農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 13

<<   作成日時 : 2017/01/16 17:50   >>

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「あら、ナディール、こんなところにいたのですね」
「はい。お義母様には、ご機嫌麗しゅう……」
 そう言って、ナディール姫は礼に則り、丁寧に畏まる。それに対して、女性は、チラリ、と視線を走らせると、はぁ、と、忌々しそうに溜息を吐いた。
「ナディール……。貴女はまた、そんな町娘のような恰好を……」
「………………」
 女性の言葉に、ナディール姫は、ただ沈黙を返す。
「まったく、あなたという人は……! 何度言えばわかるのですか!? あなたは『王族』としての自覚が足りなすぎます!! このままでは、いい恥さらしですよ!?」
(自覚がないだと?)
 ハヤブサは、この女性の言い分には、かなり理不尽なものを感じたが故に、何とも複雑な心持になった。
 ナディール姫に『王族』の自覚が足りないなどということは、断じてない。
 彼女は自分が危機に陥った時、まず市民の安全を考えた。
 自分を命かけて守ろうとする、兵士たちを庇おうとした。
 優しすぎる─────だが、『王女』として大切なものは、すでに自分の物として、その身に纏っていた。
 彼女に『王族としての自覚がない』と、言うのなら、いったい誰が、『王族の自覚』を身に着けていると、言うのだろう。
(ぜひとも、ご教授願いたいものだ)
 壁際で沈黙を貫いているが、ハヤブサは実際かなりムカついていた。
 もしも、このままこの状態が続けば、ハヤブサは、姫に向かってどうでもいい小言を、ねちねちと言いまくっている女性の頭の上に、何か落とすことを画策してしまっていたかもしれない。
 しかし、そうなる前に、闖入者がそこに走りこんできた。

「ひ、姫様〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 それは、騎士然とした男だったが、半泣きの声を上げていた。銀の長髪をなびかせながら、ナディール姫の前に転がり込むように、跪いていた。

「イガール!」

 驚いたように声を上げる姫に対して、男はその面に、心底ほっとしたような表情を浮かべた。

「良かった……っ! 姫様が、ご無事で………!」

「ごめんなさいね、イガール……。ただいま帰りました」
「姫様……!」

(ああ、こいつがナディール姫が話していた武人か)
 姫の前で泣き崩れそうになっている男を見ながら、ハヤブサは得心していた。
 なるほど、人のよさそうな武人だ。腕の方はともかくとして、兵士たちや姫が、彼に信頼を置くのもよく分かる。

「イガール!! これはどういうことなのですか!?」

 対して、ナディール姫にねちねちと小言を言っていた女性の怒りが、今度はイガールに向かっていた。彼に説教を邪魔されたことが、よほど面白くなかったらしい。
「ナディールは、また勝手に街に出歩いていたようですし……! イガール!! あなたはそばについていなかったのですか!? ナディールが出ていこうとしたら、止めるように言いつけておいたでしょう!!」
「王后様……! 申し訳ありません! しかし────」

「ナディール姫様!! 聞きましたぞ!?」

 イガールが何事かを言おうとしたとき、そこにまた闖入者がやってきた。見ると、口髭を蓄え、眉間に深い縦ジワを刻み、気難しそうな顔をした。初老の男が、ズカズカとこちらに向かって歩いてきていた。

「たった今、街の者から報告を受けました……。姫様、刺客の襲撃に遭われたそうですな」

「なんですと!?」
「まあああ………!」
 初老の男の言葉に、イガールと王后から、同時に声が上がった。
「何てこと────! やはり、ナディール。貴女に『王族』としての自覚がないから───!」
(いや、今それは関係ないだろう)
 ハヤブサは心の中で突っ込むが、口に出していないので、それは当然誰にも伝わらないままに、話は進む。
「姫様……! ですからあれほどお待ちくださいと────ウッ!!」
 イガールが急にかがみこむからどうしたのかと思えば、「胃痛が………っ!」と、彼は己が腹を抑えて、しくしくと泣き出していた。
(気持ちはわからんでもないが……)
 ハヤブサは、半ばあきれながらその様子を見ていた。
 こんな状況だ。さぞかし、彼はストレスが溜まっていることだろう。
「イガール!! あなたはナディールのそばにもついていないで────いったい何をしていたのですか!?」
 王后の怒声がまっすぐにイガールに襲いかかる。
「いや、それがその……」
 弱弱しくイガールが口を開いた時、そこに兵士が走りこんできた。
「イガール隊長! こちらにおいでたのですか!?」
「どうした?」
 問い返すイガールに、兵士が敬礼をする。
「はっ!! 先程病院から連絡があり、隊長がお助けしたご婦人が、無事に赤子を出産したようです!!」
「…………!」
 兵士からの報告に、一同がハッと息をのむ。
「本当か!?」
「はい! 母子ともに無事なようです!! 病院からくれぐれも隊長によろしくと、言付かってまいりました!」
「それは良かった……」
 ほっと、安堵の息を吐くイガール。しかし、周りの注目が自分に集まっていると悟ると、彼は慌てて畏まった。

「……イガール……」

「も、申し訳ありません! 姫様!!」
 声をかけてきたナディール姫に、彼は深々と頭を下げる。
「本来ならば、姫様を第一の優先とせねばならないところを────!」
 しかし、ナディール姫は、イガールの詫びの言葉にフルフルと首を振る。
「いいえ……。詫びは不要です。イガール……。貴方はとても、良いことをしましたね」
「姫様………!」
「私たち王族は、国民あっての王族です。私たちは何を置いても、まず国民の命と安全を、最優先にせねばならないのです。貴方のとった行動は、騎士として正しい……。私は、そんな貴方を、誇りに思います」
「姫様……っ!」
 イガールはナディール姫の前で、感涙に咽んでいる。初老の男は、やれやれと首を振っていた。

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