農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 27

<<   作成日時 : 2017/01/30 00:05   >>

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「……ほれ、できたぞ。……まったく、鍛えておるとはいえ、あんまり無茶はせんようにな」
 包帯を巻き終わった老医師が、やれやれ、と、ため息を吐く。ハヤブサは、軽く頭を下げていた。
「………しかし、まるで『筋肉の鎧』じゃな……。どれだけ鍛えたら、そうなるんじゃ……」
「……………」
 ハヤブサは、それには答えずに、黙々と服を着ている。
(寡黙者同士……。会話が弾まないことこの上ないわね……)
 そんな様子を見ながら、横にいた看護士は苦笑するしかなかった。
「先生、ありがとう……。お世話になりました」
 そう言って、頭を下げるナディール姫に、老医師は眉を顰めながら声をかける。
「お姫さん、あんた………」
「はい?」

「………ちゃんと飯、食べてるか?」

「…………えっ?」

「前テレビで見た時よりも、痩せてないか?」
「あらやだ、姫様! ダイエット!?」
 隣で聞いていた看護士や、周りの女性たちが、ものすごい勢いで食いついてきた。
「だめよ〜! 姫様! 貴方まだ19歳でしょ!?」
「ダイエットなんてしないで、しっかり食べないと!」
「どこか体調悪いの!?」
「えっ? ダイエットなんかしてないんですけど……!」
 慌てふためくナディール姫に、周りの女性たちがうらやましそうにため息を吐く。
「じゃあ、太らない体質なのかしら?」
「いいわね〜。私なんて、水を飲んだだけで太るのに……!」
 そう言って、女性たちは明るく笑い合う。ナディール姫も、その中で楽しそうに笑っていた。

「じゃあ、お世話になりました」

 ハヤブサの治療を終えて、ナディール姫は帰ろうとする。
「もう帰っちゃうの?」
「夕飯、うちで食べていくかい?」
 女性たちは口々に彼女を引き留めようとしたが、「夕方の執務があるから」と、少し名残惜しそうに断っていた。
「気をつけて帰るんだよ!」
 看護師の言葉に、ナディール姫は元気に手を振って応えていた。その一方で、診察室では、老医師が深いため息を吐いていた。
(確か、王には持病の類などはなかったはずなのだがな……。急に倒れたのが少し引っかかる……)
 だが、健康体に見える者でも、思わぬ病魔にやられて、急に倒れるのもよくある話だ。だから、こちらの気の回しすぎだろうが、老医師は少し気になっていた。
(あの、『お付きの者』とか言っていた、今日診た患者のことといい………少しやせた姫といい……何か、よからぬことに巻き込まれておらねばよいが……)
 自分のこの物思いが、『杞憂』の類のものであってほしい。老医師はそう願いながら、ハヤブサのカルテをデスクの上に置いていた。

「あんまり時間がないから急ぎますよ。走れますか?」
 姫の問いかけに、ハヤブサは「問題ない」と、返す。
「では、行きます!」
 ドレス姿の姫が、ダッシュを開始する。ハヤブサももちろん、そのあとに続いていた。
 夕刻近くになり、姫たちが走り抜ける市場には、夕飯向けのおいしそうな総菜が、軒先に並んでいる。肉が焼ける香ばしいにおいや、果物の甘い匂いが、鼻腔をくすぐってきた。
(お腹すいたな……)
 走り抜けながら、ナディール姫は自身の空腹を、猛烈に意識する。今日はいろいろありすぎて、ろくに食事らしい食事も、とれていなかったからだ。
 しかし今は、時間がないうえにドレス姿。こんな格好で市場で買い食いでもしようものなら、義母の機嫌をものすごく損ねてしまうだろう。
 その八つ当たりが、自分に来るのならまだいい。だがそれが、ノゾムやほかの人たちに、牙をむいてしまったら。
 それを考えると、ナディール姫はものすごく陰鬱な気持ちになる。やはりだめだ。周りの人たちをつらい目に遭わせるぐらいなら、自分が空腹に耐える方が、まだましだった。
「……………」
 それにしても、今日は肉のたれの匂いが、一段と強烈だ。まるで、後から追いかけてきているような─────
 そう感じたナディール姫は、なんとなく後ろを振り返る。
 そして─────

 絶句した。

「ん? どうした?」

 何故ならそこには
 大量に、肉やら果物やらパンやら飲み物やらを抱えた

 リュウ・ハヤブサの姿があったからだ。

「どうした? 何か用か?」
 ハヤブサはそう言っている間にも、タレのついた焼き鳥の串肉のようなものを、一本ぺろりと平らげている。
「え………? え…………?」
 あまりにも意想外のものを見てしまって。ナディール姫の足が止まる。そのまま呆然と口を開けてみている間にも、ハヤブサはサンドイッチを、まるで飲み込むかのように平らげていた。
「ど、どうしたんですか? それ………」
「ああ、この食料のことか? その辺の店で買ったんだ」
「え………?」
「『血』が足りてなかったんでな」
 ハヤブサはぶっきらぼうに、そう言い放つ。
「自分でエネルギーを補充していたところだ。お前は俺のことなど気にせず、自分の用を果たしてくれ」
「え、えっと……。でも、あの………!」
「どうした?」
 ナディール姫がまだ納得していないように感じたので、ハヤブサは問い返した。すると、彼女は素直に、疑問を口にしていた。
「い、いつそんな、買い物する暇なんて、あったんですか………?」
 自分たちは確かに、全力で市場を走り抜けていたはずだった。
 とても商品を見たり、買い物をしたりする余裕なんて、なかったはずだったのに。
「代金は、ちゃんと置いてきているぞ」
 ハヤブサはこともなげに言う。重視しているのはエネルギーの補給だ。だから、手っ取り早く食べられそうな目標を見つけたら、ハヤブサは迷わずそれを手にしていた。その際に、屋台に代金を置いてくることも忘れはしなかった。
 ただ、普通に店主と交渉をして、品物を手に入れ、代金を払うといった、一般的なプロセスを経ていないので、店主の方が
「泥棒された!?」
「ん? このお金は何だ?」
と、思うかもしれないが、今は非常事態なので、その辺は勘弁してほしい、と、ハヤブサは思っていた。

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