農家の嫁の日記

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災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 戦う君に、花束を 25

<<   作成日時 : 2017/01/28 00:24   >>

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「申し訳ない!! ハヤブサ殿!!」
「イガール殿……」
「あの瞬間、私や姫様を、守ってくださったのでしょう!?」
 ここで、廊下に走りこんできたナディール姫も、イガールとハヤブサのそばに近寄ってきた。
「あなたが咄嗟にああしてくれなければ、私も、そして姫様も死んでいた……! 最悪、私は姫様を殺していたかもしれない……!」
「イガール………」
 ナディール姫は、頭を下げ続けるイガールに声をかけようとする。しかし、それよりも早く、イガールの方が口を開いた。

「姫様を殺してしまっていたら、私はたとえ助かっても、もう、生きてはいないでしょう………!」

「あ…………!」

 彼の言葉に、ナディール姫は、胸にナイフを刺されたような衝撃を受ける。自分がどれだけ、無謀なことをしでかそうとしていたか、今更ながらに気づかされてしまって、彼女は唇をかみしめていた。
「本当に……! 申し訳なかった! ハヤブサ殿……!」
「イガール!! ごめんなさい!!」
 彼女はたまらなくなって、頭を下げ続けるイガールの前に走り寄り、その手を握っていた。
「迷惑をかけたのは私の方です! 私が軽はずみな行動をしたから─────!」
「いえ、姫様……! 私の方こそ、姫様に気づかずに……!」
「ハヤブサ様……! イガールは何も悪くないのです! お義母様にきつく命じられて、あんな戦いを───!」

「………だろうな」

 ハヤブサは、深いため息とともに口を開いた。
「俺もお前も、『役目』を互いに果たしただけに過ぎない。だから、気にする必要はない」
「しかし、ハヤブサ殿……!」
「それに、この国に、お前ほどの剣の使い手がいる、ということを知れただけでも、俺にとっては収穫だった」
「……………!」
 ハヤブサに剣の腕をほめられたのがよほど意外だったのか、イガールは少し、顔を赤らめていた。
「ここは、長く戦争をしていない国だと聞いている。それなのに、その腕前─────どこか、武者修行にでも出ていたのか?」

「ここに来るまでは、『傭兵』をしていたんです」

 ハヤブサの問いに、イガールは柔らかい笑みをその面にたたえながら答える。
「あちこちの雇われ兵をして、流れ流れてこの国に来ました。城の前で行き倒れていたところを、ガエリアル王に拾っていただいて………」
「イガールは、本当によく働いてくれたのよね」
「与えられた任務を忠実にこなしていただけです」
 そのまま、ほのぼのと微笑みあう主従。ハヤブサは、はあ、と、ため息を吐いていた。
 こういうのは嫌いではないが、なんだか毒気が抜かれてしまう。
 毒気が抜かれると、ゆるんでしまうから注意が必要だと、ハヤブサは感じていた。

「イガール隊長! こちらにいらしたんですか!?」

 兵士たちがわらわらと、彼の元に走り寄ってくる。イガールは立ち上がって、それを出迎えていた。
「隊長! よくぞご無事で……!」
「ハヤブサ殿も……! よくぞ、われらの隊長を助けてくださった……!」
「この通り、御礼申し上げます!」
「隊長! お怪我はございませんか!?」
 兵たちは口々に、イガールを案じたり、ハヤブサに礼を言ったりしている。彼が兵たちにとても慕われているさまが、見て取れた。
「私は平気だ。それよりも、ハヤブサ殿の方が────」

「俺も平気だ」

 ハヤブサはぶっきらぼうにそう言い放つ。
 イガールが案じてくれるのはうれしいが、まだ彼に「怪我をしている」といった弱みを見せる気にはどうしてもなれなかった。
 何故なのだろう。
 ここにいる人たちの善良性は、疑う余地もないのに──────

「……………」
 ナディール姫は、ハヤブサの言葉に瞬間眉を顰めるが、少し思うところがあったので、その場では口を開かなかった。

「それよりもお前たち、どうしたのだ? 持ち場に戻るよう指示があったはずだが?」
「そ、それが隊長……」
「詰所の方に、助けを求める市民が来ていて……」
「なんだと?」
 イガールの顔色が、少し変わる。
「どういう事態だ? 緊急ならば───」
「いえ、緊急といえば、緊急なような、そうじゃないような気がするんですけど」
「え?」
 きょとん、とするイガールとナディール姫に、別の兵士が声をかけてくる。

「助けてほしいのは、その………『猫』なんだそうです」

「猫?」

 二人の頭の中に、同時に「ニャオン♪」という、可愛らしい猫の鳴き声が鳴り響く。
「子猫が、ものすごく高い木の上に登っちゃったみたいで」
「自力では、どうしようも、降りられなくなってしまったようで」
「今、詰め所にいた兵士たちが、助け出そうと頑張っているんですけど、これが、なかなか……」
「苦戦しているみたいで………」
 それを聞いたイガールは、少し苦笑したが、すぐにその顔を引き締めた。
「よし、行こう。その子猫は、救出してやらなければな」
 それでは、と、イガールは一礼をしてから、コロッセオから出ていく。後には、ハヤブサと姫だけが残っていた。
「………………」
 イガールの後姿を、姫が見送っている。
「………………」
 その横顔を見ながら、ハヤブサは思った。
(彼女は、イガール殿に、何か特別な感情を、抱いているのかもしれないな………)
 自分は、そういう色恋沙汰にさとい方ではないので、確信が持てるわけではないが、彼女がしているその眼差しには、多少なりとも覚えがあった。
 自分も、愛おしいヒトを見送るとき
 あんな眼差しをしているような気がするから────

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