農家の嫁の日記

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災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 「彼シャツ」 2

<<   作成日時 : 2016/08/30 02:08   >>

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ハヤブサが泊まっているホテルと部屋番号さえ分かれば、壁抜けの心得がある彼にとって、ホテルの施錠など無意味な物だった。するりと部屋に入り込んで、その部屋が無人であることに気づく。
(居ない……。すれ違ったか?)
鍵もかけられていたし、当たり前か、と、思いながら、シュバルツは部屋の中に視線を走らせる。一見、何の変哲も無い普通の部屋のように思われたが、すぐにその部屋の一角にきな臭い物があると気がついた。そこには、盗聴器が仕掛けられていたのだ。
(やれやれ、相変わらずやっかいな任務に就いているのだな)
 闇の世界に生きる恋人の仕事環境にため息を吐きながらも、シュバルツはほかに異変が無いかを探る。そこに仕掛けられていたのは盗聴器だけで、カメラなどは見つけられなかった。
(盗聴器だけか………。なるほど)
 ここでする会話には、細心の注意を払わねばならぬとシュバルツは思う。与助から頼まれたこの言付けをどうやってハヤブサに託そうか────と、思案しながらなんとなく視線を部屋の中に泳がせていたシュバルツであるが、やがて、ある物にその視線は釘付けになった。ベッドの上に、畳まれたハヤブサの物と思われるYシャツを見つけたからだ。
(珍しいな……。彼がYシャツを着るなんて)
そう思いながらも、今日ホテルに入る前のハヤブサの姿を思い出す。
少し長めのトレンチコートの下にスーツとネクタイを締めた姿だったが……よく似合っていた。
ハヤブサは身長は平均的だが、頭が小さいため、実際の身長よりも高く見える事がある。その身体のバランス故に、長髪な髪型も絵のように決まっていた。

そんな彼が、私の事を好きだと言う。
何故なのだろう。
彼ほどの容姿と力量の持ち主ならば、パートナーとし得る人間など────引く手あまただろうに。
(ハヤブサ………)
分かっている。
アンドロイドである自分は、本来ならば人間のパートナーになど、決してなり得てはいけない存在であると言うことぐらい。今はこうして想われていても、彼が真のパートナーを得れば、自分は身を引かねばならぬのだ。

だけど、自分の心は────

きっと、彼をずっと想い続けてしまうだろう。
それだけは
それだけはどうか、許してほしい────

「……………」

シュバルツはそっと、ベッドの上に置いてあるハヤブサのシャツを取る。
そして────

「…………………」

想いを込めてそのシャツに口づけをして、それをそっと抱き締めていた。


「─────!」

その光景に息を呑んだのは、それを部屋の外から見ていたハヤブサである。
クライアントとの電話を終え、部屋に入ろうとすると、何やら中から人の気配を感じる。
「…………?」
ハヤブサは極限まで気配を消して、そっとドアを解錠する。そしてそこで見つけてしまった。
 自分が死ぬほど会いたいと願っていた愛おしいヒトが────自分の脱いだシャツに口づけをし、そして、抱きしめる姿を。
(嘘だろう!?)
 幻かもしれない、このシュバルツは偽物かもしれない。
 そう疑うよりも先に、ハヤブサの身体は動いてしまっていた。
 今────本当に目の前に居る愛おしいヒトが、自分のYシャツに口づけをして抱きしめていたのか。それをどうしても確かめたくて。
 バン!! と、大きな音を立てて、ドアが蹴破られるように開けられる。
 はっと、息をのむ愛おしいヒトに向かって、ハヤブサはずかずかと距離を詰めて行っていた。

「は、ハヤブサ!? 居たのか……」

「シュバルツ……! 今────」

「えっ?」

「今────俺のYシャツに何をしていた!?」

「え………っ? あ………!」
 ここでシュバルツもようやく、自分の最も見られてはいけない姿をハヤブサに見せてしまったと悟る。彼はカッと頬を朱に染めながら、慌ててYシャツを後ろ手に隠していた。
「ち、違う! これはっ……! その………!」
「違う? 何が?」
 ハヤブサは少し意地悪く笑いながら、強引にシュバルツのシャツを握り込んでいる手を取る。
「あっ!」
「………つれないヒトだな。愛するのならば、俺のシャツじゃ無くて、俺自身に口づけをくれれば良いのに………!」
 豊かな愛情をその身に宿しているのに、それを押し隠そうとする愛おしいヒト。
 それがほんの少しもどかしくて腹立たしいから、ハヤブサは多少強引にシュバルツの手を引いて、こちらの方に引き寄せた。
「は……ハヤブサ……」
 少し怯えたような色を見せながらも、素直にこちらの腕の中に飛び込んでくる愛おしいヒト。ハヤブサは微笑みながら、その背に手を回そうとすると、シュバルツの方もまた、甘えるように身をすり寄せてきた。
「シュバルツ……!」
 思いもかけぬ愛おしいヒトからの愛情表現にハヤブサが随喜していると、その耳元で、シュバルツから意外な事実を告げられていた。
(盗聴器がある)
「……………!」
 驚き、息をのむハヤブサの瞳を見ながら、シュバルツはうなずく。
(カメラは?)
 小声で問うハヤブサに、シュバルツは首を横に振った。
(そうか………)
 シュバルツの反応を見ながら、ハヤブサは状況を整理する。
 カメラは仕掛けられていないから、細かい所作振る舞いまでは気を配らなくて良いと言うこと。後は、会話さえ気をつけていれば、何も問題は無い、と、言うことだ。
 ハヤブサはフム、と、1人頷くと、満面の笑みを浮かべながら、シュバルツに声をかけた。

「嬉しいよ、シュバルツ……。会えないのが淋しくて、俺に会いに来てくれたのだろう?」

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