農家の嫁の日記

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zoom RSS マリオネット狂想曲 31

<<   作成日時 : 2016/06/01 00:02   >>

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 突如として、天地をつんざくような咆哮が、あたりに響き渡る。

「なんだ!? 何が――――」
 そう口走った兵士の首が、いきなり宙を舞う。
「!?」
 何が起こったのかわからず戸惑う兵士たちに、襲い掛かってくる黒い影。
 結局彼らはそのまま自分の身に何が起こったのか『理解』する暇もないまま、自身の生命を終えていったのである。

 怒りに燃える龍の忍者の攻撃は、そこで収まらなかった。

 実際、ハヤブサの中ではすべてのことが吹き飛んでいた。
 積み上げてきた教養も
 礼儀作法も
 その倫理観も、道徳心も、義侠心すらも―――――

 この度し難い怒りの前では、すべてが無意味だった。

 火の玉と化した、龍が駆ける。
 その巨大な熱は、目に映る全ての物を飲み込み、駆逐していく。

 そして―――――



「リュウ……! リュウ………! 聞こえるか!?」

 インカムから呼びかける声に、ハヤブサの『理性』が彼に戻ってきた時――――彼の手には、その地区を支配していた組織の幹部の首が、握られていた。
「………………」
 ひどく、乱れる呼吸。インカムの声にハヤブサが答えかねていると、声の主はハヤブサの事情を少し察したのか、返答を要求せずに言葉をつづけた。アーサーからの通信だった。

「今から5分後に、我々はY地点に向かう。そこで、5分待機する」

「………………」
「申し訳ないが、それが我々の差し出せる、精一杯の救助の手だ。どうか、時間内にここに来てほしい」
 幸運を祈る――――と、言い置いて、その通信は切れた。
(Y地点………あそこか………)
 ハヤブサは一つ大きく息を吐くと、ゆっくりと踵を返し、歩き出していた。


 あちこちに傷を負っていたが、歩行に支障が出る程度の物はない。特に頓着するでもなく、ハヤブサは歩き続けた。
 道中で、シュバルツが『爆死』した地点にたどり着く。
 瓦礫だらけの、焼け焦げた場所―――――だが、よく目を凝らしてみると、そこに一人の『人間』が横たわっているのが見える。
 その人間は、シュバルツだった。バラバラに砕け散ったはずのシュバルツの身体が今、元の形に形成されつつあった。
「……………」
 ハヤブサはその体を仰向けに寝かせて、彼の胸に自身の耳を当てる。しかし、まだ内部の『駆動音』は聞こえてはこなかった。蘇生にまでは至っていないのだと悟る。
(シュバルツ………)
 ハヤブサは、近くの崩れた家の中からシーツを引っ張り出し、シュバルツの身体をくるむ。それを抱きかかえて立ち上がると、再び、目的地に向かって歩き出していた。


 目的のY地点につくと、そこにはすでに空輸艇が待ち構えていた。ハヤブサが近づいていくとドアが開き、中からアーサーが姿を現す。
「リュウ!! 待ちかねたぞ!!」
 叫ぶアーサーにハヤブサは手を挙げて答えると、彼もまた、飛行艇に乗り込んでいった。

「リュウ……! 相変わらず、無茶をする奴だな……! 脱出の手段がこの空輸艇しかないと、どうしてもっと早く教えてくれなかったんだ……!」
 艇に乗るなり、アーサーの揶揄ともいえる言葉が飛んでくる。
 アーサーは助け出された後でその事実を知り、上層部に掛け合って、再び空輸艇をこの地に来させていたのだ。
「仕方があるまい。今回の任務の最優先事項は、お前の奪還だったのだから」
 ハヤブサはそれを振り払うように口を開いた。
 そう。頼まれた依頼は『アーサーの奪還』
 だから、それ以外の人質たちは無視しても良かったのだが―――――

 このアーサーという律義な男は、自分よりも部下の命を優先することを、ハヤブサは知っていた。
 だから、アーサーを助けるために、他に人質になっていたアーサーの部下たちも、共に救出したのだ。そうでなければ、「私は絶対に逃げない!」と、駄々をこねられていたことだろう。

「ハヤブサ殿、その手荷物は?」

 アーサーとともに空輸艇に乗ってきた武装した兵士が、ハヤブサが持っている物を問うてくる。
「ああ………」
 その問いに、ハヤブサはまず、右手に持っている白い布で包まれた、小さな荷物の方を、兵士の方に差し出した。

「まず、これから渡しておこう。あとで改めて首実検をしてもらうが、この地区を実効支配していた過激派組織の幹部の一人の『首』だ」

「………………!」
 あまりにも意想外な、物騒なものを渡されて、兵士は思わず息を呑む。持っている『首』を、取り落としそうになって慌てた。
「流石だな! 龍の忍者! また一つ、お前の『伝説』が上書きされたわけだ」
 対してアーサーは、心底感心したような眼差しをこちらに向けながら、ヒュウ、と、口笛を吹いている。
(別に好きで、『伝説』を上書きしているわけではない)
 そんなアーサーを、ハヤブサは少し醒めた眼差しで見ていた。正直、この幹部を討ち取った時の自分は、凄まじい怒りの乱流に飲まれていただけだ。その間、どうやって戦ったのか、どうやってこの幹部を討ち取ったのかも、よく覚えてはいない。
 この為体(ていたらく)で『伝説』などと謳われても、片腹痛いだけだと思うのだが。

「で、では……そのもう一つの大きな荷物は………?」

 恐る恐るといった案配で問いかけて来る兵士に、ハヤブサは「ああ……」と、腕に担いでいる方の『荷物』に、視線を走らせた。

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