農家の嫁の日記

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災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 戦う君に、花束を 28

<<   作成日時 : 2017/01/30 16:33   >>

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(いいなぁ……)
 ハヤブサが持つ数々の食料品に、ナディール姫の食欲は素直にそそられている。
「ん? どうした?」
 あまりにもじっと姫からみられるので、ハヤブサの方が、ぎゃくに、少し居心地の悪さを感じていた。
「……まさか、ほしいのか?」
「い、いいえ!」
 ナディール姫は、あわてて首を振る。
「じ、時間もないですし、こんな格好で立ち食いなんて………!」
 そこまで言った瞬間、ナディール姫の腹の虫が「グ〜〜〜〜〜〜〜!」と、大音響を奏でる。
「そんなはしたないこと…………! すみません欲しいです」

 ズルッ と、ハヤブサはこけそうになった。

「朝からほとんど、食事らしい食事ができていなくて………」
 消え入りそうな声で、言い訳めいたことを話すナディール姫の姿に、ハヤブサはやれやれ、と、ため息を吐いていた。
「………で? どれが欲しいんだ?」
 まだいくつか持っている食料品を、ずいっと彼女の前に差し出す。
「えっと………」
 ナディール姫は、そのうちの一つに手を伸ばそうとする。しかし、ためらいがちに逡巡していたその手は、すっと引っ込められてしまった。
「どうした? ほしくないのか?」
 怪訝そうに首をひねるハヤブサの前で、ナディール姫は少し悲しそうな顔をして、下を向いてしまった。
「やっぱりダメ……! この格好で立ち食いなんかしたら、お義母様のご機嫌を、損ねてしまうから………」

「─────!」

 ハヤブサは、少しびっくりしたようにナディール姫を見つめていたが、やがて、はあ、と、ため息を吐いていた。
「………部外者の俺が言うのも何かもしれないが、お前は少し、あの大后に気を使いすぎなのではないのか?」

「……………」

「いちゃもんをつけたい奴というのは、お前がどんなことをしていても、言いがかりをつけてくるものだぞ」

「…………!」

「気にせず、食いたいのなら食え! 食事がとれるときに取るのは、サバイバルの基本だ」

「サバイバル………」
 ハヤブサの言葉をじっと聞いていたナディール姫であるが、やがて、ぐっと握り拳を握り、前を向いた。
「そうですね! 食事はとれるときに、取っておかなくっちゃ!」
 そう言ってナディール姫は、明るく微笑む。そうなると、周りの雰囲気が、ぱっと花が咲いたように華やかになるから、ハヤブサは本当に不思議だと思った。
 やはり彼女は、こうやって明るく笑っている方が、よく似合う。
「よし! では、どれが食べたい?」
 もう一度、ハヤブサは食料品を、ナディール姫の前に差し出す。
「じゃあ、これとこれ!」
 彼女が指示したホットドックとジュースを、ハヤブサは渡す。すると、ナディール姫はそれに豪快にかぶりついていた。よほどお腹がすいていたのだろう。勢いよくバクバクと食べているさまは、とても一国の王女様とは思えない。
「おいしい……! やっぱり、マルティンさん所のホットドックは最高!!」
「……まさか、どこの店のホットドックかわかるのか?」
 これにはハヤブサの方が驚いてしまう。ナディール姫は、えへへ、と、笑いながらうなずいた。
「そりゃあ、伊達に食べ歩きはしてませんからね! ここの市場の知識に関しては、誰にも負けませんよ!」
「そうか……」
「あ! ねぇ! 後もう一軒だけ、どうしても食べたいものがあるのですが、そちらに寄ってもいいですか?」
 そう言って懇願してくるナディール姫のほっぺには、レタスの切れ端がついている。だがそういう彼女の顔も、悪くはないな、と、ハヤブサは感じていた。


 城に帰ると、案の定、カライ内大臣の、顔に怒筋を張り付けた表情が、出迎えてきた。
「姫様………」
 声音こそ静かだが、ものすごく怒っているのが伝わってくる。
「ごめんなさい! すぐ着替えて、執務室に行きま〜す!」
 部屋までナディール姫は猛ダッシュをする。
 部屋に付くと、やはり、難しい顔をした侍従長と、心配そうな顔をしたロゼッタが、出迎えてくれた。
「姫様……! どこに行かれていたのですか? お着替えもなさらずに………」
「姫様……! 心配していました……!」
「ごめんなさいね。侍従長、ロゼッタ……。すぐ着替えるから、手伝ってくれる?」
「かしこまりました。姫様」
「キャッ!! 姫様……! 血が………!」
 着替えを手伝おうと、ドレスに触れたロゼッタが、そこに血がついているのを見て、悲鳴を上げていた。
「ああ、大丈夫。これは、私の血ではないのよ。私を助けてくれた『護衛』の者で────」

「へっくしょん!!」

 そのころ噂になっているハヤブサは、廊下でくしゃみをかましていた。部屋では姫の着替えているのだ。さすがにそんな所まで、べったりとくっついている訳にはいかない。

「その方の治療をしていて、遅くなりました。……本当に、ごめんなさいね」
「なら、いいですけど……」
 侍従長が難しい顔をしている横で、ロゼッタは少し涙目になっている。
「そ、その方は大丈夫なんですか………?」
「ええ、大丈夫ですよ。お強い方ですもの」
「よかった……! よかったですねぇ、姫様……!」
 ロゼッタが、心底うれしそうな表情をする。ナディール姫も、「ええ」と、頷いていた。
「姫様、今度こそ………!」
「えっ?」

「今度こそ、その『護衛の方』が、長くいてくださるといいですね……! このところ、すぐ行方不明になったり、辞めていかれる方ばかりでしたから……!」

「……………」
 ロゼッタの言葉に、ナディール姫の表情は一瞬曇る。だがすぐに、「そうね」と、笑顔で頷いていた。

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