農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS マリオネット狂想曲 28

<<   作成日時 : 2016/05/27 16:28   >>

ガッツ(がんばれ!) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

(え………!? これは、どういうことだ!? どういうことなのだ!?)

 愛おしいヒトの戦う後姿を見ながら、ハヤブサはしばし混乱する。
 自分は確か、シュバルツをキョウジに預けてきたはずだ。
 それなのになぜ―――――彼のヒトは、今ここにいるのだ? いったい何が――――
「…………!」
 ここでハヤブサは、一つの可能性に行き当たる。
(まさか『術』か!? 『術』の力で、シュバルツが引っ張られてきたのか!?)
 術の中にはごく稀に、術者とかけられた者が一定以上の距離を離れることができずに、かけられた者が術者についてきてしまうという類のものがある、と、聞いたことがあった。
 まさか――――『腐墨の術』が、これに該当する、というのであろうか。
 それにしても、シュバルツがそばについてきていることなど、自分は全然気が付かなかった。いつから彼は、自分のそばに潜んでいたのだろう。
 常々、気配を消すのがうまいやつだとは思っていたのだが―――――
 なんということだ。
 自分は、シュバルツにたやすく寝首を掻かれる可能性も、あるのではないだろうか。
(まあ、シュバルツになら、命を取られてもいいがな………)
 少し呑気にそんなことを考えかけて、ハヤブサははっと我に返った。

 今は、そんなことを考えている場合ではない。
 それよりも―――――

「うおおおおおおおッ!!」

 獣のような雄たけびを上げながら、また敵を粉砕していくシュバルツ。
 それを見ながらハヤブサは、少し眉を顰める。

 おかしい。
 シュバルツは、こんな戦い方をする奴だっただろうか。


「『腐墨の術』というのは存在自体が伝説めいた物であるゆえ、その術の効き方もいろいろと伝えられておるが、いずれにせよ術をかけられた者は、術者にぴったりと寄り添うようになっておる」

 ドモンがレインに連れられて家に帰っていくのを確認してから、東方不敗はキョウジに話し始めていた。キョウジに「術についてもっと詳しく教えてくれ」と、乞われた故だった。
「それは、何故ですか?」
 コーヒーカップを片手にキョウジは問い返す。それに対して、東方不敗はにやりと笑みを浮かべた。
「決まっておる。術者を守るためよ」
「…………!」
「術者が命の危険に曝された時――――術をかけられた者は、なりふり構わず術者を守ろうとする。自分の身の危険も顧みずにな………。そうしてその者を盾としながら、術者は己が身の安全を図るのだ」
「そんな…………!」
「それで術をかけられた者が死んでしまえば、術者は、また次の対象者を探す……。文字通り、人を傀儡化して消耗品扱いにする―――――将に、『邪法』じゃな」
「……………ッ!」
 キョウジは、コーヒーカップを両手で抱え込むように握りしめ、ぎり、と、歯を食いしばっていた。術をかけられた者は、ただ術者のためにすべてを捧げ、そしてそのまま道具のように消耗され、やがて命をも落としていく。
 なんと非道な術なのだろう。
 その『術』のせいで犠牲になった人々のことを考えると、キョウジはいたたまれなくなった。
「おそらくシュバルツは、ハヤブサを守るためについていったのであろうが――――」
「シュバルツ………」
 キョウジはしばらく無言で、カップの中のコーヒーがゆらゆら揺れるのを見つめていたが、やがて、小さな笑みをその面に浮かべると、ゆっくりとコーヒーを飲み始めた。
「キョウジ、何がおかしい?」
 笑みを浮かべるキョウジの真意を測りかねて、東方不敗はキョウジを問いただす。すると、彼は穏やかに答え始めた。
「いえ………『気の毒だな』と、思って……」
「気の毒? 何がじゃ?」

「いま――――ハヤブサに攻撃を仕掛けている、『敵勢力』が」

「…………?」
 怪訝さに眉を顰める東方不敗に、キョウジは少しいたずらっぽい笑みを見せる。
「マスターも、覚えておいてください。ハヤブサに勝負を挑もうとするのなら、絶対に、シュバルツに手を出してはダメです」
「何故じゃ?」

「シュバルツが正しく、ハヤブサにとっての『龍の逆鱗』に当たるからですよ」

「――――!」
 少し驚く東方不敗に、キョウジは穏やかに答え続ける。
 そう。
『逆鱗』とは、龍の鱗で絶対に触れてはならぬもの。それに不用意に触れてしまった者は、激高した龍によって、必ず殺されてしまうという言い伝えがある。
「シュバルツがハヤブサの目の前で、自分を犠牲にするような戦い方をすることを、ハヤブサが許すはずもない。下手をしたら、龍の忍者としての彼が普段眠らせている力を、呼び覚ましてしまうことになりかねないんです」
 それは、下手をしたら街を一つ、消してしまうことにつながりかねません、と、笑うキョウジに、東方不敗は「ほう……」と、声を上げた。
「それは逆に、見てみたい気もするがな」
 にやりと笑う東方不敗に、「それはやめてください」と、キョウジは肩をすくめていた。


 シュバルツは、ハヤブサの手を取って走る。
 立ちふさがる者、追ってくる者は容赦なく粉砕する。
「シュバルツ……!」
「……………」
 ハヤブサが呼び掛けても、反応しないシュバルツ。時折ぶつぶつと「ハヤブサ(ご主人様)をお守りするために――――」と、抑揚のない声で呟いていた。
「シュバルツ……ッ!」
 ハヤブサはぎり、と、唇をかみしめていた。

 違う。
 ここにいるのはシュバルツであっても『シュバルツ』ではない。
 シュバルツの形をした、別の『何か』だった。
「死ねえええい!!」
 兵士が、また、発砲しながらこちらに向かってくる。シュバルツは無言で自分の身体の後ろにハヤブサを庇うと、兵士を剣で容赦なく袈裟懸け斬りにしていた。頽れた兵の身体をグシャ、と、踏みつけて、シュバルツはハヤブサの手を引いて走っていく。
(……………!)
 ハヤブサは、いたたまれなくなった。

 違う――――
 シュバルツは
 シュバルツは絶対に、こんな戦い方をしないのに。

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