農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 15

<<   作成日時 : 2017/01/19 00:08   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

「とにかく、この者にはナディール姫の『護衛』としてついてもらう。そうすることが、我が国にとって───」
「まあ! 内大臣! あなたともあろうお方が、各方面への許可も取らずに独断で、このどこぞの『馬の骨』とも知れぬ者を、勝手に城にあげるというのですか!?」
(馬の骨………)
 あまりにもはっきりと、ここまで罵倒されたこともハヤブサの人生の中ではそうない経験なので、ハヤブサは、怒りを通り越して笑いすらこみあげてきた。
 確かにここでは自分は余所者で、『馬の骨』と罵られても仕方のないことではあるが────
(ここまで罵倒されると、いっそすがすがしいな)
 ハヤブサがそうやって、覆面の下で笑いをかみ殺していると、それまで黙って下を向いていたナディール姫が、突如として声を張り上げていた。

「お義母様!! いくらお義母さまでも失礼です!! ハヤブサ様は、決してそのように言われて良い方ではございません!!」

「んまあ!! ナディール……! あなたは王后で、あなたの『親』に当たる私に、逆らおうというの!?」
 全く予想だにしていなかったその反撃に、王后がわなわなと震えている。しかし、ナディール姫も、一歩も譲らなかった。
「親であろうと大后であろうと、他人をそうやって意味もなく見下してはなりません! これは、我ら王族の中で受け継がれている、大切な『教え』ではありませんか! それをないがしろにするなんて────!」

(え、ええと……。この事態って、もしかして俺が原因か? 俺が悪いのか?)

 突如として始まってしまった親子喧嘩を前に、ハヤブサは目が点になってしまっていた。
 自分としては、王后に『馬の骨』と言われたからと言って、傷つくことはない。王后の言葉など、自分にとってはその辺のカエルの鳴き声と大差ないから、気にも留めないし、傷つきようもないのだ。
(シュバルツ辺りにそうやって罵られたら、立ち直ることもできないだろうがな……)
 そう感じてハヤブサは苦笑する。
 大切な人に、大切に思われていたなら、それでいい。
 それ以外は、割とどうでもいいのだ。
(しかし、この事態……。どう納めればいいのだろう……)。
 ナディール姫と王后が言い争っている状態を、放っておいていいとも思えないが────
(かといって、俺が口を挟むのもなぁ……)
 有効な手段が思いつかないから、ハヤブサは途方に暮れてしまう。
 本当に、こういう時にうまく立ち回れない自分に、少し自己嫌悪を感じる。
 やはり自分には、こういった『ボディーガード』の類の仕事は向いていないのではないか────そう思ってしまう。

「お待ちください! 王后様! 姫様!」

 その時、それまで黙って下を向いて跪いていたイガールが、声を上げた。

「何事じゃ? イガール」
 カライ内大臣がイガールに振り向くと、彼は顔を上げ、一歩前に進み出ていた。
「恐れながら申し上げます。どうか、そこにいるハヤブサ殿と私で、『試合』をさせてほしいのです」

「試合じゃと?」

 かなり驚いたように、カライ大臣は聞き返す。イガールは、腹を痛そうにしながらも、頷いた。
「聞けば、ハヤブサ殿は、姫様をすでに守ることに成功し、姫様の信頼も、かなり得られているご様子。私と致しましても、ハヤブサ殿の腕を測りたいのです」
「イガール………」
 ナディール姫も、この実直な隊長の言葉に少し驚く。
 珍しいこともあるものだと思った。
 彼が、自ら進んで、他人と剣を合わせようとするなんて。
「城の護衛を任されている、騎士隊長としてお願いいたします。ハヤブサ殿の腕を把握することは、皆様にとっても、私の任務にとっても必要なことだと思いますので────」

「……………」

 ハヤブサは、腕組みをしながらこの騎士隊長の言葉を聞いていた。
 確かに、あいさつ代わりに軽く腕を披露することは、ここの人間の信用を得るためにも、インパクトを与えるためにも、ある程度必要な措置ではあるのだろうが────

(姫の信用はすでに得ている。そこまでする必要はあるのか?)

「ハヤブサ殿、どうであろうか」

 考え込んでいるところに、イガールに声をかけられて、ハヤブサははっと我に返った。
 イガールの方に視線を投げると、彼は懸命に縋るような眼差しで、こちらを見ている。
(引き受けた方がいいのか………)
 ハヤブサは、何かあきらめにも似たような心境に襲われていた。宮仕えとは、なんと厄介なものなのだろう。

「俺の方は構わない……」

 とりあえず、ここにいる大人を全員殴りたい。そういう衝動を覆面の下に隠しながら、ハヤブサは答えていた。
「王后様は……?」
「ま、まあ、イガールがそう言うのなら………」
 イガールの問いかけに、王后もようやく文句を言うことを引っ込める。彼女の口を封じ込めることに成功しただけでも、この戦いを引き受ける甲斐がある、というものなのだろうか。
「では、話は決まりましたな」
 カライ内大臣が、粛々と言葉を紡ぐ。
「王にも話を通してきます。この戦いの結果いかんで、ハヤブサとやらの処遇を決めるとしましょう。よろしいですかな? 王后様、姫様」
「いいわ」
「分かりました。内大臣」
 王后と姫がそれぞれ頷いたのを確認してから、カライ内大臣は一礼して踵を返した。

「ノゾム、行きますよ」

 王后に呼びかけられた少年は、びくっと身を強張らせる。しばし彼は、ナディール姫に縋りつくようにつかまっていたが────
「ノゾム!!」
 大后に強く呼びかけられて、彼は「はい」と、あきらめるように返事をして、彼女のもとへと歩を進めた。
「ナディール、あなた……随分とその男に入れあげているようだけど、せいぜい恥をかかないようにすることね」
 チクリとナディールに向かってそう言った大后であるが、姫が顔色一つ変えずに礼をしたのを見ると、「なんてかわいげのない『義娘』なのかしら!」と、嫌みを言いおいて、去っていった。
(いや、いろいろ問題があるのは、お前の方じゃないのか?)
 ハヤブサはその後姿を、かなり呆れながら見送っていた。

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