農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 18

<<   作成日時 : 2017/01/22 00:23   >>

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 城から出て、馬車で移動していく。石畳の道を山に向かって進んでいくと、その裾野に、コロッセオのような建物があった。
(ずいぶん、古い建物だな……。いつの時代に建てられたものだろう)
 いろいろと、自分の中の学術的好奇心が疼く。もしも時間ができれば、この国を本当にゆっくり観光したいと、ハヤブサは思った。
 しかし、今は残念ながらそれどころではないので、気持ちを切り替える。
 しばらく待っていると、イガールを乗せた馬車が到着した。中から、武装したイガールとカライ内大臣がその姿を現す。
「イガール………!」
 心配そうに走り寄るナディール姫に、イガールは優しく微笑み一礼をすると、ハヤブサの方に向き直った。
「ハヤブサ殿……。よく、受けてくださった。よろしくお願いいたします」
 そう言って、穏やかに挨拶してくるイガール。武装したその手には、巨大な剣が握られていた。
(大剣使いか……。まるで、斬馬刀のような豪剣だな……)
「身体の方は、大丈夫なのか?」
 問うハヤブサに、イガールは軽く苦笑した。
「薬を飲みました……。大丈夫です」
 そこに、闘技場の方から司祭然とした男が歩み寄ってきた。そして、厳かに口を開く。
「二人の戦士よ……。よく来た。戦士はこちらの方へ」

「待て」

 案内しようとした司祭に、ハヤブサが待ったをかけた。
「俺が戦いに出ている間、姫の『護衛』から外れざるを得ないのだが……」
「─────!」
「あ…………!」
 ハヤブサの言葉に、イガールとナディール姫が、同時に息をのむ。
「彼女の安全を、確保する手段はあるのか?」
 ハヤブサにしてみれば、元よりこの戦い自体、あまり気乗りしないものだった。
 それに、この戦いを見たいと強く望んでいたのが、大后だというのも、ハヤブサの中では引っかかっている。
 だから、この口実を盾に、彼女の安全が確保ができないのなら、姫と二人で帰ってもよかったのだが────

「なるほど、確かに一理ありますな」

 ハヤブサの懸念に、カライ内大臣が答えた。
「では、姫様は特別に、王の御傍でこの戦いをご覧になっていただきましょう」
「……それが、何か対策になるのか?」
 疑問を示すハヤブサに、イガールが答えた。
「ハヤブサ殿……。我がユリノスティ王国の民にとって、『王』の存在は絶対なのです」
 彼は説明する。『王』の存在は絶対であるが故に、それに対して暗殺を企てる国民は、皆無に近いのだと。
(国民が暗殺を企てるのなら、多少はその手段は有効かもしれないが────俺みたいな外国からの暗殺者が来ていた場合、その理屈は通用しないと思うがな)
「………………」
 そう感じたが故に、ハヤブサは難しい顔をして沈黙を貫く。そんなハヤブサに対して、カライ内大臣が口を開いた。
「もちろん、我らの王に対する警護も、万全を期します。それにハヤブサ、王后やイガールのみならず、我らも強く望んでいます。『貴方の剣の腕を見てみたい』と」
「─────!」
「大事な姫様の護衛を任せるのです。そう思うのは、当然でござろう」
 驚くハヤブサに、さも当然だと言わんばかりに、カライ内大臣は言葉を続ける。
「期待していますぞ……。『龍の忍者』とやら」
 その一言に、ハヤブサはハッと息をのむ。

「つまりこれは……俺の『採用試験』も兼ねているわけだな………。なるほど……」

 姫の信用は得ているとはいえ、まだほかの人間たちにとっては、大后の言葉を借りるのなら、『どこぞの輩ともわからぬ馬の骨』で、あるのだ。この戦いは、避けて通れぬものと、悟る。
 ハヤブサは、小さく息を吐くと、その姿勢を正した。

「承知した。では、案内してもらおうか」

 司祭然とした男は、厳かに頷き、踵を返す。イガールとハヤブサも、そのあとに続いていた。
(イガール……。ハヤブサ様………)
 その去っていく後姿を、ナディール姫は心配そうな眼差しで見つめ続けていたが、
「姫様。どうぞこちらへ」
と、カライ内大臣に声をかけられて、はっと我に返った。
「分かりました。参ります」
 シャラ……と、衣擦れの音を立てて、ナディール姫もまた、歩き出していた。


 コロッセオの中に入ると、観客席はすでに、見物のための兵士たちで埋め尽くされていた。観客の地響きを伴った歓声に、二人は迎え入れられていた。その慣習の中には、当然トマスとモガールの姿もあった。
「お、ハヤブサ殿が出てきた!」
「だ、大丈夫かな……。ハヤブサ殿……」
 不安そうに見つめるモガールの肩を、トマスが軽く小突く。
「大丈夫だよ! あんなに強い人、俺見たことないし」
「それはそうだが、イガール隊長だって、相当強いらしいぞ?」
「そうなのか?」
 モガールの言葉に、トマスが驚いたように振り向く。それに対してモガールも、「いや、俺も噂でしか聞いたことがないんだけど」と、念を押した。
「なんでも隊長は、うちの国でも数少ない、実戦の経験がある人らしい」
「本当か?」
 驚くトマスに、モガールが頷く。
「えっ、でもうちの国って───」

「始まるぞ!!」

 誰かの叫び声に、二人の会話も中断される。皆の視線は闘技場の二人へと、注がれていった。

(姫はあそこか………)

 闘技場の中で、ハヤブサがまず確認したことは、王と姫の所在だった。闘技場の観客席の中央部分に、ボックス席のようなものがあり────王族の人々は、皆そこに集まっているようだった。
(心配はないと思うが、この状況……。やはり、少し危険だな……)
 自分が彼女を守ろうとするには、少し距離がありすぎる。そして、この歓声────これでは、いくらハヤブサの耳が超人的に良いと言っても、彼女を狙う狙撃手の音を、聞き洩らす可能性が大いにあった。

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