農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 2

<<   作成日時 : 2017/01/05 00:19   >>

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「第一章」


「………………」
 目的地に向かう飛行機の中で、ハヤブサはアーサーの話と渡された資料を、反芻し直していた。
 今から向かう場所は、『ユリノスティ王国』────人口50万人にも満たない、小さな王国だ。


 ハヤブサはその日は珍しく、骨董で良い掘り出し物を手に入れていた。
 慎重に器に磨きをかけて、ショーケースの中にそっと飾る。その見映えと趣にうん、と、頷いているときに、店の出入口のベルが来客を告げていた。
「はい」
 接客のために顔を上げたハヤブサだが、そこに居る人物の姿を認めた瞬間、ハヤブサの面に貼り付いた仏頂面が、さらに険しいものになった。

「何だ。お前か」

 突き放すような声の響きに、店の戸をくぐったアーサーは苦笑してしまう。
「『何だ』は無いだろう。随分なご挨拶だな」
 がっしりとした体格に、刈り込んだブロンドの髪。それよりも少し濃い色の口髭を蓄えた男は、ハヤブサの機嫌を特に取ろうとするでもなく、ズカズカと店の中に入り込んできた。
「お前、客じゃないだろう。冷やかしなら帰ってくれ」
「そんなつれないことを言うなよ。客よりももっと、お前を儲けさせてやれるかもしれないのに」
「お前の持ってくる仕事は、ろくなものがない」
 そういってしかめっ面をひどくするハヤブサに、アーサーは声を立てて笑っていた。
「まあ落ち着け、龍の忍者。依頼を受けるにしても受けないにしても、とにかく話だけでも聞いてくれないか?」
「………………」
 アーサーにそう言われて、断る理由も見当たらない。ハヤブサは、話を聞くことを選択していた。


「リュウは、『ユリノスティ王国』を知っているか?」

「ユリノスティ王国?」
 アーサーの言葉に鸚鵡返しに答えながら、ハヤブサは自身の持つ情報を、頭の中で検索してみる。目的の情報は、すぐに出てきた。
「あの、海沿いの小さな王国か? それがどうした?」
 今時にしては珍しく、王政が営まれていて、その風光明媚な土地柄ゆえに、観光業で成り立っている、小さくて平和な王国────それが、ハヤブサのその王国に対する認識だった。
「そうだ。その王国だが……最近、どうもきな臭くなってきていてな」
 そういいながら、アーサーが少し難しい顔をする。
「これは最近の話だ。そのユリノスティ王国の地下に、レアメタルの豊富な鉱脈が発見されたんだ」
「─────!」
 アーサーのその言葉に、ハヤブサもハッと息をのんだ。豊富な地下資源の発見は、たいてい喜ばしい出来事ではあるのだが、それは同時に、莫大な利益を生むが故に、凄まじい争いの火種になってしまうものでもあるからだ。
 案の定ユリノスティ王国内ではその利益をめぐって、内紛が起きつつあるらしい。
「それでも王国を支配するシャハディ家の求心力はまだ強い。何とか国を一つにまとめて、表面上だけでも平和を保っていたのだがな………」
 ここでアーサーは、やれやれとため息を吐いた。
「国王であるガエリアル・ブル・シャハディ殿が、病に倒れてしまったらしい」
「な…………!」
「そこで、国が一気に傾きそうになったのを、その娘であるナディール姫が支えているんだ……。健気な話だろう?」
「それはそうかもしれないが………」
 ハヤブサはここで少し眉を顰める。ユリノスティ王国の抱える複雑な事情は把握したが、まだ肝心のアーサーの依頼内容が見えてこなかったからだ。
「……で? お前がここに来た目的の『依頼』って何だ?」
 だから、単刀直入に切り込んでみる。それに対してアーサーは、その面に満面の笑みを浮かべた。

「リュウ、俺が頼みたいのはこの『ナディール姫』の護衛だ」

「─────!」
 絶句して、息をのむハヤブサに向かって、アーサーは一枚の写真を投げてよこした。
 そこには金色の流れるような髪を無造作に一つにまとめ、軍の礼装のようなものをまとった少女の姿があった。大きな藍色の瞳が、少女をなお一層凛々しく印象付けていた。
「四六時中こんなかわいらしい娘と一緒にいられるんだ。悪い話ではないだろう?」
「あのなぁ………」
 ハヤブサは、ずきずきと痛む頭を抱えずにはいられなかった。
「なぜ、お前がこの王国の、こんな立ち入った事情に踏み込んで、俺にこんな依頼をしてくる? これは、他国の内政干渉に当たるのではないのか?」
「まあ、確かにそうかもしれないな」
 アーサーはそう言って、肩をすくめる。
「我が国にとって、この国の王位がどうなろうが、誰が莫大な利益を得ようが、直接的に関係があるわけではない。だから、放っておいてもいいのだが、我が国の立場的に、この地域で紛争が起きるのは困るんだ」
「……と、言うと?」
 低い声で問い返してくるハヤブサに、アーサーはあっけらかんと答える。

「答えは簡単だ。この国が面している海は、我々にとって非常に重要な物資の水路に当たる」

「……………!」
「それが、この地域に紛争が起きることによって、安全が確保できなくなったら困るんだ。この水路が使えなくなるということは、あらゆる物資の流通が遠回りを余儀なくされ、我が国の経済に、深刻な打撃を与えることになる」
 ハヤブサは思わず、大きなため息を吐いていた。
「そうか……。そういうことか……」
「それに、この王国のシャハディ家と、我が国の関係は非常に良好に保たれている。それが他の者に代わってしまったら、水路の使用にべらぼうな関税をかけられたり、最悪略奪の憂き目にもあいかねない。我が国にとって、シャハディ王政の倒壊は、デメリットの方が大きいんだ」
「なるほど……」
「俺がここに来た理由、納得してくれたか?」
 重たそうに写真に視線を落とすハヤブサに、アーサーは改めて声をかける。
「まあな……」
 ハヤブサは、眉を顰めながらも納得をした。
 確かにそうだ。
 義理や義侠心だけでは、結局のところ動かない。人も国も。
 己に対する明確なメリットが見えてこなければ、その重い腰を上げないものなのだ。

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