農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 20

<<   作成日時 : 2017/01/23 15:07   >>

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 なんという膂力。
 突進力─────

 ズル、と、ハヤブサの踏ん張る後ろのほうの足が、半歩下がる。

「うおおおおおおおっ!!」

 普段のイガールからは考えられないほどの、獣のような激しい咆哮。大剣に伝わる力が、さらなる加速をする。そのまま彼は、大剣ごと、ハヤブサをさらに後方へと押し込もうとしたのだが。

 ガッ!!

 わずかに生じた隙を、ハヤブサに突かれたのであろう。イガールのほうが逆に、後方へと弾き飛ばされていた。
(どうする?)
 痛みに呻くイガールを見つめながら、ハヤブサは思考を回転させる。
(この戦い─────どうやって、けりをつける?)

 イガールを殺したくはない。殺してはいけない。
 彼は敵ではないのだから。
 だが、この状況───生半可な決着のつけ方では、誰も納得などしてくれないだろう。

 どうやってしのぐ?
 イガールを再起不能に陥れずに、どうやってこの状況をしのげばいいのだ?

「……どうした……。ハヤブサ殿……!」

 よろめくように、イガールが立ち上がる。

「隙だらけの私を討ってこぬとは……。手心を加えられたか……?」

「……………!」
「……手加減は無用。本気で参られよと、申したはずだが?」
 そう言って、イガールが剣を構える。ハヤブサは内心舌打ちをしていた。
(冗談ではない!)
 コロッセオの観客に、ぐるりと周囲を囲まれたこの状況。姫の暗殺を狙う者が、今この場にいない保証はないのだ。
 誰が自分の戦いを見ているのかもわからない状況で、手の内のすべてを晒すことなど、とてもではないが出来なかった。
「はあああああああっ!!」
 またも、イガールが突進してくる。思考をまとめることもできないままに、ハヤブサはそれを剣で受けた。ギャリィッ!! と、派手な火花を散らして、受け止められる大剣。ハヤブサは、その力を利用して、絡めとるように弾き返す。しかし、イガールのほうも負けてはいない。さらに重ねるように、猛然と大剣での突きのラッシュをハヤブサに仕掛けてくる。
「うおおおおおおおっ!!」
「りゃああああああっ!!」
 裂帛の気合とともに、舞い上がる粉塵。
 飛び散る火花。
 踏み込む足音とともに、響く斬撃音───

「す、すごい……!」

 観客であるトマスとモガールも、いつしか息をすることすら忘れそうになるほどに、二人の戦いに魅入られていた。しかし、二人の間で行われている太刀の応酬が早すぎて、トマスもモガールも、もう戦いの正確な状況をすることは、とっくの昔に放棄している。
「ど、どっちが勝っているんだろう……?」
「わ、わからない……」
 ただ二人ともが強く願っていた。
 隊長もハヤブサ殿も、どちらも無事でいてほしいと。

 ガキィッ!!

 もう何回響いたかわからない派手な金属音とともに、二人の身体が左右に分かれる。
「……………」
 ハヤブサは剣を中段に構え、静かに佇んでいたが、イガールのほうは肩で息をしていた。
「隊長……!」
 イガールの方がもはや劣勢であること、誰の目にも明らかになりつつあった。

 コロッセオの上空には、いつしか暗雲が垂れ込め、唸り声のような雷鳴が、不吉に鳴り響いていた。それと同時にポツ、ポツ、と、天から雨が降りはじめている。
(もう十分だな)
 カライ内大臣は悟っていた。
 これ以上のこの戦いには、国のためにも姫のためにも、何の意味も為さないと。
 我が国一番の剣の使い手であるイガールと、互角に渡り合った龍の忍者。
 その腕は、これで十分証明されたと言ってよかった。

「皆の者───」

 それ故に、カライ内大臣は立ち上がり、この戦いに終わりを告げようとしたのだが。

「お待ちなさい」

 怜悧な声が、カライ内大臣の行動に待ったをかけた。
「まだ戦いは終わっていないではないですか。この戦いを止めること、まかりなりません」
「そんな────! 大后様!!」
 カライ内大臣が、悲鳴のような声を上げる。
「恐れながら、これ以上の戦いは無意味です。あの者の技量を図る、その目的は達した! 止めさせないと、どちらも無事ではすまなくなってしまいます!」
「でも、『戦士』が剣を構えているのですよ?」
 大后が、「だからどうしたの」と言わんばかりに反論をした。
「イガールにはきつく言い含めてあります……。どちらかが倒れるまで、闘技場を出ることは許さないと」

「そんな!! お義母様!!」

 これにはナディール姫もたまらず立ち上がってしまっていた。
 イガールのような真面目な人に、そんな命を下したというのなら、彼は本当に───己が倒れるまで戦い続けてしまうだろう。
「お座りなさい。ナディール」
 大后はぴしゃりと押さえつけるように言い放つ。
「これは貴女のためでもあるのです。勝手な行動は───」

「どこが私のためなのですか!? イガールもハヤブサ様も、失ってはならない人たちです!! これ以上の戦いは無意味です!!」
 叫ぶや否や、ナディール姫はボックス席から走り出していた。もちろん、二人の戦いを止めるためだった。

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