農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS 龍と剣と、その拳と 92

<<   作成日時 : 2016/02/05 15:51   >>

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「しかし……! 私の身に何かあって、この鶴が駄目になってしまったら――――」
「馬鹿者!! お主の身に何かあるはずなどあるか!!」
「……………!」
 東方不敗の怒鳴り声に、キョウジは思わず気圧されてしまった。
「ここにおる皆が、お前のことを守る!! この状況で、お主の身に危険など、及ぼうはずがない!!」
「え………? え……?」
「そうだぜ、兄さん。それにその鶴は、お前さんが持っていた方がいい」
 戸惑うキョウジに、チボデーが声をかけてきた。
「ドモンは……師匠のことも俺たちのことも、とても大切に想ってくれているのは分かっている。だけどこの中で、一番ドモンに声を届かすことができるのは、兄さんなんじゃないのか?」

「そうなのか?」

 チボデーの言葉に、キョウジは目をぱちくりとさせる。「でもそれだったら、きっとレインちゃんの方が――――」
「まあ、レインは確かにこういうシチュエーションでは適任だが、今、いないしな」
 キョウジの言葉にチボデーは苦笑するしかない。
「きっと異世界にいるドモンだって、兄さんの声が聞こえたら、きっと必死になってそちらのほうに行こうとするさ。なんてったってあいつ、兄さんのことが大好きだからな……」
 筋金入りのブラコンだから――――と、一言余計なことを呟いて、チボデーは後ろにいるジョルジュにどつかれていた。
「アハハハ……でも、分かったよ、ありがとう」
 キョウジは苦笑しながらも、チボデーに同意した。
「何とか、ドモンに呼びかけ続けてみる」
 そう言うキョウジの手の中で、その折り鶴は、淡い光を放ち続けていた。


「く……! う………!」

 懸命に堪えようとするが、どうしても低い呻きが漏れる。
 荒れ狂う時空の嵐の中、重傷を負った身体で、結界を保ち続けることが、ハヤブサにとって徐々に困難なものになりつつあった。
(まだだ……! まだ……力尽きるな……!)
 それでも自身を叱咤激励しながら、懸命に結界を張り続けるハヤブサ。

「ハヤブサ……!」

 愛おしいヒトの、心配するような声が聞こえてくる。

 ああ
 案ずるな。
 俺は―――――大丈夫だから………

「…………!」
 不意に、脇腹のあたりに生暖かい感触を得る。
 邪神よって傷つけられた傷口が、裂けたのだと悟った。
(どうか、シュバルツには気づかれませんように……)
 ハヤブサは懸命に、そう祈る。
 そう。
 今、傷口が裂けているとシュバルツに悟られてしまったら――――心優しい兄弟のことだ。自分たちが助かるチャンスを棒に振ってでも、こちらの身体を治そうとしてしまうかもしれない。
 それではだめなのだ。
 自分の望みは、この愛おしいヒトの幸せ。それ以外は、無いのだから。
 自分はどうなってもいい。この二人だけは助かってほしい。

「ハヤブサ……」

 愛おしい人が、こちらの身体をぎゅっと抱きしめてくる。
 ああ、もう十分だ。
 十分俺は、幸せだ。

 だから、俺はもういい。
 だがもし、この世に『神』とやらがいるのならば、お願いだ。
 この二人だけは、どうか助けてほしい。
 霞ゆく意識の中、ハヤブサはただそれだけを、懸命に祈り続けていた。

 ―――――リュウ……

 ―――――リュウ……

 不意に、自分の名を呼ばれたような気がして、ハヤブサは目を開ける。すると、いつの間にか自分は暗い空間の中に独りで佇んでいて、目の前には、大きくて美しい一羽の鶴が、そこに鎮座していた。

 ――――リュウ……

(……………?)
 優しい女性の声が響く。
 初めて聞くような声であるのに、どこか、懐かしさを感じるのは何故なのだろう。不思議に思って、ハヤブサは首をひねった。

 ―――――リュウ……。よくここまで、頑張ってこられましたね……

 優しい声は、目の前の鶴から発せられている、と、気づくのに、少し時間がかかった。呆然と鶴を見つめるハヤブサの前で、鶴から聞こえてくる優しい声は、なおも続いた。

 ――――さあ、ここが「出口」です……。ためらわずに撃ってください……。

 そう言いながら、鶴は大きな羽を広げて訴えかけてくる。
「ま、待てっ!」
 ハヤブサは思わず声を上げていた。
「お前は何者だ!? 何故わざわざそんなことを俺に――――」

 このとき鶴が、ふっとその面に優しい笑みを浮かべたように見えたのは何故だろう。

 ――――あなたのそばに………いてあげられなくて………ごめんなさい……

「…………?」

 ――――でも………私は………いつも、見守っています………。貴方のことを……。

 どうか、幸せになって、と、その優しい声は言った。その瞬間、ハヤブサは気づいた。目の前にいる――――鶴の真の正体に。

「母上!!」

 声を上げた瞬間、ハヤブサは現実世界に引き戻されていた。

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