農家の嫁の日記

アクセスカウンタ

本の販売を始めました!
ここより本の注文画面に飛べます。
当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS 戦う君に、花束を 10

<<   作成日時 : 2017/01/13 23:12   >>

面白い ブログ気持玉 3 / トラックバック 0 / コメント 0

「いろいろとお前に聞きたいことがある。質問してもいいか?」
 ハヤブサの問いかけに、姫は「どうぞ」と頷いていた。
「お前は………俺を『信用』するのか?」

「はい」

 姫は笑顔で即答する。
「あなたには、私を殺す機会など、いくらでもありましたもの」
「……………!」
 姫のその言葉に、そばにいたトマスとモガールの顔色が変わる。
「でもあなたは、私を殺さなかった……。それで、十分だと思います。貴方を『今』信じるには────」
(ほう………)
 ハヤブサは、姫の回答に感心する。
 彼女は、冷静に相手を観察している。そして、『今、信じる』という言葉────
 これは、相手に100%『信』を置いている言葉ではない。この先どう転ぶかは分からないが、今この瞬間だけは、こちらに『害意がない』と、彼女は判断しているのだと、指し示すものだった。
 なかなか、利発な娘のようだ。どうやら、能天気に『姫』をやっているわけではないらしい。
「では、もう一つ聞く」
「はい」
「お前は今日街で、複数の刺客たちの襲撃を受けたわけだが────」
 ハヤブサは話しながら、襲ってきた刺客たちのことを思い出していた。
 刺客たちは当然、服装もバラバラなら、襲ってくる手段もバラバラだった。おおよそ、統制の取れた集団戦で挑んてきている、とは、言い難い。
 しかし、いかんせん数が多すぎた。
 そして、その攻撃手段も、戦い方も、多岐にわたった。
 まるで、彼女を『殺そう』とするルートが『一つではない』と、言わんばかりに─────

「いつも、町に出ると、あれだけの刺客に襲われていたのか?」

 もしも、毎回そうなのだとしたら、これは大問題だ。
 いかなる理由があっても、町に出歩くのはしばし遠慮してもらわねばならぬ、と、ハヤブサは思ったのだが。
「いいえ」
 ナディール姫は、静かに首を横に振る。
「あれだけの刺客に襲われたのは、今日が初めてです」
「…………!」
「いつもは、城の中の方が────」
 伏し目がちに、ここまで口走ったナディール姫が、はっと我に返る表情をした。
「そ、そうだ! お城といえば────」
 兵士二人の方に視線を走らせながら、明らかに作った笑顔を見せる。どうやら、城の中の事情を、兵士たちには聞かせたくないらしい。
「……………」
 ハヤブサもそれを察して、敢えて今は、姫の作り笑いに気づかないふりをした。
 ただ、後で必ず事情は聞かねばならぬとも、思った。
「ここ、地下にしては広く拓けているでしょ?」
「そういえば……!」
 姫に指摘されて、兵士たちもハヤブサも周りを見渡す。下水道の狭い通路を抜けてきたのに、ここは天井も高く、柱や壁に使われている石の質も違う。人の手で丁寧に作りこまれた空間────ハヤブサの歴史好きな血が騒いだ。
「ここには昔、この国が敵に攻められた時に備えて、建築された、王族の隠し城があるみたいなの」
「隠し城………」
 言われてみれば、柱や壁のところどころに、必要以上に丁寧な装飾が施されているのが見て取れる。
「これが、その名残なのか?」
 ハヤブサの質問に、ナディール姫は首をかしげる。
「分からないの……。実際に攻め込まれたこともないし、一度も使われたことがないらしいから、その存在を直接確認した人はいない………」
 ここで、ナディール姫は、屈託のない笑みを面に浮かべる。
「でも、地下を探索していると、ところどころこういう空間に行き当たるから、この辺りに城があったんじゃないかなぁ、って、思うの! ねぇ、こういう発見って、わくわくしない? 宝さがしみたいで!」
「地、地下を探検って………!」
「姫様……! そのようなことを、されていたんですか……!」
 ナディール姫のその言葉に、兵士二人が頭を抱えてしまっている。両方の気持ちが分かるハヤブサは、もう苦笑するしかなかった。
「うん! 小さい時から暇なときに少しずつやっていたの。だから、この辺りに地下の通路は、大体網羅しているわよ!」
 そう言って、エッヘン! と、言わんばかりに胸を張るナディール姫。素直に頼もしいと、ハヤブサは思った。その地下通路の地図、ぜひ、こちらにもレクチャーしてほしいものだ。
「そういえば……」
 ナディール姫が、ハヤブサの方に向き直る。
「まだ、あなたの名前を聞いていなかったわね。御名は、何とおっしゃるのですか?」
「ああ……。俺の名は────」
 特に名を隠す理由もなかったので、ハヤブサは素直に名乗ろうとする。しかしその時、彼の優れた感覚は、迫りくる『殺気』を捉えていた。
「……………!」

 唸り声。
 禍々しい気配。

 悟る。
 これは、『人間』の物ではない。

「おい、そこのお前」

 ハヤブサは唐突に、モガールに声をかける。
「な、なんでしょう?」
 ちょっとびっくりしたように顔を上げるモガールに、ハヤブサは持っていた槍を差し出した。
「これはお前の得物だろう。返す」
 ぽいっと、無造作に投げられる槍。モガールは慌てて受け取っていた。

「それで────姫を守れ!」

「えっ!?」
 唐突に言われて固まる3人を背に守るように、ハヤブサは立つ。
「来るぞ……! 殺気だ……!」
「そ、そんな……!」
 にわかに信じられないナディール姫は、否定するように首を振る。
「おかしいわ……! だってここは、誰にも知られていないはずの場所なのに……!」
「姫様……!」
 トマスとモガールは、そんなナディール姫を守るように囲んで、そして槍を構えた。今ここに、ハヤブサの言葉を疑う者は、誰もいなかった。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 3
面白い 面白い
驚いた

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
 いつも愛読していただいてありがとうございます(^^)。
また、気持ち玉へのクリックもありがとうございます! 
ものすごくものすごく励みになります。
アンケート実施しています(*^^*)ご協力お願いいたしますm(__)m
 当方のブログの内容とあまり関係の無いTBは、削除させていただきます。
 悪しからず、ご了承ください。

アンケート実施中

戦う君に、花束を 10 農家の嫁の日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる