農家の嫁の日記

アクセスカウンタ

本の販売を始めました!
ここより本の注文画面に飛べます。
当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS 戦う君に、花束を 5

<<   作成日時 : 2017/01/08 13:45   >>

面白い ブログ気持玉 3 / トラックバック 0 / コメント 0

「ええっ!?」

 にわかに信じがたいハヤブサは、アーサーから渡された『ナディール姫』の写真と、自分の目の前で、楽しそうに店のおばちゃんと会話をしている金髪の少女を見比べる。
 しかし、悲しいかな、見比べれば見比べるほど────この写真の人物と、目の前にいる少女は同一人物なのだと、ハヤブサに訴えかけてくるだけであった。
「おや、あんた、いい写真を持ってるね。その恰好はメアリカン合衆国の大統領と会っていた時の物じゃないか」
 老婆がハヤブサの持つ写真を見て、嬉しそうに声を上げている。
「セメルさん、そんなことがよく分かるなぁ」
「そりゃあそうさ! 姫様の格好は、すべてチェックしているもの!」
 嬉しそうに話す老人たちの横で、ハヤブサは激しい頭痛に襲われていた。
(それはそうだろうな……。アーサーはここの軍属だから………)
 こういう写真を撮ることはたやすかっただろうと、ハヤブサは思う。この写真が撮られた経緯が思わぬ形で判明したわけだが、今はそんなことは本当にどうでもいい。
 問題は────

「すまないが、ちょっと聞く」

「なんだい?」
 楽しそうに話し込んでいる老人たちに、ハヤブサは声をかけた。確認したいことがあったからだ。

「ナディール姫は………いつもあんな感じなのか?」

 この事態は、今日だけの暴発的なものであってくれ、と、祈りながら、ハヤブサは尋ねる。しかし、その期待は見事に裏切られることとなった。

「ああ、そうじゃよ?」

「─────!」
 あっけらかんと肯定してくる老人たちに、ハヤブサは絶句していた。
「姫様は、よくわしらのところに来てくださるよなぁ」
「公務もお忙しいのに、その合間を見て抜けてきてくださっているのかのう?」
「保育施設や学校にも、時々顔をのぞかせているみたいだね」
「ほんに、姫様は、わしらのことを気にかけてくださっておるのう」
 そういってのんきに笑いあう老人たちの横で、ハヤブサは頭を抱えずにはいられなかった。
(嘘だろう……!? 狙われている渦中の真っただ中の奴が……ッ!)
 アーサーから聞いた話を鑑みて、彼女の周りは、もっと緊迫した空気に包まれていると思っていたのに。
 当の本人が、まさかこんな無防備にふらふらと出歩いているとは思いもしなかった。

 何を考えているんだ!?
 自分が死ねばどれだけのことが起こってしまうか、その自覚があるのか!?

 思わず、彼女の胸ぐらをつかんで、そう問いただしたくなってしまう。
(いやいや、落ち着け……! リュウ・ハヤブサ……! 彼女だって一国の王女だ……。彼女の周りには、さぞかし優秀な護衛が………その警備団が……)
 一縷の望みをかけて、ハヤブサは彼女の周りに目を凝らした。
 しかし。
 ハヤブサがどんなに頑張って探してみても、彼女に『警備』と呼べる存在は、後ろについてきていた兵士二人のみ。
(嘘だろう!?)
 では、その兵士がものすごく腕利きなのでは、と、ハヤブサは兵士たちの腕を試そうとして────
「……………!」
 腕を試すまでもなく、自分は彼らを瞬殺できてしまう、と、あっさり悟ってしまう。

(うおおおおい!! なんだこの状況は!! 殺し放題じゃないか!!)

 もはや何らかの罠が存在するのではないか、と、疑ってしまいたくなるぐらい、彼女の周りは無防備だった。

「お前さん、大丈夫か? どこか具合でも悪いのか?」

「─────!」
 ナディール姫の方を見たまま固まってしまったハヤブサに、老人が心配そうに声をかけてくる。ハヤブサは、はっと、我に返った。
「い、いや……。何でもない。大丈夫だ」
 慌てて、取り繕った笑顔を見せる。だが、うまく笑えてはいないだろう。
「お前さん、本当に大丈夫か?」
 案の定、老人たちが心配そうに、こちらの顔を覗き込んでくる。
「なんだか、顔色が悪いのう……」
「まさかあんた……! うちの姫様に、何か………」

「それはないな。一国の姫君をどうこうするなど、恐れ多い」

 老人たちの訝しんだ眼差しを、慌てて躱す。
「確かに、それもそうじゃの」
 ハヤブサの言葉に一応納得してくれたのか、老人たちも身を引いてくれた。ハヤブサは、ほっと胸をなでおろしたが、同時に少し苦々しい気持ちにもなった。
(しかし、こんなに簡単に姫の居場所を、周りの人間が余所者に教えてしまうとはな……。もし俺が本物の刺客だったら、どうするつもりなんだ……)

「ジュース、ありがとう」

 礼を言って、その場を離れる。そして、目の前にいる姫の姿を見て、ハヤブサは一つ、大きなため息を吐いていた。
 ナディール姫は、町の者たちと話をしながら、普通に市場でのショッピングを楽しんでいるように見える。平和だが、あまりにも無防備すぎる姿だ。
(やむを得んか……)
 本来ならば、正式なルートを通して姫と面会をし、ガードする了承を得ねばならないところではあるが────
 この、いかにも「私を殺してください」と、言わんばかりのこの状況。看過するにはあまりにも危険すぎた。
「……………」
 ハヤブサは、黙って姫のボディーガードの任務を開始した。どうか、このままここは何事もないようにと、祈りながら────


「おばさん! ありがとう!! ここのスムージー大好き!!」
 ナディール姫は、本当に嬉しそうに礼を言う。
「ああ。またいつでもおいでね」
 礼を言われた女性の方も、和やかに手を振っていた。姫のはち切れんばかりの笑顔を見るのが、彼女は本当に好きだと思った。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 3
面白い 面白い
かわいい

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
 いつも愛読していただいてありがとうございます(^^)。
また、気持ち玉へのクリックもありがとうございます! 
ものすごくものすごく励みになります。
アンケート実施しています(*^^*)ご協力お願いいたしますm(__)m
 当方のブログの内容とあまり関係の無いTBは、削除させていただきます。
 悪しからず、ご了承ください。

アンケート実施中

戦う君に、花束を 5 農家の嫁の日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる