農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 47

<<   作成日時 : 2017/02/21 00:04   >>

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「……………!」
 どよ、と、厨房の中の空気がざわめく。
(あの新人、姫様に料理を食べさせたのか……)
(すごいな……。どういう魔法を使ったんだ……)
 もちろん、その称賛の言葉は口には出されない。イワニコフの八つ当たりが、こちらに向かってくるのが、目に見えているからだ。
 しばらく呆けたように、あらぬ方向を見つめていたイワニコフであるが、はっと我に返ると、シュバルツに詰め寄ってきた。
「ひ、姫様は………!」
「はい?」
「ひ、姫様は……! 間違いなく、料理を食べたのか……?」

「ええ、食べましたよ」

 シュバルツはあくまでも、にこやかに答える。イワニコフは、思わず身体に震えが来るのを止めることができなかった。
「で、では………姫様は………」
「はい」
「姫様は、そのあと………」
「ですから、『大変おいしかった』と」
「……………!」
 シュバルツの、至極当たり前な答えに、イワニコフはぐっと、言葉に詰まる。確かにそうなのだが、自分が聞きたいのはそう言うことではないのだ。
(どういうことだ!? あの毒は、即効性のはずだ!! 口にしたのなら、あの女は無事でいるはずがないのに………!)

「あの…………」

 シュバルツに声をかけられて、イワニコフははっと我に返る。顔を上げると、申し訳なさそうな顔をした青年がいた。
「何だ!?」
「そろそろ、そこを退いてはいただけないでしょうか? 食器を洗いたいのですが………」
「……………!」
 自分の巨体が通路をふさいでいる、と、気が付いたイワニコフは、とりあえずそこから横に退く。その前をシュバルツが、サービスワゴンを押しながら、静かに通って行った。
「……………」
 しばらくそれを、見るともなしに見ていたイワニコフであるが、やがて、あることに気づいた。
(………! 食器が違う─────!)
 サービスワゴンの上に並ぶ空になった食器は、自分が姫に食事を盛りつけたものと、違うものだ。よく見ると、サービスワゴンの下の方に、自分が使った食器が、無造作に積み上げられていた。
(こいつ────!)
 イワニコフは眩暈がするほどの怒りを感じた。つまりこいつは、たかだか給仕の分際で、勝手にシェフの料理や食器を、勝手に触ったことになるのだ。

 これは、あからさまに越権行為だ。
 給仕として、正しい心構えを教え込まねば───!

「おい、お前」

「何ですか?」
 青年が、人のよさそうな顔をして振り向く。ザワ、と、イワニコフの中の嗜虐心がうずいた。
 おあつらえ向きだ。
 こいつは今から、俺のサンドバックにしてやる。

「そのサービスワゴンの上に乗っている食器…………俺が出したものとは違うな………」

「…………!」
 シュバルツの眉が、ぴく、と動く。厨房の空気が、一気に凍り付いた。
(あの新人なんてことを……!)
(殺されるぞ……! イワニコフさんの料理を勝手に触るなんて………!)

「お前……! 俺が作った料理をどうした?」

「料理ですか? 姫様に出しましたけど………」

「噓をつくな!!」

 イワニコフの大声が、厨房に響き渡る。
「姫様が食べた食器と、俺が盛りつけた食器が違う!! 貴様!! 俺が作った料理をどうしたと聞いているんだ!!」
 悪鬼のような形相で問いただしてくるイワニコフに、しかしシュバルツはあっけらかんと、答えた。

「ああ、それは捨てました」

「─────!」
 厨房の気温が、体感的に一気に下がる。誰もが生きた心地がしていない中、シュバルツののんきな声が響き渡っていた。

「だって、あんな物姫様に出せるわけないでしょう。あれにはど─────うぐっ!!」

 バキッ!! と、イワニコフがシュバルツを殴り飛ばす音が響き渡る。そのまま倒された彼に、イワニコフの暴力が、さらに襲いかかてきた。
「ふざけるな、貴様!! シェフの料理を給仕の分際で!! 心得違いも甚だしい!!」
 殴る蹴るのすさまじい暴力。周りにいる者たちが眉を顰めて固まっていると、「仕事に戻れ!! これは、見世物じゃないんだ!!」と、怒鳴り散らしていた。

「………お前には、相応の『躾』が必要なようだな……!」

 イワニコフが、シュバルツの襟首をつかんで締め上げる。
「う…………!」
 低く呻くシュバルツを見て、イワニコフは満足そうに笑った。やはりこいつは、背ばかりが高くて、ひょろっこい優男だと、確信する。
「来い!! 貴様には別室で、『給仕の心得』を叩き込んでやる!!」
 そのままシュバルツを強引に立たせると、その手を無理やり引っ張っていた。
(あの新人……今日で終わったな………)
(可愛そうに………)
 そんな二人の様子を、厨房にいる者たちは目の端でとらえながら、深いため息を吐いていた。


 イワニコフはある部屋の前まで来ると、乱暴にドアを開ける。そこにシュバルツを放り込むと、自分もその部屋に入り、後ろ手に鍵を閉めていた。

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