農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 龍と剣と、その拳と 103

<<   作成日時 : 2016/02/26 01:12   >>

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 どうして――――
 今になれば、よくわかる。
 どうして自分は、この事実に気付くことができなかったのだろうか。

 この立ち方もあの構え方も
 シュバルツ以外にはあり得なかったのに。

 ハヤブサが間合いを詰めると、シュバルツも中断に構え、すっとそれに合わせてきた。
 最初は牽制をし合い、そして、互いを探るような打ち込み。
 ガツ! ガツン! と、木刀が交わる音が辺りに木霊する。

 打ち込む。
 受け止められる。
 弾かれる。
 いなされる――――

(届かせたい)

 ハヤブサの振るわれる太刀が、次第に熱を帯びるようになってきた。
 心が、あの少年だった自分に戻る。
 
 自分の太刀を、この目の前の強い男に届かせたい。
 どうすれば届く?
 どうすれば―――――

 考え続ける。
 がむしゃらに剣を振るう。
 目の前の男を見つめ続ける。
 ただ一点の隙を探り、そこに打ち込んでいく。

(鋭い――――!)

 ハヤブサの太刀を受け続けながら、徐々に強く鋭くなってくるその太刀筋に、シュバルツは内心舌を巻く。
 彼もまた、少年だったハヤブサとの打ち合いを思い出していたからだ。
 まっすぐに力強く、振り下ろされてくる彼の太刀の美しさ。それは、少年のころから変わっていない。
 ただ、今のハヤブサの太刀には重さがあった。確固たる意志があった。
 自分は、『龍の忍者』としての使命を全うするのだという意志。そして、強い覚悟――――
 それが太刀に乗り、シュバルツに襲い掛かってくる。

「く…………!」

 それでも、シュバルツはそれを受け止め続け、太刀を合わせ続けていたのだが、ふとした弾みに隙ができてしまったのだろう。ハヤブサの太刀に、自分の太刀が弾き飛ばされてしまった。
「―――――!」
「覚悟!!」
 ハヤブサは相手を押し倒し、その上に馬乗りになり、その喉元に太刀を突きつける。
 相手の命を奪うために幼いころから叩き込まれた行動を、龍の忍者は忠実に再現していた。

「………………」

 突きつけられた太刀の先にいるのは、穏やかな眼差しをした愛おしいヒト。そのヒトは自分と目を合わすと、にこりと優しく微笑みかけてきた。

「強くなったな」

 その一言に、シュバルツもまた、あの異世界の隼の里での修行を思い出していたのだと、ハヤブサは悟る。
「シュバルツ……!」
 彼もまた、同じ気持ちで戦っていたのだと分かって、ハヤブサは嬉しくなってしまった。
 愛おしさの命じるままに、ハヤブサはシュバルツの唇を求める。
「あ…………」
 薄く開いた唇から舌を忍ばせ、口腔を弄り、そこを優しく吸い上げた。
「ん…………」
 その優しい感触に、ハヤブサは酔う。
 もうずいぶん長いこと―――――彼に触れていない事実に、ハヤブサは気づいてしまっていた。
 知らず、挿し込まれる舌の深度が深くなる。求める気持ちに歯止めがきかなくなる。ハヤブサは、いつしか彼の唇を、強く吸い上げていた。
「んんっ!」
 呼吸を奪われてしまったのか、愛おしいヒトが腹の下であがきだす。

 ああ、逃げないで。
 逃げないで、くれ。

 無我夢中でその唇を求め、呼吸を奪い続けていた。

「……………」

 長い長いキスから、ようやく彼のヒトを解放する。
 トロン、と、瞳が潤み、飲みきれなかった唾液を唇の端から垂らしながら、息を喘がせている愛おしいヒト。ハヤブサの心が、妖しく波立った。
 よくぞまあ―――――
 自分はこの美しいヒトに、長い間触れずにいられたものだ。
 
「シュバルツ………」

 愛おしいヒトをさらに暴き立てようと、彼のコートに手をかけた瞬間。
 いきなりシュバルツの右手が、彼の鳩尾を抉った。
「うげっ!!」
 完全に不意を突かれてしまって、カエルの潰れたような悲鳴を上げながら、のたうち回ってしまうハヤブサ。それをしている間に、シュバルツはハヤブサの腹の下から逃れてしまっていた。
「これ以上はダメだぞ。ハヤブサ」
 ものすごく冷たい響きを持ったシュバルツの声が、ハヤブサにのしかかってくる。
「な……! 何故だ……っ!?」
 腹の痛みよりも、シュバルツの言葉の方に傷ついて、ハヤブサは少し泣きそうになる。そんなハヤブサを、シュバルツは少しジト目で睨み付けながら、呆れたように口を開いた。
「何故もなにも―――――お前、まだ身体が完治していないだろう?」
「―――――!」
「お前の唾液を診れば分かる」
 シュバルツはそう言いながら、口の周りについているハヤブサの唾液をぺろりと己が舌で舐めとる。アンドロイドであるシュバルツは、口で含んだ物を舌の上で成分が分析できるようになっているのだ。
「まだまだ、健康な時からは程遠い。治るまでは、『そういうこと』は禁止だからな!」
「ええ〜〜〜〜〜!?」
「『ええ〜〜〜〜〜!?』じゃないだろう!? ハヤブサ!! まだ完全に身体は治っていないんだ! 無茶をして、ぶり返しでもしたらどうするんだ!?」
「うううう………」
 不平に唇を尖らせ、低く呻くが、シュバルツのこういう診断はひどく正確であることを、ハヤブサも理解していた。だから、シュバルツの言うことを聞いて、ここは引っ込むべきだと理性は強く訴えるのだが。

(我慢できるか―――――ッ!!!!)

 龍の忍者は声を立てずに吼えたてていた。
 冗談ではない。
 あの状態でこのままお預けなど―――――本当に『蛇の生殺し』状態ではないか。

 触れたい。
 一度だけでも。
 どれだけお前に触れていないと思っているんだ。

 このまま無理やり、押し倒してしまおうか―――――と、言う物騒な考えにハヤブサがとらわれ始めた時。

「やっと見つけたぞ!! ハヤブサ!! この前の勝負の続きだ――――ッ!!」

 シュバルツの弟であるドモン・カッシュが元気いっぱいに乱入してきたが故に、ハヤブサの中のいろいろな下心が、ここで一気に粉砕されてしまう。
「上等だ!! 返り討ちにしてやるッ!!」
 鋭く叫んだ龍の忍者が、ドモンに向かって力強く踏み込んでいく。その瞳から、うっすらと光るものが零れ落ちているように見えるのは、気のせいだろうか。
 シュバルツは、しばらくかかりそうな一騎打ちを見守るべく、近くにあった大木の幹に、やれやれ、と、その背中を凭れかけさせた。
 そんな3人の上には、抜けるような青空が広がっている。
 優しい風を頬に感じながら、今日もいい天気になりそうだなと、シュバルツはその空を見上げていた―――――



 了

 ご愛読、ありがとうございました。
 また後日、改めてあとがきを書きに来させていただきます。
 

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