよ。我々国民の知る権利が脅かされていることになるのですから」

「しかし……ならば何故、あの付近で行われたであろう戦いの爪痕が、何も残っていないのでしょう?」

 これには、その場にいるコメンテーターたちは、誰一人として納得のいく答えを導き出せる者はいない。テレビの中の出演者たちが眉根を寄せる中、すべての真相を知る部屋の中の青年は、上機嫌で鼻歌を歌いながら皿洗いをしていた。

 楽しみが増えた。
 この辺りの細胞株たちが、今後どうなっていくのかを、見守る楽しみが。
 決して公にしてはいけない案件ではあるけれども。
 いつか――――この実験の結果から、何か世の役に立つような技術やデータを、得られればいいと、願う。

「キョウジ殿……。すっかり世話になってしまって――――」

 最後の一枚を洗い終わった与助が、少し恐縮気味に声をかけてくる。それに対してキョウジは優しい笑みを面に浮かべて答えた。
「うんん、それはこっちだって……。ハヤブサには、どれだけ世話になっているか分からない。だからこれは、お互い様だよ」
「それでも……リュウさんの食事の量が………」
 申し訳なさそうに口を開く与助に、キョウジも苦笑するしかない。
「ああ……びっくりするほどよく食べるね。薄々思ってはいたんだけど、ハヤブサって内臓が丈夫だよね」
「すみません……。後少ししたら、量も落ち着いてくるだろうとは思うのですが……」
「後少しって、どれぐらい?」
 キョウジの問いに、与助は少し首を捻った。
「さあ……。倒れていた期間よりは、短いと思うのですが――――」
 二人がそんな会話をしているときに、いきなり玄関のドアが、バン! と、派手な音を立てて開く。

「ハヤブサ!! 勝負だぁ!!」


 キョウジの弟であるドモン・カッシュが、叫びながら勢いよく部屋に乱入してきた。兄と与助の姿をキッチンで見つけ、目的の人間とシュバルツがいないことに、ドモンはすぐに気づく。
「あいつはどこへ行った!?」
 きょろきょろと部屋中に目線を走らせる弟に、キョウジは呆れながらも答えた。
「外に出て行ったよ。腹ごなしの運動だって」
「何ぃ!? おのれっ!! この前の勝負からの勝ち逃げは許さんぞ!!」
 そう叫ぶや否や、弟は慌ただしく家から出ていく。
 嵐が過ぎ去った後のように呆然とする与助に対して、キョウジは、当分退屈しなくて済みそうな予感に、少し心を躍らせていた。


「シュバルツ。打ち込みに付き合ってくれ」

 キョウジのアパートから少し離れた郊外に、ハヤブサとシュバルツは足を運んでいた。少し拓けた平地に出ると、ハヤブサはシュバルツに木刀を投げてよこす。シュバルツがパシン、と、音を立てて木刀を手にしたのを確認してから、ハヤブサは己が手にした木刀を軽く素振りして、改めて構えた。
「……………」
 シュバルツも、ハヤブサから少し距離を置いて、木刀を右手に無造作に下げて立つ。
 一見、突っ立っているだけのようにも見えるが、それでいて、その姿には恐ろしいほど隙がない。シュバルツもハヤブサも、剣の達人であった。それが故に、木刀も真剣と同じぐらいの破壊力を持ちえた。
 緊張感のある稽古ができる予感に、ハヤブサは大きく一つ息を吐いて、木刀越しにシュバルツを見る。なぜか、妙な懐かしさを感じた。
 なぜだろう、と、少し考えて、やがて、ふと思い当たった。

(ああ。あの男の立ち方だな)

 異世界の隼の里での修行に付き合ってくれた『仇』の姿をしていた男。あの男の立ち方に、とてもよく似ていると思った。
 当たり前だ。
 あの男はシュバルツで――――あの世界でも、ずっと俺を守り続けてくれていたのだから。

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