農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS マリオネット狂想曲 20

<<   作成日時 : 2016/05/18 00:54   >>

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 身を起こせるようになってから数日の間、キョウジは呪いを解く方法を調べていた。
 しかし、有効な手立てが見つかるわけでもなく、ただ『呪術』に関する知識が、無駄に深まっていくだけだった。
(ううう……。できれば一生知りたくなかった………)
 分厚い呪術の本をパタン、と、閉じながら、キョウジは半泣きになってしまう。
 結局のところ、呪いを解くには、その『呪詛』を相手に返すか、優秀な『陰陽師』あるいは『巫女』とも呼べる存在に、その『邪気』を払ってもらうしかないらしい。
(でも、『呪詛返し』なんて高等能力、私なんかが扱えるわけないし、『陰陽師』や『巫女』に知り合いなんか居るわけないしな……。不用意に見知らぬ他人に頼むにしても、シュバルツの身体の秘密がばれてしまったら厄介だし……)
 そう考えていくと、自力で何とかするしかないのだが、それが出来かねるから、キョウジはもうため息を吐くしかないのである。同じところをぐるぐる回っているなと感じて、一つ大きく伸びをした。もう少し、科学的な方法で、アプローチできないかと思っても見るのだが。

(ハヤブサは……どうしているのだろう)

 ギ、と、音を立てて椅子にもたれかかりながら、キョウジは窓から空を見上げる。
 ハヤブサのことだから、何らかの手段を思いついたからこそ、シュバルツを連れて行った可能性が高い。彼は心底「シュバルツを取り戻したい」と願っているから、シュバルツの安否に関しては、キョウジはまるで心配していなかった。
 心配なのは、むしろハヤブサの方だ。
 あれだけの呪い、祓おうとしたら、それをする方もきっとただでは済まない。何らかのダメージを受けるのは必至だった。
 ハヤブサは、シュバルツのためならば、平気でその身を捨てようとする。
 シュバルツが、周りの人たちのためにその身を簡単に投げ出すのと同じように。
 きっと、それは理屈じゃない。
 ハヤブサが、それをせずにはいられないのだろう。そういうことをするシュバルツを、愛してしまったが故に。

 愛する人と同じ場所に立とうとする。同じ景色を見ようとする。
 それが――――リュウ・ハヤブサと言う人の、『愛し方』だった。

 ただ、『生命』がなく、何度でも甦ることができるシュバルツと違って、ハヤブサは人の身であるが故に、その生命は一つしかない。それでもなおシュバルツと同じ景色を見ようとするのならば、それはひどく無謀で――――文字通り、命がけの行為だった。
 それを貫き通すハヤブサは、本当に強くて―――――

 本当に、シュバルツが好きなのだと思う。

 そんな風に愛されるシュバルツを、キョウジは少々うらやましいとも思うが、正直、ハヤブサの愛は、自分には重すぎるかなとも思う。あの愛情をこの身に一身に受けたなら、1週間と持たずにこちらが潰されてしまいそうだ。
 ハヤブサも、それが分かっているから、私よりもシュバルツを選んでいるのだろう。

 自分とシュバルツとハヤブサ――――
 本当に、不思議な関係だとキョウジは思った。

(ハヤブサ……せめて、連絡をくれないかな………)

 それからキョウジの方は、特に進展があるわけでもなく、ただ時間だけが過ぎて行っていたのだが。


 今――――ハヤブサと再会して、ハヤブサが『呪い』を『食べた』と知って、キョウジの中で、処理しきれない様々なものが渦を巻く。堪えきれなくなってしまった彼は、不覚にもまた吐いてしまっていたのである。

「キョウジ……」

 トイレの入り口にハヤブサが立ち、心配そうに声をかけてくる。
 いけない、と、キョウジは思った。
 吐いている場合ではない。
 吐くより先に、言わねばならないこと―――――
 やらねばならいことが、あるだろう。

 吐くのを止めろ、と、キョウジは自分を強く叱咤する。
 そうしなければ、ハヤブサに別の要らない誤解を与えかねない。キョウジは、それを恐れた。
 しかし、一度沸き上がった吐き気は、キョウジから昼食を取り上げ、まだ出せと要求してくる。
(いやだ……!)
 キョウジが必死にそれに抗っていると、ハヤブサが横に座り、そっと声をかけてきた。

「大丈夫か……?」

「ハヤブサ……」
 顔面蒼白なキョウジが、目に涙を浮かべながらこちらに振り返る。それを見たハヤブサは、胸につきりと痛みを覚えた。
 聡いキョウジのことだ。もしかしたら、あの『墨』の正体を探り当てているのかもしれない。そして、それを自分が『食べた』と知って、この反応をしているというのなら。
「………………」
 自分は、確かに穢れている。もしかしたら、そばに寄ってこられるのも「いやだ」と、思われているのかもしれない。
「すまない………」
 小さくそう言って、ハヤブサが立ち上がろうとすると、「違う!!」と、キョウジがいきなり腕を掴んできた。

「待って……! ハヤブサ……! 少し、待ってくれ……!」

「キョウジ……!」

「お願いだ……! もう少しだけ―――――うッ!」
 キョウジはまた、便器に吐き戻し始めた。しかし、激しく噦(えず)きながらもキョウジは、掴んだハヤブサの手を、決して離そうとはしなかった。それを見てハヤブサは、ようやく自分の方がキョウジの態度を誤解しかかっていたのだと悟った。
「すまない、キョウジ……。大丈夫か?」
 そう言いながらハヤブサの手が、キョウジの背に触れ、そこを優しくさすり始める。
「ごめん……! 醜態を――――」
 顔色の悪いキョウジが必死に謝ろうとしてくるのを、ハヤブサはやんわりと押しとどめた。
「いい。それよりも、吐くのならば吐ききれ。その方が、楽になる」
「ハヤブサ……」
「俺のことは気にするな。大丈夫だから……」
「………うん……」
 ハヤブサのその言葉に、キョウジはようやく笑顔を見せる。しかし、二人がトイレから出るには、もう少しの時が必要であった。

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