農家の嫁の日記

アクセスカウンタ

本の販売を始めました!
ここより本の注文画面に飛べます。
当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS 戦う君に、花束を 43

<<   作成日時 : 2017/02/16 23:07   >>

ガッツ(がんばれ!) ブログ気持玉 4 / トラックバック 0 / コメント 0

「気にするな」
 そう言って、ハヤブサは彼女の部屋から出ていく。しばらくすると、彼女の部屋からすすり泣く声が聞こえてきた。
(参ったな……)
 ハヤブサはため息を吐きながら、その声を聴いていた。
 姫は、皆の前では明るく闊達に振る舞う姫であるが、夜、独りになると違う。
 暗がりの中、独りで涙を流す時が、間々あった。

 泣き声を聞くのは苦手だ。こちらの胸まで苦しくなるから。
 何とかしてあげたいと願うが、ここで自分が抱きしめに行くわけにはいかない。自分にはもう、抱きしめるべき人がいるから。
 それに、姫が『抱きしめてほしい』と願っているのも、俺ではないだろう。
 彼女が本当に、自分のそばにいてほしい、と、願っている人は─────
「……………」
(肝心の、向こうの気持ちがいまいちわからんのだよなぁ……。本当に、あの男は情けないというか、押しが弱いというのか………)

 ハヤブサの頭に浮かぶのは、もちろん騎士隊長であるイガールの姿。
 イガール隊長の後姿を目で追っている、ナディール姫の姿。

 しかし、姫もイガールも、忙しいのもあるが、お互いに会うこともほんのひと時で、会話を交わすこともあまりない。しかもイガールの方は、割とどうでもいいような、よくないような雑用に、常に振り回されている。あれでは、ナディール姫の支えになるには、役不足すぎるのではないかと感じてしまうのだ。
 彼女がいる立場は、責任も重く、大きい。彼女に降りかかってくるすべてに、今のように「はいはい」と言っていたら、それこそ潰されてしまうのが目に見えている。それが分かっているから、ナディール姫も、一歩、彼に対して踏み込めないのではあるまいか。

(かといって、イガールの方の気持ちを、確かめるにしてもなぁ………)

 ハヤブサはここで、頭を抱えてしまう。
 姫の予定は多忙を極め、とてもイガールとゆっくり話す暇など取れない。
 しかも、姫自身があちこちから狙われてもいるせいで、ハヤブサはひと時たりとも姫のそばから離れられない状況になっている。こんな、身動きの取れない状態では、イガールの気持ちを確かめに行くことにまで、到底手が回らなかった。

(ああ……! 真面目にもう一人、自分が欲しい………っ!)

 ハヤブサはそう感じて、深くため息を吐く。
 やはり、この状況、一人ですべてを対処しようとしたら限界がある。
 もう一人、仲間が欲しい。
 もう一人、信頼できる仲間がいれば────今の状況から、一歩でも二歩でも踏み出していけるだろうに。姫をつけ狙う敵勢力に対しても、防戦一方にならなくて済むのに。

(シュバルツに連絡したい………っ!)

 強くそう思ってしまって、ハヤブサはもう何度、転がりまわったか分からない。
 考えれば考えるほど、有能な諜報活動能力を持った、愛おしい俺の恋人。喉から手が出るほど、彼の存在が欲しかった。
 しかし────

(ダメだ……! 彼らに迷惑をかけるわけには………!)

 これは、自分が請け負ったミッションなのだ。ならば、対処すべきなのは自分なのであって、彼らにまで粉をかけるのは間違っている。彼らには彼らの、平和な日常を営む権利があるのだ。それを、自分の都合で乱すわけにはいかない。
 それに、彼らに頼る習慣をつけるのは、きっとよくない。
 彼らに頼ることを覚えてしまったら、自分は仕事を請け負うたびに、彼らを巻き込んでしまう事になる。そうなってくると本当に、彼らから平和に生きる権利を、自分が取り上げてしまう事になりかねないのだ。
 だめだ。
 自分が望むのは、キョウジの幸せであり、シュバルツの幸せなのだ。
 それを手助けこそすれ─────阻む存在にはなりたくなかった。

 それに、よく考えろ、リュウ・ハヤブサ。
 仕事場にシュバルツが来る、ということは、今こうして眠ろうとする自分の隣に、シュバルツがいるわけで。

「…………………」

 自分の横で、穏やかに眠る、愛おしいヒト。
 長いまつげ。
 整った顔立ち。
 薄く開いた唇から漏れる、甘やかな寝息。

「ん………」

 自分の前に、無防備に投げ出される、きっちりと服を着こんだ美しい肢体が───

(……どこからでも、乱してくれ……。ハヤブサ………)

 と、言われているようで

 ああああああ!! もう!! 辛抱たまらんというか仕事中だろうがお前は──────!!!
 
 と、自分で自分に突っ込みを入れる事態になりかねないので、やはり、シュバルツに連絡を入れるのは、よくないような気がした。
(平和になったら、連絡しよう)
 ハヤブサはそう決意を固めて、身体を休める決心をする。

 そう。
 この国のごたごたが収まって、平和になれば、シュバルツと二人、この国をゆっくり観光すればいい。
「ドモン・カッシュに会いたい」と、願うノゾムの気持ちにも、きっと答えてあげられるだろう。

「………………」

 まだ、姫のすすり泣く声が聞こえてくる。彼女の心が、未だ落ち着きを取り戻さないのだろう。
 泣くことが必要ならば、存分に泣けばいい、と、ハヤブサは思う。それで、彼女が明日、また、皆のために笑うことができるのであるならば。
(だが………やはり、きついな………)
 孤独に塗れる彼女の涙─────早く、掬い取ってくれる者が、現れればいいのに。
 そう願いながら、ハヤブサもまた、短い眠りに落ちるのだった。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 4
ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!)
面白い
かわいい

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
 いつも愛読していただいてありがとうございます(^^)。
また、気持ち玉へのクリックもありがとうございます! 
ものすごくものすごく励みになります。
アンケート実施しています(*^^*)ご協力お願いいたしますm(__)m
 当方のブログの内容とあまり関係の無いTBは、削除させていただきます。
 悪しからず、ご了承ください。

アンケート実施中

戦う君に、花束を 43 農家の嫁の日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる