農家の嫁の日記

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災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 戦う君に、花束を 29

<<   作成日時 : 2017/01/31 15:50   >>

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「お待たせしました!」
 ナディール姫が執務室に走りこむと、すでに机の上には、決済待ちの書類が山と積まれていた。
「うそでしょ!? こんなにあるの!?」
 思わず悲鳴を上げるナディール姫に、カライ内大臣が、ぴしゃりと現実を告げる。
「夢でも幻でもございません。紛うことなき、圧倒的現実でございます」
「…………!」
「だから私は申し上げたはずですよ。『今日の街歩きはおやめください』と」
「うう…………」
 グッと縮こまるナディール姫に、カライ内大臣は、さらにちくりと追い打ちをかける。
「これでも急ぎの書類を優先させておるのです。それらの書類は、何としても今日中にお目と押し頂きますように!」
「は……はい…………」
「各部署の担当の者は、隣の部屋に待機させております。決済の際に質問がございましたら、声をかけられますよう」
「……………」
 ナディール姫は、最早、気の毒なほどたじたじになっている。それでも彼女は大きなため息を一つ吐くと、執務室の椅子に座った。早速、書類の一枚目に目を通している。
「……………」
 それを見届けたハヤブサは、姫の邪魔にならないよう、執務室の壁際に、静かに陣取っていた。

 部屋にはしばらく、ナディール姫の、ペンを走らせる音と、ハンコを押す音が響く。ハヤブサがそれを見守っていると、カライ内大臣がそばに寄ってきた。

「ハヤブサ殿………少し、よろしいか?」

 姫の死角になるように、二人は少し場所を移動する。そこで、カライ内大臣が、改めて声をかけてきた。
「ハヤブサ殿………先ほどは、姫のみならず、王や大后までもお守りくださり、ありがとうございました……! このカライ、この通り頭を下げて御礼申し上げます……!」
 これには、ハヤブサの方が少し面食らってしまった。
「いや別に……。俺は単純に、自分の『仕事』をしただけだ」
 腕を組んで、ぶっきらぼうにそう言い放つ。いちいち礼を言われることでもないだろうと思った。
 それでもカライ内大臣は、頭を振って、言葉を続けた。
「いえいえ、これで国がどれだけ助けられたかわかりません。やはり、アーサー殿を頼って正解だった……」
「……………」
 アーサーと、このカライ内大臣は旧知の仲だと、ハヤブサは、アーサー本人から聞いている。だから、彼の口からアーサーの名前が出てきても、ハヤブサは特段驚かなかった。
 ただ、このカライという男だけは、城の中で信用してもよさそうだと、ハヤブサは思った。
「ハヤブサ殿……。このようなこと、本来ならばあなたのような赤の他人に聞くことではないかもしれぬ。だが……率直な意見をお聞かせ願いたい」
「?」
 目線をちらりと走らせると、カライ内大臣は、まっすぐハヤブサの方を見つめてきた。

「ハヤブサ殿は……この国と、姫君のこと………どう見立てられた?」

「………………」
 カライ内大臣がどのような答えを求めているかは、残念ながら見当もつかない。だからハヤブサは、感じたままを口にすることを決断していた。
「………観光にも適した、いい国だと思う。姫も、年若いが、今のところ、よく責任を果たしているとみる。……しかし、この城の警備はザルだな」
「…………?」
 怪訝そうに眉を顰めるカライ内大臣に、ハヤブサは言葉を続けた。

「姫の部屋からここに来るまでの間、姫は3回刺客に襲われている」

「な────!」
「3回とも未然に防いだ。だから、彼女は襲われたことなど気づいていない。一人は仕留めることに成功したが………」
 残り二人には逃げられてしまった。姫の警護として彼女のそばから離れられない以上、ハヤブサも必要以上に刺客を深追いすることはできなかった。
「そんなことが………!」
 カライ内大臣が呆然とつぶやく。ハヤブサは腕を組んだまま、一つため息を吐いた。
「もう少し、警備体制を強化した方がいい。刺客に入り込まれすぎだ」
「…………!」
 カライ内大臣は、低く呻いた。それから、深々とため息を吐いていた。
「………いったい誰が、姫様のお命を、かくも執拗に狙っているのであろう……」
「心当たりは?」
 ハヤブサは、念のために問うてみる。すると、カライ内大臣は、ものすごく複雑な表情をその面に浮かべていた。
「それが、分かりかねるのです……。『無い』というよりも、『有りすぎて』……………」
「……………」
「だが今────姫様を失うことは、この国にとってあってはならない事態です。ハヤブサ殿も見たでござろう? 姫が如何に、この国の民たちに慕われているかを………」
「………………!」
「その姫が、何者かの手によって誅殺されてしまえば、民たちが絶対に黙ってはいない。姫の敵を討て、真犯人を引きずり出せ、と、暴動が起きる。この国は二つに割れ、内乱の事態に陥ってしまう─────」
(確かに、そうかもな)
 姫を囲む民たちの笑顔を見て、ハヤブサもそう感じていた。今あの姫に何かあれば、民たちが絶対に黙ってはいないだろう。
「国としては、そのような事態は断じて避けたい。我が国は長きにわたり、『戦争』という厄災から免れてきました。これは、是が非でも続けていかねばならぬものと、私は考えておるのです」
 カライ内大臣の瞳に、強い意志が宿っている。ハヤブサは黙って聞き続けていた。

「しかし……我が国が内戦状態に陥ることを、望んでいる存在が数多くあることも、また、残念ながら事実です」

 カライ内大臣の額に刻まれた縦皺が、さらに深くなる。

「姫君は女性で、為政者となるには確かに若すぎる。しかし、民に慕われ、王となる資質は十二分に備えているお方だと、私は期待しておるのです。彼女ならばこの国を、平和に導いていけるでしょう」
「………………」
「ハヤブサ殿………! どうか、戴冠式まで姫様を……! 姫様をお守りくだされ……! これは、ガエリアル王の意思でもあるのです………!」
「案ずるな」
 ハヤブサは、短く答えていた。
「『仕事』はする。そのために、俺はここにいるのだから」
 ハヤブサとカライ内大臣がそんな話をしている間にも、ナディール姫は一つ一つの書類に、裁決を下す手続きをし続けていた。
 

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