農家の嫁の日記

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災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS マリオネット狂想曲 32

<<   作成日時 : 2016/06/01 23:54   >>

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「これは、あの戦いの最中、俺を守って死んでしまった人の『遺骸』だ」

「―――――!」
 ハヤブサの言葉に、一同ははっと息を呑む。
「あそこではきちんと弔ってやることもできないからな……。できれば、落ち着いた場所に、ちゃんと葬ってやりたいんだ」
 シン……、と静まり返ってしまう空輸艇の中。
(やはり、『遺骸』として運び込んだのはまずかったか?)
 ハヤブサは少しの気まずさを感じて、目を伏せた。
「すまない……。だが、俺は―――――」
「遠慮するな、リュウ。お前がこの戦いにおいてあげた功績を鑑みるならば、その人に立派な墓を建ててもまだ足りないぐらいだ」
 アーサーの言葉に、ハヤブサは少しびっくりして顔を上げる。ハヤブサと視線が合った兵士たちが、うんうん、と、頷いていた。
「なんなら『軍葬』として、隊全体で葬らせてもらってもいいが……」
 アーサーの申し出を、ハヤブサは丁重に断った。


「やはり、行くのか? 龍の忍者」

 紛争地帯から国境を超え、アーサーの所属する国の軍の基地につく前の広い平野の一角で、ハヤブサは空輸艇から『遺骸』を抱えて降りていた。
「ああ。俺の『任務』はもう果たした。報酬も間違いなく入るようだし、ここでの俺の用事は、もう無いからな」
「リュウ、もう一度言う。うちの国に来る気はないか?」
 アーサーは、真剣な面持ちでハヤブサに声をかける。
「お前ならば、破格の待遇でわが軍に迎え入れてやれる。何不自由ない生活と出世が、約束できるだろう」
 アーサーの申し出に、しかしハヤブサは、頭を振った。
「何度も言わせるな、アーサー。俺には俺の生きる道がある」
「リュウ………!」
「お前と俺の歩む道に、また接点があれば――――いずれ、会うこともあるだろう」
 ハヤブサの言葉に、アーサーは一つ溜息を吐く。

「やはり……お前は『孤高』を選ぶのか、龍の忍者」

 その言葉に、龍の忍者からは「ああ」と、短く返事が返ってくる。彼の意志はそう簡単には覆せないのだと、アーサーは悟らざるを得なかった。

「世話になった……。龍の忍者、また、縁があれば会おう」

 そういってアーサーは、ハヤブサに向かって最敬礼をする。後ろに控えていた兵士たちも、それに倣った。彼らは空輸艇のドアの向こうにその姿が消えるまで―――――その姿勢を貫いていた。
「さて……俺も行くか………」
 空輸艇を空の彼方に見送ってから、ハヤブサもシュバルツを抱きかかえ、独り、歩き出していた。


  「第5章」


 とあるモーテルの一室に、ハヤブサはシュバルツを連れ込んでいた。
 バラバラの爆死体になったシュバルツの身体だが、今はきれいに復元されていた。内部の駆動音も甦り、穏やかな呼吸音が、ハヤブサの耳朶をくすぐっている。だがまだ意識は戻らないのか、彼はモーテルのベッドの上で、身動き一つすることなく眠り続けていた。
(シュバルツ……)
 ハヤブサは、意識のないシュバルツの服の前をくつろげさせ、その肌を露わにした。
「…………」
 そして、少し眉を顰める。まだ『腐墨の術』の『墨』の文様が、その体にうっすらと残っていたからだ。
(これは………目が覚めても、まだ傀儡状態のままかもしれんな……。だがかなり……墨自体は薄まっているようだが………)
 この薄さなら、あと一回か二回、『清め』の術を行うだけで、彼を完全に浄化することができそうだ。そういう希望が見えてきて、ハヤブサはほっと、その胸をなでおろしていた。

 しかし、恐るべしは『腐墨の術』―――――シュバルツは一度完全に死んでいる。死してなお、その影響から抜け出すことができないとは。

 だが、死ぬ前よりも、『墨』の濃さは格段に違う。やはり、人の生死が術に与える影響は、大きなものだと悟らざるを得なかった。
(もしかしたら、シュバルツをもう一度『殺せば』………彼を、完全に『浄化』することができるのだろうが………)
 そこまで思い至ったハヤブサは、ブンブン! と、頭を振った。

 いやだ。
 そんなことはしたくないし、させたくもない。
 シュバルツをもう一度死なせるぐらいなら、自分が『毒』を食らう方を選ぶ。
 シュバルツを快楽の中に溺れさせ、喘がせる方を選ぶ。

 それほどまでに大切な―――――愛おしい、ヒトだった。

(シュバルツ……)
 その髪を、そっと撫でる。
 すると、シュバルツが軽く身じろぎをした。
「う…………」
 どうやら意識が戻ってくるらしい。
 ハヤブサは静かに、その時を待った。

 やがて。
 フ………と、シュバルツの黒縁色の瞳が開く。
「シュバルツ……」
 ハヤブサが声をかけると、シュバルツは振り返った。

「ハヤブサ……」

 一瞬、その瞳に宿る『生気』
 だがすぐに――――――黒緑色の瞳は『ガラス玉』のようになってしまった。

「ハヤブサ(ご主人様)………」

(ああ、やはりだめだったか……)
 少しの寂しさを感じて、ハヤブサは苦笑する。
 だがそれならそれで、特に問題はなかった。
 今からシュバルツを、時間をかけて丹念に『浄化』してやることができるのだから。
 

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