農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 4

<<   作成日時 : 2017/01/07 15:30   >>

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「ロバート・フィッシャーさん……」
 空港の検閲官は、提出されたパスポートと、目の前で佇む青年の姿を見比べる。パスポートにも不備がなく、写真と間違いなく同一人物だと確認した検閲官は、滞りなく入国手続きを進めていた。
「こちらには、どういう目的で?」
 問いかけに、青年は穏やかに答える。
「写真撮影と、戴冠式の取材です」
 青年の職業欄を確認したを確認した検閲官は、なるほどと納得した。この王国も、戴冠式が行われる日が近づいてきている。それゆえに、世界各国からそれを取材に来る彼のようなジャーナリストが増えてきていたからだ。
「なるほど、良い旅を」
「ありがとう」
 青年はパスポートを受け取ると、一つに束ねた亜麻色の長い髪をさらりとなびかせながら、トレンチコートを翻し、静かに歩き始めていた。
 こうしてロバート────リュウ・ハヤブサは、ユリノスティ王国に入国することに成功したのだった。

 空港から路面電車に乗り、一路目的地の城へと向かう。
 石畳の路面に、歴史を感じさせる重厚な古い街並み。この王国が、大きな戦火にも遭わず、平和な時を長く刻んできた証拠だと、ハヤブサは感じていた。
 街には、たくさんの人で賑わい、活気にあふれている。
 歩いている人種も民族も多様で────「観光業で成り立ってきた」という、この国の懐の深さを感じさせた。
(なるほど、いい国だな)
 少し開けた場所に行けば、海が見える。反対側に振り返れば、雪を冠した、美しい山々が見えた。
 本当に、飽きることのない美しい景色の数々────『仕事』などでなければ、もっとゆっくり腰を据えて、この街の歴史ごと、じっくりと探求をしたいところだ。
 だが今は、それどころではないので、ハヤブサはあきらめて目的地へと向かう。城に着く一つ手前の駅で路面電車を降りて、そこから歩くことを彼は選択していた。
 探索の下心がないのかと問われれば、それは少し嘘になるが、これはれっきとした『仕事』の一環だった。カライ内大臣との約束の時間までは、まだかなり余裕がある。ハヤブサはその間に、城の周辺の『下見』をしておくつもりだった。
 何せ、今回の仕事は『ボディーガード』だ。ガードの対象者が、この辺りを生活圏内にしている以上、どこで敵に襲われるか分からない。この周辺全てが、自分にとっての『戦場』になる可能性があった。
 その時に、どこをどう動けば対象者の安全を確保できるか、自分がそれを把握できていなければ話にならない。ハヤブサは、時折風景の写真を撮りながら、周囲の探索を始めていた。
 どの道が、どの道とつながっているか。
 どの路地が行き止まりか。
 身を隠すための場所は、下水道の有無は────
 龍の忍者はゆっくりと、頭の中に地図を構築していく。

 やがて道は、ハヤブサを市場へと導いていた。

 道端に開かれている露店には、海の幸、山の幸が所狭しと豊富に立ち並び、ハヤブサにこの国の豊かな自然を、改めて教えてくれていた。ほかにも、民芸品やアンティークが、ところどころに顔をのぞかせて、ハヤブサにその存在を主張してくる。
「……………」
 特に、『アンティーク』や『古民具品』の類は、アンティークショップを経営しているハヤブサにとっては、かなり心惹かれる対象だった。
(いやいや、いかん、いかん。仕事………!)
 必死に頭を振り、地図を構築する作業に戻るハヤブサであるが、その地図の中に、この店は要チェックだと、赤ペンで二重丸を入れることを忘れはしなかった。きっとこれは、仕事にも自分の趣味にとっても、いい目印になるだろう。

「お兄さん、観光かい? このジュースぜひ買っていって! おいしいよ!」

「ありがとう」
 声をかけてきた女性に礼を言い、素直にそのジュースを購入する。ついでにハヤブサは、ナディール姫について探りを入れてみることにした。
「ああ、ナディール姫かい? あんた、戴冠式を見に来たの?」
「ああ、そうだ。………このジュース、うまいな」
「そりゃあそうだよ! 採れたてのフルーツを絞っているんだ。おいしくて、栄養も満点だよ!」
 ジュースをほめられた小太りの老婆は、嬉しさを隠すことなく、その面に満面の笑みを浮かべる。
「戴冠式も、ぜひ見て行ってあげて! 姫様の晴れの舞台だから!」
「ああ。ナディール姫様は最高だ」
 その隣で話を聞いていたのであろう、ワインを手にした老人が嬉しそうに声をかけてくる。
「あの御歳で、常に我らのことを考えてくださる、このワインの出来同様、素晴らしいお方だ!」
「姫様がお父上に代わり、王位を継いでくださったら────この国も、安泰ね」
 人々の口からは、彼女に対する好意的な言葉が数多く出てくる。これは、彼女に対する盤石の『信頼』の現れでもあった。
「そうか………」
 だがハヤブサは、それを聞きながら、逆に身が引き締まる思いがした。
 人々に『慕われる』ということは、それと同じくらい彼女のことを『憎んでいる』存在も、少なからずあるはずだからだ。

 ────冗談抜きでナディール姫を狙う連中は、たくさんいるぞ……。

 アーサーの言葉が、現実味を帯びて頭の中を回る。ハヤブサは一つ、大きく息をした。

「それで、ナディール姫は、普段どのように過ごされているのだ? やはり城の中で、政治や公務に立ちまわっているのか?」
 彼女の普段の様子を知りたくて、口を開く。すると町の人々は、目をしばたたかせながら互いに視線を合わせると、相好を崩した笑顔を見せた。
「そりゃあ、姫様はねぇ」
「やっぱりねぇ」
「あ、ちょうどあそこにいる。あれが、そうなんじゃないのか?」

「えっ?」

 あまりにも意想外のことを言われて固まるハヤブサに、「あそこにいる」と伝えてきた老人は、彼の横に来て、親切に教え始めていた。
「ほれ、あそこ。あそこに、金髪の娘っ子がおるじゃろう?」
「……………」
 老人に教えられるままにハヤブサはそちらへ視線を走らせて────言われた通りの金の髪の女性を見つけて────固まった。

「…………えっ?」

 何故なら、『王女』というにはあまりにも普通の町娘の格好をしすぎた『ナディール姫』が、確かにそこにいたからだ。

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